俺、入学する ―1
すいません!間があきました!
よろしくお願いいたします^_^
「こ、ここがロイスさんの家っすか...」
仮設トイレの下には俺の前世だったとしても豪邸と呼べるレベルの屋敷が広がっていた。入口に続く階段のすぐ前に立っているがそれでもこの屋敷がどれだけ広いかが分かる。
「そうだよ。僕も割と良い仕事に就いてるんだ。魔法学校には寮があるから入学するまでしばらくはここで暮らして貰うよ?」
ロイスさんは俺とノエルにニッコリと笑いかけながらそう言った。
「ところでディオ君。その子は?」
ロイスさんはノエルを見ながら俺に問いかけてきた。
「あぁ。言い忘れてました。俺の幼なじみのノエルです。魔法学校に一緒に入学してくれるらしくて」
俺がそう言うと、ロイスさんは顎に手を当てて何かまずそうな顔をした。
「どうしたんですか?」
ノエルが口を開く。
「うーん。それがね。ディオ君だけなら僕の持っている推薦状で入学させることが出来るんだが、まさか彼女も連れてくるとはなぁ…」
むむむ、と悩んでいるようすのロイスさん。
「あの、その事何ですけど。俺、自分の推薦状持ってるんでロイスさんのはノエルに使って貰えませんか?」
そう。俺には自室で埋もれていた学校じきじきの推薦状がある。もともとコレを使うつもりだったし、それでノエルを入学させることが出来るならそれで良いかな。
「そうか!ディオ君には学校からのものがあるのか!分かった。それじゃあ僕の推薦状はノエル君に使うとしよう!ノエル君得意な事はあるかい?」
懐から推薦状を取り出すと羽根ペンを握りしめ机に向かうロイスさん。
「えっと...あ、魔法の五属性同時発動が出来ます!」
「五属性同時発動ねぇ...そうか、マティアスの行っていた文武両道の娘とは君の事だったのか。なるほど...面白いね。二人とも、少し時間がかかるから街でも見てきたらどうかな?」
ロイスさんは机に向かったまま話した。
「そうさせて貰います。遅くても夕方には戻ります!」
「はいはーい」
こちらをむかずにロイスさんが返事を返す。ロイスさんって本当に魔法学校の先生なのかなぁ?あんまり信用出来なくなってきたぞ。もちろん頼りにはしてるけどもさぁ。
「それじゃ行こうか、ノエル。」
「うん!」
俺とノエルは上へと続く階段をかけ上った。階段の先にあるドアを勢いよく開く。そこにはまるで中世と俺の世界の街が組合わさったような不思議な街が広がっていた。ビルみたいな建物があると思えばそのすぐ隣にはレンガ造りの家が建っている。さらにその隣には鎧を身に纏った兵士達が槍を構えながら難しい顔をしている。中央都市はそんな場所だ。そして今俺とノエルが立っている大通りから少し遠くに見える大きな城こそが俺達の目的地。都市立クロムフロウ魔法学校だ。見た目はなんと言うか...その...ハリーなポッターに出てくるあの学校っぽい。
「ねぇねぇディオ!あそこで何かやってるよ!」
ノエルが俺の服を引っ張りながら前を指差す。前では愉快な太鼓や笛の音がする。
「何あれ?サーカス?」
この世界にもサーカスとかあるんだな。いや待てよ。魔法が存在する世界だぞ。普通のサーカスな訳ないよな。やばい、見に行くのちょっと不安になってきたぞ。
「ほら、ディオ!行こ!」
ノエルが俺の腕を引っ張ってそう言う。その姿はデートに来た年頃の女の子そのもので。
「あぁ、ごめんごめん。うん。行こうか」
俺は近くの屋台でジェラート的な物を2つ買って1つをノエルに渡す。
「おぉ!ありがとー♪」
ノエルは嬉しそうにそれを受けとると美味しそうに食べ始めた....はっ!こ、これはまさか...デート!!!おいおいなに考えてんだよ俺は!?ただ街を二人でまわってるだけだろうが!....それをデートっていうんだよっっ!!やべぇ無駄に緊張してきたぞ。落ち着け。今目の前にいるのは幼なじみで今までずっと一緒に遊んでいた子供だぞ。そんな子供がキュンキュンするほど可愛いわけ....
「どうしたのディオ?....もしかして、楽しく..ない?」
心の中で自問自答していた俺に気付き急に悲しそうな顔をしてそう言うノエル。うん。間違いなくかわいい。
「あ..れ?そういえばノエル髪型変えた?」
よく見ると、ノエルの長い金髪は後ろで1つに纏められていた。いわゆるポニーテールというやつだ。ちなみにノエルは黒いニーハイをこの頃着用している。すなわち...
『ポニーテール+絶対領域=どストライク!!!!!!!』
前世でもこの組み合わせが大好きだった俺だ。超絶かわいいノエルのポニテ絶対領域は俺にとっての桃源郷に等しい。ちなみに俺は前世ではあまりにモテてはいない方だった。いやまぁ全然女子との関わりがなかった訳じゃないし、顔もそこそこには良い自信がある。ただ、呼吸をするように変態発言をかましていたらそりゃモテてはしないわな。だがしかし!今は違う。ノエルは俺がどんな変態発言をしても顔をひきつらせながらも、何とか我慢してくれるのだ。前に何となく膝枕を要求したら、
「こ、こうかな?」
と、こころよくやってくれたのだ。あの時の質感と照れるノエルの表情は記憶力限界突破を全力で発動して記憶している。おっと。話を戻そう。サーカスを見ていると、たまにピエロが簡単な手品をするだろ?ちょうど今その時なんだよ。でもな、あの内容が凄い。人体切断マジック。あれはもちろん本当に切断してる訳じゃない。ステージの下に細い通路があってそこを人が行き来している。俺の世界だったらな。しかし、この世界は常に俺の常識を越えてくる。何もないただの地面にピエロが横になる。そして布を被せて...風魔法をぶちかましたのだ!!
「はぁ!?」
俺はマジで驚いた。あれはいいのか?普通に子どもも見てるぞ!?そんなことよりあのピエロは!そう思って例のピエロを見ると他のピエロに切断された胴体を振り回されていた。もちろん切断面は隠してある。しかし残された下半身はピクリとも動かない。
「の、ノエルは見ちゃいけません!!」
俺は慌ててノエルに目隠しをした。
「ねぇディオ~意地悪しないでよ~!」
ノエルはバタバタと手を振りほどこうとする。しかしここは譲れない。あれの影響でノエルが変な子になったら大変だ。俺達がそんな攻防を繰り広げているとピエロが指笛を吹いた。気になって見てみるとさっきまで振り回されていたピエロがまた横にさせられていた。そしてその2つにわかれた身体にまた布をかけると...
「ふんふ~ん、はっはぁん!」
と、ノリノリで手に持っていたステッキを振った。そして被せていた布をとった。すると、
「はっはは~ん!」
さっきまでピクリとも動かなかったピエロが急に跳ね起きた。
「か、回復魔法で再生させたのか....ってもうそれ手品じゃねぇ!!」
周りの人が拍手をするなか俺は1人突っ込んでいた。
「はっはぁん!ふっふーん!」
「うるせぇ!!」
ドヤ顔をしながら魔法を使った方のピエロが俺を見てくる。いや待てよ。あのピエロ一回死んだんだよな。それを再生させたってことは、まさか、上級魔法!?マジデ!?
「いや、まさかな」
俺は気持ちを落ち着かせると、ノエルに声をかけた。
「な、なぁノエル?お前はあんなバイオレンスなモン好きじゃないよな?」
一応確認しておく。
「うん...さすがにアレはちょっと引いた....」
ノエルはアレを見てからなんかグッタリしている。
「おーい、ディオ君!ノエル君!」
俺達がはぁっとため息をついているとロイスさんがサーカスのやっていた広場に走ってやって来た。
「あぁロイスさん!すいません!」
「いや、私も少し位運動した方がいいからね。それよりノエル君。君への推薦状だよ」
ロイスさんはそう言うと懐からいくつかの書類をノエルに渡した。
「それとディオ君。君には言っておかないといけないことがあるんだけど、まぁその辺は家で話そう」
「は、はぁ」
俺達とロイスさんはてくてくと家路につくのだった。
「それで、ロイスさん。俺に言わないといけないことって?」
俺は家に帰りつくと早速さっきの事をロイスさんにたずねた。
「あぁ、そういえばそんな事言ってたね」
「忘れてたんすか...」
大丈夫なのか、この人?
「ディオ君?聞いてるかい?」
「え!?あ、はい」
もう話はじめてたのかよ!マイペースだな!
「それじゃ続けるよ。君達は第三学年。いわゆる最上級生として3学期から転入してもらう事になる。しかしここで1つ問題が発生する。何か分かるかい?」
ロイスさんはそう言うとノエルに顔を向けた。
「えっと...同じ学級になれない、とか?」
かわいい!!さすがだぜノエル!
「違う。そもそもいつ誰が君達を同じ学級にすると言ったんだい?」
「え!?」
ノエルは結構マジで驚いている。やっぱり同じ学級は無理か。
「はぁノエル君に聞いたのが悪かったよ、ごめん」
ロイスさん、謝っちゃった!?ひどいな!
「第三学年と言うのは他の学校との関わりも多くなる。それに第三学年の成績で勝ち組になれるかどうかが決まってくるんだ。ノエル君は私が現在の実力を認めた、という形で転入することになるが、ディオ君に関しては違う。十数年前に発行された推薦状。それを使っただけじゃ入学は出来ない」
えぇ!?そんな事今まで一回も聞いてないぞ!?
「じゃ、じゃあどうすればいいんですか?」
「ディオ君。君にはノエル君達とは別にテストがある」
「て、テストっすか」
まぁそうなるよな。テストか...大学の入試が最後だったな。でも、ただのテストなら俺には記憶力限界突破というチートがあるし、運も全開だ。なんならこの世界の世界地図だってかける。心配いらないな。
「それでだけど。そのテスト内容だけど、普通の紙試験と....」
と?ペーパーテストだけじゃないの!?
「簡単な魔力審査があるんだ。でもまぁこれは中級のやつが1つでも使えれば余裕だから、考えなくて良いよ。とりあえず勉強をしといたら良いよ」
ニコニコしながら言うロイスさん。ちなみに俺は今ものすごい顔をしていると思う。
「それではディオ君に問題。魔法を使う上での優位性は?」
「.....第一に遠距離、近距離を問わず使用する事が出来るという点。第二に術者の技量によって派生魔法が生み出せる点」
ちなみにノエルの五属性魔法もノエルにしか発動することの出来ない派生魔法のようだ。それより....
「さすがだねぇディオ君。これが解ければ問題はないね」
「..........です」
「え?」
「.....使えないです」
「何を?」
「俺、魔法使えないです」
「..........」
その場が俺の発言によって凍りついた。俺は助けを求めるようにノエルを見ると。
「.......え!?何!?」
寝てただと!?
「な、何を言ってるんだい?村のファウクーンを撃退したのは君なんだろ?」
「確かにそれは俺何ですけど...その....不調というか...俺1人でやった訳じゃないって言うか...」
「と、とりあえず話を聞こう」
「“記憶の奇跡”ねぇ。それは仲間がいないと全く意味のない神創魔法。そして魔法を発動するとしばらくの期間は発動が不調になるおまけ付き。という事だね」
「だいたいそんな感じです。村の時はノエルの力を借りました」
俺はあのあと事の成り行きをロイスさんに説明した。ロイスさんは魔法学校の先生なだけあってか理解するのがめちゃくちゃ早かった。
「ふむ、ということはディオ君自体は魔法を使えないと?」
「はい。初級の回復しか使えないです」
「困ったなぁ…。いくら神創魔法とは言えそんな不安定なものじゃな...よし!テストまであと1週間。私が直々に中級の使い方を教えてあげよう!」
「あ、ありがとうございます!!!!」
よっしゃああああ!これで入学への道が始まった!
「それじゃ、手始めに魔力が尽きるまで魔法を発動してみようか」
と同時に地獄の特訓生活も幕を上げたのだった。
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