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 俺、特に何もしない

よろしくお願いいたします^_^

『さぁどんどん行きましょうー!!美と魔法に優れるのは果たして誰か...午後、魔導の部スタートです!!』


 俺とカレルがエントランスで休んでいると校内のスピーカーからアナウンスが流れる。


「にしても、このアナウンスめっちゃテンション高いよな」

「確かに!それで?カレルは魔導の部見に行かないのか?」

「あ~、気が向いたら行くわ。先行っといて」

「はいはい」


 つまり来ないってことでいいんだよな。魔導の部かぁ。武道の部がむさ苦しい戦いだったから、たぶん優雅な感じなんだろうな...ファッションショーの意味もあるらしいし。


「おうおう、ディオ君ではないかね!」


 そう言って上機嫌で俺に駆け寄ってきたのはいつもと違い藍色のドレスを着たケイトだった。


「おぉ、ケイト。ってお前は行かなくて良いのか?」

「まね!私は6番目だし」

「そうか。結構遅いな」

「魔導の部は参加人数がそんなに多くないしね。ちなみにアイナは2番目だよ!」

「えぇ!?早いな?」

「そだよー!早く見に行かないとね♪」

「あぁ、そうだな!それじゃお前も頑張れよー!」

「うん、応援してね!」



「うわ~、午前程じゃないにしろ、相変わらず人多いな~」


 どこか空いてる席はっと~


「おーいディオ君!」

「ロイスさん!」


 声のする方に目をやるとロイスさんが2席場所を取っておいてくれた。


「すいません!」

「いやいや、どうせ見に来るんじゃないかと思ってね」


 さすがだわ。今のところ俺の中で尊敬する人ランキング堂々の1位だ。


「ほら一回戦が始まるみたいだよ」


 ロイスさんに言われてフィールドをのぞきこむ。あれ?武道の部と違って地面がしっかり整備されている。それを不思議そうな顔をしている俺に気づいたロイスさんが解説してくれる。


「武道の部と違って魔導の部は魔法や魔導機を中心として戦うんだ。だから魔法の発動や魔導機作動に影響のでないように地面がしっかりと整備されるんだ。まぁ本当はおしゃれをして戦う女子の服汚したくないっていうゲルトなりの配慮なんだけどね」

「へぇーってゲルト校長が!?」

「うん。まぁああ見えて意外と女性には優しいからね」

「それは本当に意外だ...」


『それではっ!!これより魔導の部、第1試合目を開始します!』


「きゃああああああああ!!!」


 さっきまでの観客の雄叫びと違い、ライブにきた時の女性のような歓声が響く。これは...俺の世界であった東急ガールズコレクションみたいな感じか。学校でファッションとか...よくゲルト校長が許可したな。


『それでは行きましょう!エントリーNo.1ルナリア·M·マリア選手!!』

「きゃあああああああああ!!」

『エントリーNo.2ミカエラ·クエヅ選手!!』

「きゃあああああああああ!!」


「うるせぇ!!」


 なんなんだキャアキャアと猿かお前らは!?なんでロイスさんは平気なんだ?


「?」


 耳栓..ロイスさん、ハナから聞く気ないのかよ...俺のなかでまたロイスさんの株が上がるのだった。


「両者、構え!!....始め!!」

「がんばれ~!!」

「きゃあ~」


 開始の合図と共に歓声が飛ぶ。これフィールドで聞こえるぶんには良いかも知れないが、隣でやられると非常に迷惑だ。試合が頭に入って来ない。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我が前に立ちふさがるものに水流の怒りを!」

「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我が前に立ちふさがるものに灼熱の怒りを!」


 二人の生徒から初級魔法の水塊と炎塊が放たれ、ぶつかる。


「きゃあああああああああ!!!」


 観客は相変わらず猿騒ぎをしている。


「くっ!やるわね!」

「貴女こそ!.....!?」


 どうしたんだ?片方の女子の様子が変だぞ。


「そんな...」


 !?急にその場に座り込んだぞ!どうしたんだ!?


「お洋服に...お洋服に穴がぁああああ!!」

「きゃあああああああああ!!」


 ........は?


「お洋服に穴が!私、もう戦えませんわ!」


 ........ん?


『え、え~と...ミカエラ選手の辞退により、ルナリア選手の勝利です?』

「きゃあああああああああ!!」


 .........まてまて!?!?司会の気になるけどまぁ、いっかみたいな感じは!?


「ロイスさん!」

「................」


 寝ている....ロイスさん、ハナから見る気ないのか.....結果俺の中でのロイスさんの株が上がるのだった。



『えぇ~ちょっと締まらない感じでしたが次はご安心を!!学園の秀才がこの世界に殴り込み!エントリーNo.3アイナ·ルフ選手!!』

「きゃあああああああああ!!」

『続きましてエントリーNo.4マドリッド·ネイス選手』

「きゃあああああああああ!!」

「なんかもう、突っ込むのが馬鹿馬鹿しくなってきた」


 しばらく黙ってるから実況とナレーションだけで楽しんでてくれ。


「両者、構え!!....始め!!」

『おぉっとアイナ選手マドリッド選手から距離をとったぁあ!一体どうするつもりだぁあ!』

「...我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我が前に立ちふさがるものを縛りつけろ」


 詠唱と同時に中指と親指を使い、パチンと音を鳴らす。するとアイナの右手に現れた魔方陣から金色の紐が伸びていく。


「なんですって~!」


 金色の紐に縛られたマドリッドは魔法を発動するのに重要な右手を拘束されてしまった。アイナは必死に紐から抜け出そうとするマドリッドに近づき、


「その拘束からはにげられない。貴女の負けです。大丈夫、服は傷つけていません」


 その言葉に会場中の女子が沸き上がる。


「きゃあああああああああ!!」

「くっ、私の負けよ」

『決まったぁあああ!アイナ選手見事マドリッド選手を無力化!これが才女の戦い方とでもいうのか~!』

「いやぁ流石だねぇ」

「ロイスさん!?起きてたんすか」

「まぁね。それにしても相変わらずスゴいねぇアイナ君は」

「まぁ確かに半端ないっすね」

「これは魔法省からスカウトも来るわけだ」

「そうなんですか!?」

「あぁ。まだアイナ君が15歳位のときにね」

「それって...」

「そう。“高貴の衰退(アーン·ティティム)”が起こった年だね」

「へぇ...」


『さぁあ!!じゃんじゃん参りましょ―!!』

「きゃあああああああああ!!!」


 その後も順調に(?)試合は進んでいき、ケイトの出番になった。


『さぁ、次の選手は皆さんご存じ!!学園のアイドルにして魔導機開発のプロ!ケイト·ピューラ選手!!』

「きゃあああああああああ!!」


「うぉ...カレルもだったけど、二人とも意外と人気なんだな...」


 あんなに...変なやつらなのに。


「両者、構え!!...始め!!」


 始めの合図と同時にケイトは相手との距離を開けた。そして―


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって意思なき錻に力を宿せ!!」


 ケイトの懐からたくさんの小型魔導機が飛び出す。


「あれは...」

「あれはケイト君が自力で開発した魔導機だよ。(コア)に使用している魔物が小型だからあの位のサイズになってしまっているけども」

「へぇ、すげぇな。ケイト」

「ちなみにこれがケイト君の魔導機だよ。」


 そういってロイスさんが取り出したのはピンポン玉位のサイズのカブトムシみたいな魔導機だった。


「このフレームは..」

「もちろんケイト君の自作さ」

「色んな意味でスゴいなケイト」


 俺達がそんなことを話している合間にも試合は進んでいた。


「行きなさい!私のコ達!!」

「ひゃあ!我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我を守りし防壁を創れ!」


 大量に迫ってくるカブトムシ型魔導機に相手の女子生徒は防御一点だった。しかし圧倒的量の魔導機の突進にとうとう精神が耐えきれずに砕けてしまった。


「きゃああ虫―!!」

「きゃあああああああああ!!!」


 それで相手の選手は気を失ってしまった。


「え?うそん」


 これにはケイト本人もビックリだったようで。


『気を失ってしまったため、ケイト·ピューラ選手の勝利!!』

「わ、わーい?」

「きゃあああああああああ!!」


 なんかそれぞれ大変そうであった。



「お疲れ―!!」

「ディオ君!!」

「.....」


 俺はロイスさんに場所を任せ、選手控えの二人に会いに来ていた。


「どうだった?私、凄かったでしょ?」

「あ、うん。色んな意味でな」

「ちょっとそれどういう意味よ!」

「るせ~!色んな意味だよ!」

「あの....」


 口をつぐんでいたアイナが口を開く。


「私は.....どうでしたか?」


 あかぶち眼鏡っこ+上目遣い=kawaii

 その時、俺に変なスイッチが入った。


「マジで凄かったよ!特にあの相手を縛る魔法?あれを使ってる時のアイナめっちゃかっこよかったよ!ドレスも似合ってるし!!」

「あ、ありがとうございます....」


 アイナは顔を紅くしてうつむいてしまった。


「ディオ君~?今のはちょっと、いえ、かなりキモかったわよ?」


 笑顔でケイトが近づいてくる。言葉とは裏腹にめちゃくちゃ笑顔なのがさらに怖い。


「いや、ケイトさん?これはあれですよ、言葉のあやって言うか、口が勝手に言っただけって言いますか....」

「まぁ、良いわ。その変わり、アイナと話す時は常にカブトムシがいないか気をつけてね」


 こええええよおお!!お前はアイナの何なんだ!と言いたい気持ちをそっと抑え飲み込む。


「分かりました。以後心に焼き付けておきます!」

「よろしい」

「ははぁ~」


 俺とケイトが軽いコントを繰り広げる。すると


「くすっ、あははっ」


 アイナが笑った。


「アイナが笑った?」


 それはケイトも同じことを考えていたようで俺の変わりに声に出してくれた。


「ふふっ私だって笑いますよ」


 初めてみるアイナの心からの笑顔だった。


「ディオ君、アイナが、アイナが笑った!」

「あぁ。」

「ディオ君、アイナが、アイナが笑った!」

「何故二回言った?大事な事か?」

「ディオ君、今日は記念日にしないとね!」

「んな大袈裟な」

「甘いなぁディオ君、私はアイナと長い付き合いだけど笑った顔は右手で数えられるくらいしかないんだよ?なのにこんな笑顔を見れたディオ君はラッキーだよ!」

「そう、なのか?」

「そうなんです!ね、アイナ」

「....は、はい」

「よぉーし後半戦も頑張るぞ~!」

「頑張るのは良いけど程ほどにな」

「了解です!」


『さぁ後半戦参りましょ~!二回戦1試合目は服を味方につけたルナリア選手と一戦目で圧倒的な実力を見せたアイナ·ルフ選手です!!』

「きゃあああああああああ!!」


 相変わらず観客はぴぎゃってるな。にしてもアイナとこの学校の生徒じゃほとんど相手にならないんじゃないか?


「両者、構え!!...始め!!」


 アイナはさっきと同じように距離をとった。しかしルナリアもそれが分かっていたのか距離を開けさせまいとアイナに突っ込む。


「....かかりましたね」

「え?」

「設置魔法、“踏み火炎(トラッピングボム)”」

「キャアア!!」


 アイナが中指と親指を使い、パチンと音を鳴らす。すると地面に設置された魔法が発動し、ルナリアは空高く打ち上げられた。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって縛り紐を包容せし布に!」


 すかさずアイナが魔法発動させ落下してくるルナリアを受け止める。


「くっ、悔しいけど、流石ね。私の負けよ」

『おぉっと!ルナリア選手自ら負けを認めたー!客席からは敬意をこめた拍手が送られています!』


 いや、まてまて。なんでルナリアってやつがヒーローみたいになってんだ?当たり前だろこれ。


『いやぁ、いいストーリーでしたねぇー!さぁ、つぎぃ行ってみよ―!』

「きゃあああああああああ!!!」


 次は確かケイトが出る番だな。


『さぁ次の試合は魔導機姫、ケイト·ピューラ選手に注目です!』


「両者、構え!!...始め!!」


 ケイトもさっきと同じように距離を開ける。


「無駄よ!」


 対戦相手もさせまいとケイトに突っ込んでいく。


「設置魔法―」

「なにぃ!?」


 ケイトの呟きに対戦相手が動きを止める。


「―なーんちゃって!」

「しまっ!!」


 ケイトは立ち止まると、隙を見せた相手に向かってカブトムシ型魔導機を投げ放つ。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我に歯向かうものに灼熱の炎を!!」


 〈キュイイイイ!!〉


 相手の放った炎魔法に焦がされてカブトムシは断末魔を上げながら減速する。


「よくも!よくもタロウ十四世を!!」


 そのカブトムシ型魔導機はなぜか思い入れがあったらしく、ケイトがキレた。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我に鼓舞の波動を!!」


 その瞬間、ケイトの身体を赤っぽいオーラが包む。


「はぁあああああ!!!!」


 まさかの直接攻撃。これはさすがに相手も予想していなかったようで魔導の部最初にして最後の耐久切れでの敗北となった。


『勝者、ケイト·ピューラ選手―!!魔導の部でまさかの物理攻撃を繰り出しました~!!!!!そして残す試合は優勝決定戦です!!巧みな魔法を操るアイナ選手か!!魔導機とのコンビネーションアタックのケイト選手か!!期待がつのります!!』






誤字脱字のご指摘お待ちしております♪

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