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 俺、勝利の一夜

 魔族による襲撃事件が発生してから数日後、クロムフロウ魔法学校は全校生徒や、記者を集めての状況説明会見を執り行った。


「今回においてのわが校の対魔法防護壁は正常に作動していたことが魔法省のよっても確認されています―」


 大勢を前に説明をしているのはこの事件の一連に関わったロイスさんだ。普段のゆるい雰囲気はどこへやら、ブローチ付きのコートを着た無属性の認定魔法士の正装で壇上に立っていた。

 他の生徒は記者たちの後ろに座らされていて、一応しっかりと聞いている。そして、俺を含む事件関わっちゃった組はというと―


「なんでアタシたちがこんな狭いところにっ...」

「まぁまぁ、ちょっと落ち着こう?ケイトちゃん」


 俺達はどこにいるかというと、生徒たちが座っている場所の更に向こう。広い講堂のなかのわずか七畳ほどのスペースに申し訳程度に用意された人数分の椅子に座らされていた。会見が始まってからすでに数十分経過しており、最初は、


「ま、我慢しますかぁ」


 と、妥協していたケイトもさすがにイライラしてきている。で、それを隣に座るノエルがなだめるという構図がさっきからずっと続いている。


「ねぇ、ちょっとディオ君!なんでアタシたち努力組がこんな罰ゲームみたいな扱いなの!?」


 後ろからガンガンと俺の椅子を蹴りながらケイトが文句を言ってくる。努力組、というのは今回の事件で救助、護衛等を行った俺たちの通称だ。気持ちは非常に分かるが、椅子を蹴るのは止めていただきたい。お尻がジンジンしてくる。


「しょうがないだろ!さっきロイスさんに聞いたら―」

『あぁ、それはねディオ君たちを目立たせてしまうと、色々なところがディオ君たちを無理矢理にでも引き抜こうとするからだよ。一応、学校なりの配慮だよ』

「―って」

「なにそれ!?親切が微妙に気にいらない!」


 まぁ、なんだ。せっかくロイスさんが話してくれたので内容をまとめると、今回の魔族の襲撃はまったくもって知りませんでした。学校側は一切悪くこざいません。ということだ。どうやらそろそろ終わるみたいだし、ゆっくり優雅に残りの時間を夢の世界で過ごすとするか。



「ディオ!ディオ起きて!」

「ん?」


 ノエルに体を揺さぶられて目を覚ます。時計で確認すると二時間ほど経っていた。辺りを見渡してみると、ちらほらと生徒が教室に戻っていて、どうやら会見は終わっているらしい。そして、今俺と一緒にいるのはノエルだけだった。


「あれ?他の皆は?」

「アイナちゃん達ならさっきロイスさんに呼ばれて校長室に行ってるよ。私たちも行かないと」

「起こしてくれたのか。悪かったな」


 俺の言葉に、気にしないで良いよ、とノエルは答えると


「じゃあ、校長室だからね?」


 そう言って行ってしまった。


「そんじゃま、俺も行くかな...あれ?」


 手元に置いておいた仕込み杖を握るとガチャリ、と鞘と刀身がずれているようなおかしな音がした。


「あれ...」


 もしも壊れていたりしたら大変だ。これはいわば父さんの形見でもある。まだ二戦しか使っていないのにもう使えなくしては父さんも悲しむだろう。


「あとで調べてみるか」


 別に今すぐ戦うわけじゃないし、そんなに急ぐ事もないだろ。確か...そうだ、校長室だっけか。急ごう。

 外に出てみると俺達が戦っていた西側ほどではないにしろ、俺が今いる講堂がある北側もかなりの被害を受けていた。教師が総出で修復作業を行っているようであちこちから作業音が聞こえてくる。といっても魔法があるし俺のいた世界よりは早く修復されるだろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、校長室にたどり着いた。


「さーせん、遅れまし―たぁ!?」


 がらら、と校長室のドアを開けると、あまり広くない校長室内でカレル達によるパーティーが開かれていた。参加しているメンバーはカレルにケイト、ノエルにアイナなどの襲撃事件に関わっちゃった努力組が揃っていた。


「おぉ、ディオ!遅えぞ!」


 上機嫌になっているカレルが何か飲み物の入ったグラスをもって近づいてきた。カレルの顔は赤みを帯びていて、まるで酔っぱらっているようだった。


「なにやってんだ、これ」

「なにって打ち上げに決まってんじゃねぇか。今回の事件では俺達いつものメンバーは全員無事だったんだからよ!」


 がっはっは、と笑うカレル。その横では、


「リオネせんせぇ~、アタシもうむり~」

「なんだぁケイトォまだまだだ~」


 と、酔いつぶれているケイトとリオネ先生がいた。そうか、この世界で飲酒していいのは16歳からなんだったけか。俺たちはみんな18だから俺も飲酒していいことになる。一応ここは校長室なんだが...


「あれ?ロイスさん、そういえば校長先生は?」

「あぁ、ゲルトなら今頃魔法省のお偉いさん達に絞られてるだろうさ」

「あぁ...なんか申し訳ないっすね...」

「いやいや、ゲルトはよく魔法省に呼び出されるし、慣れてるさ。それより―」


 ロイスさんは手に持っていたグラスを机に置くと俺に向き直った。


「あとわずかでディオ君たちはクロムフロウの卒業資格を取得できる。このまま行けばディオ君は一介の冒険者としてギルドに加入することができる。だが君の神創魔法は強力過ぎる。学校側は今回の一件でのディオ君の活躍、及び君の神創魔法については一切公表していない。もし魔族や他の機関に目をつけられたら狙われかねないからね」

「.....確かに。あの魔法は使い勝手は悪いけど、使いようによっては魔族の力も使えますからね」

「その通り。だから君が冒険者になって魔法省で正式に認定魔法士になるまではあまり見せびらかさない方がいいだろう」

「了解っす」

「それで、卒業資格の話なんだけどさ」

「はい?」

「君の事情を知っている僕としては今すぐにでも卒業資格をあげたい所なんだけど、学校としての決まりでね。その生徒の所属している科の卒業試験をクリアしないといけないんだ」

「なるほど...」

「君は魔導科に所属していただろ?じゃあディオ君の卒業試験は...よし。ディオ君専用の魔導機をつくる、にしよう」

「魔導機...ですか?」

「あぁ。ケイト君のように魔導機を主力に戦う冒険者もいるし、色々便利だし、ディオ君も一機くらい所有していてもいいだろ?」


 魔導機は本来、ケイトのような格闘が苦手(?)な魔術師が使役するものだ。俺にはあまり必要ないように思うんだが...


「ディオ君、どうせ『俺にはあまり必要ないように思うんだが』とか考えているんだろ?」


 読まれてる!?


「いやぁ、まぁ...すいません思ってました」


 流れるような動作で土下座をする。プライド?なにそれおいしいの?


「まぁ、わかれば良いよ。じゃ課題はそれでいいかい?」

「はい。でも、俺色々あって魔導機のフレームとかなんにも作ってませんよ?」

「そこは僕が準備しておこう...めんどくさいから(コア)は小型の猫サイズで頼むよ」


 ........とりあえず、ロイスさんが俺専用のフレームを作ってくれるという事は一応理解した。


「あの、ロイスさん」

「なんだい?」

「その核を採取しに行くのは明日でもいいんですか?」

「まぁ、構わないけど。いいのかい?こんなことがあったばかりだし、もう少しゆっくりしても怒られはしないと僕は思うな」

「そうかもしれないですけど。俺は1日でも早く父さんと同じ冒険者になりたいんです」

「...分かった。では明日『永秋の森』にて魔物の討伐、捕獲を行えるように手配しておくよ」


 そう言ってロイスさんは書類に何かを書き始めた。


「あっ!ロイス先生!私も行きたいです!」


 話を聞いていたノエルが机の反対から身を乗り出して言ってくる。どうやら酔っている訳ではないようで真面目に言ってるらしい。


「え?ノエル君も?...別に、構わないけど...」

「あっ!じゃあ先生、私も~!」


 顔を真っ赤にしてケイトも手を挙げる。こっちの場合は完全に酔っている。飲んだくれ系JKが。


「...ケイト君...まぁいいか。じゃあ明日はノエル君とケイト君、そしてディオ君の三人で...」


 ロイスさんがそう言いかけたとき、部屋の隅でジュースを飲んでいたアイナが声をはさんだ。


「...あの、私も、その、同行しても良いでしょうか?」


 不安そうに腕を抱えながら俺に視線を向ける。どうやらずっと話は聞いていたようで、ようやく会話に参加出来たらしい。


「えと...俺は全然良いけど...」

「私もオッケーだよ!」

「ふぇ?アイナも行くの~?」


 俺たち三人はそれぞれ返事を返す。するとアイナは嬉しそうに言った。


「では明日、よろしくお願いしますね!」


 そう言って笑うアイナはやっぱり綺麗で、笑っているのをあまり見ていなかった事もあり、とても新鮮だった。俺が記憶の奇跡(メモリアル·テラス)で力を借りてから、何か吹っ切れたのか、アイナは最近よく、とまではいかないが以前より断然俺たちと会話をするようになった。


「カレル、お前も行かないか?」


 隣で騒いでいたカレルも誘ってみる。


「あ~興味は無くもないが、悪い。機械女が同行するって時点で俺が行く可能性はないな」

「...そうかい、だと思ってたよ」

「へへっ...よっしゃー!みんな盛り上がろうぜー!」


 カレルが囃し立て、校長室内は更に盛り上がる。

 俺たちは魔族を追い払う事に成功した、という達成感を感じながら楽しい一夜を過ごした。








すいません、投稿間隔あきすぎですね(-_-;)やる気はあるんですが、時間がとれなくて...これからも投稿間隔があく時があると思いますが、失踪だけは絶対にしませんのでwwよろしくお願いいたします^_^

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