俺、なんか陰謀にまきこまれてるっぽい!
よろしくお願いいたします^_^
ん...なんか床が柔らかい...
「知らない天井...いや知ってるだろ」
自分で自分に突っ込みを入れる。ここは学校の保健室だ。確か俺はハバスと戦っていて...そうだ。試合を終わらせようとしたら誰かが魔法を...
「ディオ!!!!」
「ディオ君!!」
俺が寝ていた病室にカレルとケイトがやって来た。
「なぁ試合は?」
「お前が急に倒れたからハバスの判定勝ちだ」
「そうか....」
「ディオ君、一体どうしたの?」
ケイトが俺に尋ねる。
「俺もよくは分からない。でもあの時後ろで誰かが俺に魔法を」
「魔法?」
「あぁ。確か『我ここに命ずる。森羅万象の怒りをもって―』とかいう詠唱だった」
「なんだその詠唱?初めて聞くな」
「私も」
「そうか」
ロイスさんならなにか知っているかもしれない。後で聞きにでも行くか。
「まぁ、ディオに大事がなくて良かったってことで。俺は二回戦があるから行くな」
「そうだったな。頑張れよ」
「はいはーい」
カレルは走って控え室に行ってしまった。
「ケイト、俺は武道の部見に行くけどどうする?」
「私も行くよ!」
「うわー二回戦とあってさっきよりさらに人が増えてるねぇ~」
ケイトがうんざりするように言った。おそらく一回戦より二回戦の方が強者が多いからだろう。
「カレルはどのくらいか分かるか?」
「えーと、3試合目って言ってた気がするけど...」
「わぁった」
俺がフィールドを眺めていると二回戦が始まった。すると
「アイツは...!」
一回の試合で登場したのは一回戦で俺に勝利したハバス·ロフトだった。
「ん~、優勝候補だったディオを倒したって事でかなり株が上がってるみたいねぇ」
「くそっ!あの時邪魔さえなかったら!」
「はいはい。ほら、始まるわよ?」
「わぁああああああ!!!」
第二回戦の開始に観客が沸く。
『さぁ第二回戦の開始です!一回戦では奇跡的な勝利をおさめたハバス選手!二回戦も勝ち残れるのかー!?』
第二回戦の開始を知らせるアナウンスに会場がよりいっそう騒がしくなる。
「両者、構え!....始め!」
審判が合図をする。ハバスはさっきと同じ装備で、よく見る勇者様装備だ。対する相手は2試合目で勝ち残った大剣使いだ。結果は...
「ハバス選手、敗退!!」
まぁ、だろうな。一回戦の段階で俺に圧倒されてたし。次の試合は俺がトイレにいっているまに終わってしまっていた。ケイトいわく、
「スゴかったよ!もうなんかドバァーン!って感じで!」
だそうだ。そしていよいよカレルの番がやって来る。
カレルはさっきと同じ騎士の様な白っぽい鎧をみにまとっていた。対戦相手は小柄な二刀流の男子生徒だった。
「両者、構え!...始め!」
審判による開始の合図があがる。カレルは一回戦と同じように相手から距離をとった。しかしー
「させねぇよ!!」
二刀流男子はカレルに距離をとらせまいと驚くような速さでカレルを翻弄した。二刀流男子の速さにさすがのカレルも防戦一方だった。一撃目と二撃目にほぼ感覚がなく、ハルバードという槍系統の長い武器はこのような間合いの短い、速い武器があまり得意ではない。ましてや相手は軽さ重視の軽装でカレルは白銀の鎧を着ている。単純なスピード差がすでに生まれてしまっているのだ。
「ねぇ、ディオ君、カレルのやつちょっとヤバくない?」
ケイトが心配そうに呟く。
「あぁ。このままだと耐久がどんどん減っていくだけだ」
実際、モニターに映し出されているカレルの耐久はもう半分をきってしまっている。
「ほらほらぁ!このままじゃ負けちゃうよぉ?」
狂ったように攻撃を繰り出す対戦相手にカレルは戸惑っていた。
(なんなんだコイツ...本当に狂ってやがる....!)
するとカレルは二刀流男子の腕に奇妙な装飾のブレスレットを見つけた。
(こうなりゃあ、一か八か...)
カレルはハルバードは柄をグッと握り、力をこめた。
「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我が手に握る不滅の矛に永久の力を!!」
カレルが唱えた呪文。それは兵器科で最初に習う武器強化魔法の応用。
「はっ!今更武器を強化したところでなんになる!」
距離をとろうとするカレルに二刀流男子が近づく。だが―
「てめぇこそいい気になるなよ!貫け!不滅矛!!」
カレルが力強く叫んだ。次の瞬間、カレルの握っていたハルバードの柄の部分が勢いよく伸びた。
「な―ぐはぁ!」
何処までも伸びていく不滅の矛は二刀流男子を貫こうとさらに加速していく。
「これで終わりだぁ!!」
カレルは外壁に二刀流男子を叩きつけると、大きく振り上げた。宙に打ち上げられる二刀流男子。カレルは二刀流男子が落ちてくるほんの一瞬を狙っていた。
「そこだぁ!!」
カレルが不滅矛を伸ばす。矛が目指す先は二刀流男子の右腕につけられたブレスレット。
パキィィィン!
ガラスを割るような音をたててカレルの矛がブレスレットを破壊する。すると二刀流男子の身体から黒と緑が混ざった様などす黒い霧が一瞬、ブレスレットを中心にあふれでた。しかしそれに気づいていたのはカレルと俺を含む何人かしかいないだろう。その証拠に観客は
「わぁあああああああああああああ!!!!!!!!」
と今日一番の盛り上がりを見せている。カレルはフィールドから俺に軽くアイコンタクトを送ると控え室に戻っていった。
「カレル!無事か?」
あとの試合はケイトに見ておいてもらい、俺はカレルのもとに向かった。
「おぉ、ディオ。大丈夫だ。特に問題はない」
「それならいいが....それより...」
「あのブレスレット...か?」
「あぁ。あれはなんだと思う?」
「俺に聞くより、ロイス先生とかに聞いた方が分かると思うが...あれは多分装着者に洗脳とかをかける類いのものだと思う」
「そうか。カレルはこのあともで続けるんだろ?」
「あぁ。手伝ってやれねぇですまねぇな」
「別に良いぜ。その代わり、またなんか分かった事があったら教えてくれな」
「おう」
一体なにが起こってるんだ?明らかに外部からの工作をくらってるな。やべぇ早くも核心に近づいてきたんじゃねぇか!?
その後、なんとなく校内をブラブラしていると、華やかなドレスを着たケイトにあった。
「おぉ、ケイト!どうしたんだその格好?」
「んふふ~どう?かわいい?これから始まる魔導の部で着る衣装なんだ~」
藍色をメインに花とかそういう装飾が施されていて俺の世界で結婚式場に飾ってあっても全く違和感がないと思えるほど、ケイトの着ている衣装は華やかだった。
「魔導の部の奴らはみんなそんな格好をしてるのか?」
「まぁね!も·ち·ろ·ん、アイナも着てるよ~!」
そういって柱に隠れていたアイナの腕を引っ張り出す。
「おぉ...」
ケイトに引っ張られて顔を赤くしながら出てきたアイナは淡い紫色を基調としたドレスを着ていた。
「....こ、これは別に...私が着たがったんじゃなくてケイトが.....」
「はいはい、悪かったってば!でもほらディオ君見てみ?見とれてるよ?」
「な!?べ、別に見とれてはいないけど....」
「けど?」
「....かわいいなとは」
その一言でアイナの顔が真っ赤になった。
「. ....し、失礼します!」
とアイナはどこかに走り去ってしまった。
「うわーないわー軽くひくわー」
「いや、その俺もちょっと、その....」
というか今のは俺が悪いのか?
「まぁいいわ。んじゃしっかり応援に来てネー!」
手を振りながらケイトは行ってしまった。
「何だったんだ.....」
そんなことを考えていると再びアナウンスがなる。
『これより、午前武道の部、優勝決定戦を開始します。選手はエントリーNo.2カレル·アーク選手、エントリーNo.7ショーヤ·マクドニア.選手です。繰り返します。これより―』
「おっと、もうそんなに進んだのか」
カレルは上手く勝ち抜けたみたいだな。見逃さないようにさっさといくか。
「相変わらず凄い人だなぁ」
優勝決定戦とだけあって一回戦の比じゃなない。どこに座るかなぁと....
「おっ、ディオではないか。こっちこい!!」
声のする方を見ると....ってなにこのデジャブ感。声のする方を見ると、リオネ先生とロイスさんが並んで座っていた。
「二人とも何してるんすか?」
この二人は朝から俺たちの様子を見に来たり、今みたいに観客席に座って試合を見ていたりと行動が自由だ。
「僕らはゲルトからの指示で校内の警備をしているんだ」
「と、いう名目でサボっとるんだ」
「よくもまぁどうどうと...」
「別に、警備するようなこともいないしの」
「「え?」」
俺とロイスさんの声がハモる。
「え?って何かあるのか?」
リオネ先生は本当に分かっていないようで?と首をひねっている。
「リオネ先生ってロイスさんと一緒にいたんですよね?」
「うん。その筈だけど」
だとしたらブレスレットの事とか全く気づいてないってことじゃないか!?
「?なんだ二人とも。隠し事でもあるのか?」
「その、出来れば自分で気づいてほしかったというか、本当は隠したくなかったというか」
「なんだと言うんだ!言え!」
俺に向けて人指し指をビシィと立てていった。
「ディオ君....詳しい事は僕があとで話しておくよ」
「お願いします...」
「それより、優勝決定戦にでてる生徒は君が前僕の部屋に連れてきた子だよね」
「あぁはい。」
「どうりで。どこかで見たことあるとおもったんだ。そうか、彼は兵器科の所属だったねぇ!」
思い出して楽しそうにロイスさんが笑う。
「そんなに面白いんすか?」
「生徒がどんな形であれ活躍するのは教師として嬉しいよ」
すごい。この人やっぱりいい人だ。それにたいして
「おいディオ、綿菓子を買ってきてはくれんか?」
このちびっこは自分の教え子をパシリに使おうとさえしてるのに。
「分かりました。試合、ちゃんと見ててくださいね?」
出来るだけカレルの試合を見たいので駆け足で出店まで向かう。幸いほとんどの客が優勝決定戦を見ているようで今朝とは違い人がかなり減っていて、並ばずに綿菓子を買うことができた。
「はぁはぁ。ほらリオネ先生、綿菓子です」
「お、おう。ありがとな」
「ん?どうしたんですか?」
「それがねぇ、カレル君が...」
ロイスさんが手招きをする。
「一体どうしたんすか....!」
フィールドに目をやると耐久をほとんど減らされたカレルと耐久を完璧に残し、カレルを攻撃する男子生徒がいた。
「おいおい、マジでか!」
「まだ開始からそれほど時間がたってはおらんが...あの男子相当な腕前よの」
リオネ先生が綿菓子をパクつきながら説明する。
「カレルの武器の性質がバレていると言うのもあるが、ハルバードの攻撃を完全にかわし、一気に剣でラッシュをかける...内の学校にあんな才能の持ち主がいたとはな...」
俺は再びフィールドに目を戻す。
「あっははははは!これが僕の実力!!どうだ!思い知ったか!」
「くっ!」
カレルは耐久を削られ続け、もはや防御に専念するしか術がなかった。
「ふふふ、防御ばかりでは僕には勝てないよ?あはは!」
「くっそぉ!」
カレルは攻撃の隙をみて何とか脱け出す。そして間合いを開けると、
「我ここに命ずる。森羅万象の知恵をもって我が手に握る不滅の矛に永久の力を!!貫け!不滅矛!!」
最高速でハルバードを伸ばし突きを繰り出す。しかし、
「甘いんだよ」
剣で受け流され、懐に潜り込まれてしまった。
「しまっ!!」
「そろそろ終わりにしようか」
ドゴオォオオオオオオオン
フィールドに轟音が響く。審判が慌てて駆け寄る。
「しょ、勝者、クラズ·ホフキンス!」
「わあああああああああ!!!」
武道の部の優勝者が決まり、会場の興奮はMAXに達した。
「カレル!!」
控え室に運ばれてきたカレルに駆け寄る。
「大丈夫か?」
「まぁ、魔法もかかってたし一応は」
「ヤバかったな、今のやつ」
「あぁ、まさかこの俺が負けるとは」
「ははは、だから調子乗るなっていったろ!」
「だな!」
今はただ帰ってきた親友の無事を喜んだ。それしか、俺には出来なかった。
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