1日目 うさぎに会う
ハーブティLove!
菜野香はティーカップを持ち上げつつ、湯気を見ながら微笑んだ。
今日飲んでいるのはカモミール。これを飲むといつもホッとするのだ。
子どもの頃、お母さんに
[ピーターラビッ○も風邪のときに、お母さんに飲まされていたのよ]
と言われて、飲んだのを思い出す。
彼女のキッチンには、色とりどりのお茶が並ぶ。毎日のごとくお茶を欠かさず、
今日は緑茶、明日はハイビスカス、明後日はジャスミンティー、といった具合。
黄色いカモミールティーを飲みながら、今日は何をしようか考える。
久しぶりのお休み。のんびりとした空気の漂う日曜日の午前中。
ヨガでもしよーかな。長いことやってないや。
ベランダの窓がいきなり大きく開いた。
突風が吹き、テーブルの上の幾つかのポストカードを吹き飛ばす。
それらはひらひらと床に落ちた。
[お邪魔します。お茶会はここですかな?]
長い二つの耳に長い髭。ウサギの被り物を被り、スーツ姿の男。
シュールすぎて、あまり驚けないんだけど。
[変態さんが何のようですか?]
ウサギが一瞬固まった。
[変態じゃねー!よく見ろ! うさぎいぃぃぃ お茶会に呼ばれてやったんだ!]
[丸っきり変態じゃないですか。いい年して被り物で、その格好でよく2階までよじ登ってこれましたね。]
ウサギは30のダメージ。片隅でイジイジしている。
細面の癖に中々の身体能力だなー。そのベクトルを違う所に使えばいいのに、うちのマンションそんなに登りやすい造りしてませんけど。
[いや、俺は異世界から来たんだって。君の部屋のベランダにひとっとび]
[異世界からいらしたのに、どうしてそんなにスーツに皺があるんですか?
どうしてそんなに汚れているんでしょうね]
[っぐ]
[へんたい 変体 変態さん♪]
[歌わないでくれ。余計落ち込む]
ウサギの耳が床にペタリとついた。
1日目
うさぎに会う