俺、日を浴びる
すいません!引っ越しで忙しくて投稿がかなり遅れました!本当にすいません!
「くぁあああ~!」
数時間ぶりの太陽の光を浴びながら、牢でずっと座っていて固まっていた筋肉を解す。体を回したりしてみると、色々なところからボキボキと骨のなる音がした。アディンが牢を離れてからだいたい三時間くらいで俺たちは釈放された。というのも、俺達が収容されてすぐにあの戦いを見ていた人が証言をしに来てくれたらしい。だが、ルカが言っていたように俺達が冒険者ではなかったのもあり、無罪放免となるまでに時間がかかってしまったという。
「それにしても、見ず知らずの私達のことを助けてくださり、ありがとうございました」
アイナが俺達の無罪を証言してくれたと言う人にそう言って頭を下げた。
「いっいえ!その、助けてもらったのは寧ろこっちですし...」
答えたのはちょうど俺達くらいの年の女の子だ。若干赤みがかった髪色で、特徴は...特にないのが特徴みたいな感じの子。
どうやら買い物の途中だったらしく、手に提げている籠には果物や、よくは分からないが食べ物っぽいものが入ったままだった。
「ホントにゴメンな。なんか買い物の帰りだったっぽいし」
「え?買い物...あ゛っ!?」
俺の言葉を聞いてしばらく不思議そうな顔をした女の子は自分の腕にある籠をみて、果たして女の子がだしていいのか怪しい声をあげた。
「そうでした、お姉ちゃんのお使いの途中でした!」
「じゃあ、私達も手伝わせてよ!」
ノエルが提案する。それを聞いて女の子はしばらく考えるような様子をみせたが、小さく「うんっ」とうなずいた。
「それじゃあ、お願いします!あと買わないといけないのは、魔虎の皮と琥珀龍の牙片...ですね。牙片のほうはともかく、魔虎の皮はちょっと一人で持つには重いので、それを手伝ってもらえますか?」
「おっけー!お安いごようだよ!」
ノエルが楽しそうに返事をする。こう言うときに、ノエルは楽しんで作業がこなせるから良いよな。そんなこと考えつつ隣に立つアイナを見ると...
「ち、力作業...です..か....」
明らかにテンションが下がっていた。
「あ、そういえば君、名前は?」
「え?あ、そういえばまだでしたね。私はエイミール·マキュロスっていいます。みんなからはエイミーって呼ばれてます!」
「そうか。俺はディオ」
「アイナ·ルフです」
「私、ノエル!」
「はい、よろしくお願いしますね!」
そんな感じで、エイミーに連れてこられたのは町の大通りから少しはずれた路地。全体的に薄暗い印象だ。
「ほ、本当にこんなところにお店があるのですか?」
本気で不安そうにアイナが聞く。いや、まぁ例え何かあったとしてもアイナなら大丈夫だろと思うのは俺だけではないはず。が、実際にアイナはさっきからずっと俺の服の袖をにぎっている。そういった仕草にキュンと来るものがあるが、まぁ、歩きにくい。
「ありますよぉ。ほら、あそこです」
エイミーの指差す先には、「夜髏鶴屋」とかかれた古めかしい感じの店があった。店先には一体どんなやつが買うのか分からないようなぼろぼろの古書が並べてあり、それだけでなんか、こう、入る気が失せる。
「エイミー、本当にここか?」
「本当ですって。ここの人にはよくお世話になってるんです」
「へぇ...」
エイミーはためらうことなく店の中へとはいっていく。
「ウキョウさ~ん!エイミールですー!」
「はいは~い」
エイミーが大声で呼ぶと店の奥のほうから男の声がした。そして出てきたのは、緑色に染められた着物をきた無精髭のはえたぱっと見、二十代後半くらいの男だった。
「エイミーちゃん、今日はなにを―ってどちらさんだい?」
ウキョウは俺達に気づいたのか不思議そうな顔でエイミーに聞いた。
エイミーから事情を聞いたウキョウはなるほどぉ、とわざとらしく頷いて俺に近づいてきた。
「君がディオ君かい?」
「まぁ、そうっすけど」
「君の父上は...確かマティアス·カーティルだったか」
「!?...父さんのこと知ってるんですか」
ウキョウという男の目を見る。俺のことを見ているはずなのに、まるで俺のことに全く興味がないような、そんな目をしている。
「いやいや、別に。ただ知識として知っているだけだよ。だからさ、そんな敵意むき出しにしないで。ね?」
そう言ってウキョウはエイミーに話を聞き、ごそごそと商品をあさりだした。
「魔虎の皮と琥珀龍の牙片...あったあった。はい、銀貨5枚ね」
「へぇ、意外と安めなんだな」
魔獣の皮とかもっと高額かとおもっていた。
「あ、いえいえディオさん、本当ならこんなに安くありませんよ」
あわててエイミーが言う。
「ここの商品はほとんどボクが趣味で作ったものばかりだからね。原価よりは安くしているつもりさ」
ウキョウは言った。
「ところでそこの君。君の持っているその杖は、どこで仕入れたんだい?」
俺の腰にぶら下げてある仕込み杖を見ながらウキョウは興味深そうに言った。
「これは俺の父さんが知り合いにつくってもらった物で、売ってる訳ではないですよ」
「なるほど...ボクは今まで数々の職人を見てきたけど...それほどの物を作ることができる職人は一人しか知らないね...」
「!?」
俺は思った。もしウキョウの言っている職人が本当にこの仕込み杖をつくったのならば、魔族との戦いで消耗してしまったこの杖を修理してもらえるかもしれない。
「あの、その職人ってどこにいるんですか?」
「ん~?ヤツは自由だからね。この町にいるかもしれないし、そうでないかもしれない。うちの店では人探しは取り扱ってないんでね。それに関しては、彼女の姉さんを頼った方がいい」
「エイミーの?」
突然自分の名が出たことにエイミーは少し慌てた様子を見せるが、すぐに
「ま、まぁ、お姉ちゃんはそういったことは得意ですから、その、お力になれるかと...」
「そうか!助かるよ!買い物なんてさっさと済ませて早く向かおう!」
「まったく、君はエイミーと出会ってまだ間もないのだろう?図々しいというか...」
ウキョウはやれやれといった様子で店の奥に引っ込んでいった。
「えっと...それじゃあ、帰りましょうか」
エイミーに促され、俺達はウキョウの店を出た。
「そう言えば、エイミーの家ってどこら辺なんだ?」
「確かに、さっきからもう、随分歩いたような気がしますね」
歩くにつれ、だんだんと人を見ることが少なくなって行き、アイナも不思議そうに言った。
「あはは、そのお姉ちゃんってばちょっと変わってて...ほら、見えました!」
エイミーが指差すその先には――俗に言う『お菓子の家』が建っていた。




