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 俺、魔女に会う

「お、おお...」


ここは異世界。魔法も、モンスターも、冒険者もいる。俺はこれまででかなりのものを見てきたし、驚きもした。だから、もう驚くことはないだろう、そんなことを思っていた。のだが今俺たちの目の前にある俗に言う『お菓子の家』はそんな俺の考えを覆した。


「着きました。ここが私とお姉ちゃんの二人で暮らしてる家です」


エイミーがいった。近づいてみると、やはり壁はビスケットとかでできてるし、というか、ここらへん一帯に甘いにおいが漂っている。


「本当にここに住んでるのか!?」

「はい?えと、まぁ住んでますけど?」

「す、住めるんですか!?」

「はい!外側はこんなですけど、中は結構ちゃんとしてますから」


そう言いながらエイミーは中に入っていった。


「あっ、ディオさんたちも遠慮せずに!」


笑顔でいわれた。


「ほらほらディオ!入ろーよ!」


ノエルが俺を押してくる。


「お、お邪魔しまーす?...ホントだ。意外とちゃんとしてる」


いざ中に入ってみると、想像していたものとは全然違い、しっかりとした床や屋根になっていた。ただ、普通の家と違うのは普通の家ではあり得ないものが家中に散らかっていた。何やら赤い液体で満たされたガラスの瓶、おそらく金で作られている天秤、天井から垂れ下がっているたくさんの草花。更には骸骨のようなものまであった。


「ん...お帰りエイミー。ソイツらは?」


部屋の奥から大人の女性の声がした。まだ俺達とは会っていないが、まるではっきりとこちらを見ているかのような物言いだ。天井からは真っ白い梟がじっと俺達を見ていた。


「えっと、この人たちは....わたしの...お友達?」

「なんで疑問形なんだ!?」

「えっ?!いや、だってほらまだ出会ったから1日も経ってませんし...」


...変なところで用心深かった。


「まぁいいや。エイミー、頼んでたもの、買ってきてくれたかい?」

「うん!今持っていくね」


エイミーはノエルから魔虎の皮と琥珀龍の牙片を受けとると器用に部屋の物を避けながら奥に進んでいった。


「―あ、ディオさんたちも、空いてる所でくつろいでてください!」


しばらくしてエイミーの声が聞こえる。


「では、そうさせていただきましょうか」

「そうだね」


そう言ってノエルとアイナは少し入ったところにある赤いソファーに腰かけた。俺もそうさせて貰おうかな。俺も床に置かれた物を踏んづけて壊してしまわないように慎重に歩いた。ソファーに座ってみると、しっかりと掃除がされていて、近くに置かれたテーブルも綺麗に磨かれていた。恐らくここが唯一の生活スペースなんだろうな。


「すいません!お待たせしました!」


そう言いながらエイミーが人数分のお茶をもってパタパタとやって来た。そしてその後ろからは一人の女性がついてきていた。


「お前さんがディオかい?」

「あ、はい」

「そうかい。私はエイミーの姉のソルシエール。知り合いからはルシエって呼ばれてる」


そう言った二十代位の女性は俺達の反対側の窓際におかれた1人用の椅子に腰かけた。赤いフードのついたドレスを着た彼女は明るめの金髪を腰くらいまでまっすぐ伸ばしていた。なんとなく「赤ずきん」が成長したらこんな感じかな。と思わせるような風貌だった。だが顔には薄い笑みを浮かべ、瞳の奥では鋭く俺を見据えていた。「成長した赤ずきん」というよりは「赤い魔女」といった方がしっくりくるのだろうか。


「それで?どうやらお前さん、冒険者でもないみたいだけど...なんのようだい?」

「...心を読んだりしないんですか?」

「『赤い魔女』とやらに、いろいろ暴露されていいのかい?」

「会話って大事デスヨネ」


怖えぇ!?この人超怖えぇ!?


「えっと、ディオさんがもっているこの武器を作った職人さんを探してほしいのですが...」


アイナが話を切り出す。俺はそれにあわせて仕込み杖をテーブルの上に置いた。


「この杖を...へぇ、これを作った職人ってのは相当な腕みたいだね...でも、何でだ?邪悪な魔力のせいで刀身が折れかかってる...何と戦えばこんな...それこそ魔族みたいな...で、なんで私のとこに?」

「その...仕込み杖がご覧の始末でして...それでウキョウってオッサンにあなたのことを薦められて...」

「ウキョウだぁ?あんの道化め...」


チッと、ルシエさんが小さく舌打ちをした。


「...まぁいいや。エイミーの手伝いもしてくれたみたいだし、特別に探してやる。その杖貸してみな」


俺はルシエさんに仕込み杖を渡す。それを受け取ったルシエさんは部屋の奥から畳一畳程の大きな地図を引っ張り出した。足元に広がるガラクt―魔術品を乱暴に足でどけるとその地図を広げた。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって訪ね人に風の便りを。求め人に吉報を」


ルシエさんが仕込み杖を掲げながらそう唱えると床に広げられた地図の上にちょうど同じくらいの大きさの赤い魔方陣が浮かび上がった。その魔方陣は地図の上で何回転かするとまるで地図に吸い込まれていくかのように消えてゆき、そのかわりに地図のある一点だけが光を放っていた。


「ここは―」


ルシエさんがその場所を伝えようとした、その刹那。


〈グガァァァァァァァァァアァアァアアァアァアァアァァァ〉


家の中にまで振動が伝わるほどの叫ぶような咆哮。俺達は急いで家を出た。

が、周りを見回してもそんな咆哮を放つような凶暴な魔力を放つ魔物はいなかった。


「―!?ディオ、あれ!」


ノエルが隣の山を指差す。慌ててその方向に目をやる。すると、山の中腹辺りを真っ黒なカラスのようなものが飛び回っていた。


「アイツか?いやいや、流石にあんな遠くからは―」

〈グガァァァァァァァァァアァアァアアァアァアァアッァッァッァ〉


俺の言葉を否定するかのように、再度叫び声が聞こえる。そしてその“黒いなにか”は山に沿うように俺達のいる山の麓に近づいてくる。エルフで視力が高いアイナがかけている“眼鏡をはずして”目を凝らす。アイナは数秒の間それを見つめていたがすぐに顔が青ざめた。


「ディオさん!あれは―」


その間にも“黒いなにか”は近づいてくる。とうとう視認出来る程に近づいた。


「あぁ。“黒いドラグーン”だ」





お久しぶりです。投稿遅れてしまいすみません。活動報告に詳しく書きますが、これからも投稿間隔がめちゃくちゃになることが多くなってしまうと思います。

どうぞ生温かい目で見守ってやって下さい。それではノシ

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