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 俺、優勝を目指してみたが

よろしくお願いいたします^_^

「さぁいよいよやってまいりました!第3回校内模擬演武大会!!」


 学校中のスピーカーから高らかに開催が宣言された。このためだけに敷地内に特設のフィールドまで用意されたくさんの観客が模擬戦を見に来ていた。っていうか模擬演武大会ってそんなに長い名前だったのか。今までみんな『本番』とか『模擬戦』とかいう言い方しかしてなかったから知らなかった。


「ディオ~準備出来たか?」


 出場生徒控え室で準備運動をしていると自分の準備を終えたカレルがやって来た。何故か普段と違い派手な騎士の様な鎧を着用していた。


「なぁこれって魔法でダメージを軽減するんだろ?鎧とか意味あるのか?」

「あるよ!おおありだよ!今日は魔法省のお偉いさんとか有名な鍛冶師の人も来るんだぜ!?ここで活躍すればそんな人達からの注目を集められるんだぜ!」

「そのためにそんなに派手な格好を?」

「他の奴らもこんな感じだぜ?よく知らねぇけど魔導の部では女どもが貴族みたいなドレス着て戦うらしいし」


 あぁ。要するにこの模擬演武大会は男子生徒は強さのアピール、女子生徒のおしゃれ自慢みたいなことも含まれてるのか。ほぼ生徒主催のお祭り状態だな。


「ディオはなんかしないのか?」

「俺?」

「だって俺とお前はこの模擬戦の優勝候補として結構有名になってんだぜ?」

「そうなのか?」


 特訓の時にかなりの生徒が対戦を申し込んで来たけどこれが理由か。


「でもなんで?」

「そりゃお前、急に転入してきた奴がもともと優勝候補だった俺と戦って勝ってんだぜ?有名にもなるさ」

「なるほど...というかお前が優勝候補だったことに今とても驚いたよ。本当か?」

「本当だって。俺の姉貴も去年この大会で優勝してんだよ」


 なるほどな。優勝者の親族だしそれなりの期待もされてる訳か。実際強いし。特訓をしているとカレルのことを“さん”付けで呼ぶ1、2年生がいたから有名なのかなとは思っていたけどさ。


「で?お前はどうするんだ?」

「どうするって、格好のことか?俺は別にここを卒業出来れば良いし、いらねーよ」

「だからって制服のまま出場すんのかよ」

「まぁ、な?」

「かぁー、しけてんな~。まぁ良いけどよ。別に強制じゃねぇしな。先行ってるぜ」


 カレルはそう言って特設フィールドの方に行ってしまった。


「さて、と。俺も行くか」


 俺は仕込み杖を握るとカレルに続きフィールドに向かった。



 大会は午前は武道の部、午後からは魔導の部と分けられている。だから武道の部を終わらせてからも魔導の部を観戦することが出来る。


「さぁ!!いよいよ午前、武道の部が開始します!!選手の方々はエントランスに貼り出してありますトーナメント表で各自、自分の出番を確認しておいてください!!」


 俺がエントランスに着くとまたスピーカーから放送が流れる。


「おぉ!ディオ!」


 トーナメント表を見に行こうとすると先に言っていたカレルに呼ばれる。


「ディオ、自分の順番はもう見たか?」

「いや、まだだけど」

「だと思ってほら、お前の順番も確認しておいたぜ」


 そう言って俺に俺の名前と対戦相手の名前がかかれたメモを渡した。


「えっと~、5試合目にハバス·ロフト?」

「みたいだな。ほら、アイツがハバスだ」


 そう言ってカレルが指差したのはいかにも普通な感じの男子生徒だった。


「ふ~ん。カレル、お前は?」

「俺か?俺は1試合目だよ」

「ホントか!?相手は?」

「俺達が初めて特訓しに行った時に、壁壊して怒られてたヤツ」

「あぁ...」


 そういえばいたな。確かでかい斧を持ってた。


「だとしたらもうすぐだな」

「あぁ。そろそろ行ってくるぜ」

「おう。応援してるぜ」

「任せとけって」


 そう言うとカレルはフィールドに向かって行った。



 観客席に行くとたくさんの人が来ており座れる場所があるかどうかすら分からなかった。


「あ、ディオ君~こっちこっち~」


 声のする方を見てみるとケイトがクラスの何人かと一緒に座っていた。


「どうせ来ると思ったからさ、場所とっといたよ」

「マジでか!助かるわ」


 ケイトが空けてくれていた席に座ってフィールドに目をやる。するとゲルト校長が開会の挨拶をしているところだった。


「本日はこの都市立クロムフロウ魔法学校主催第3回校内模擬演武大会に起こし頂きありがとうございます。

 本日は生徒達の日頃の努力の集大成となります。――――」


 ゲルト校長は魔法省のお偉いさんとかに挨拶をすませると、一呼吸間を開けた。そして


「それでは、第3回校内模擬演武大会、開幕です!」


 ゲルト校長が宣言する。それにあわせて吹奏楽団が開会のファンファーレを鳴らす。


「本当に運動会みたいだなぁ」

「運動会?なにそれ?」


 俺の呟きにケイトが反応する。


「ん!?いや、何でもない!」

「そう...?」

「あ!ほら1試合目が始まるぞ!」


 慌ててフィールドを指差す。そこには白いハルバードを持ったカレルと馬鹿デカイ斧を持った大男が向き合っていた。


「うわっ!カレルじゃない。なに格好つけちゃって!」

「本当に仲悪いんだな...」


 安定のケイトだった。



「両者、構え!....始め!!」


 審判が両手を振り上げる。その瞬間、カレルが大男と一気に間合いをあける。それに対して大男は斧を振り上げてカレルに突進していった。


「うおおおおおおお!!」


 野獣のような雄叫びを上げて大男はカレルに斧を振り下ろす。しかしカレルはそれを横に飛ぶことでヒラリと回避する。同時に宙に浮いた状態で大男の横っ腹にハルバードで三段突きを繰り出した。フィールドの上部に取り付けてあるモニター的なものに大男の耐久が写し出される。


「うわ~もう相手の耐久三割きってるよ」


 大男の耐久を見て言う。その手には出店で買ったと思われるポップコーンみたいなのが。ケイトは俺の世界でいうイマドキの女の子というイメージがあるけど、この模擬戦も映画みたいな感覚で楽しんでいるんだろうか?


 ドゴオオオオオォォォン!!


 フィールドから大きな音が響いた。見ると大男が手当たり次第に斧を叩きつけているようだった。カレルはそれをすべて受け流したり、かわしたりして防いでいた。お調子者のカレルのことだ。きっと観客を盛り上げようとでもしているのだろう。現に観客は大歓声を上げての盛り上がりようだ。一部の女子生徒を除いて。


「うわっ!なにアイツかっこつけてんのよ!」


 俺の隣に座るケイトさんには逆効果のようだった。あげくの果てには、


「頑張れ~ほらっ!そこよ!あ~惜しい!」


 と、大男の応援を始めていた。


「よっと!」


 カレルは斧をを防ぐのに飽きたのか一気に大男との間合いを詰めた。


「ぬおっ!?」


 大男は斧を振り回していたせいでカレルの接近に反応が遅れた。


「もらった!!」


 カレルはハルバードの刃で走り向けるように回転しながら大男の横腹を斬ると、ブレーキをかけて反対側も斬った。大男はカレルの流れるような連撃に何もすることができずにただ耐久を減らされていくだけだった。そして、カレルは大男の正面に立つと大男の肩から斜めに一気に斬り下ろした。大男の体から淡い光が粒子となって弾けた。


「わあああああああああああ!!!!!!」


 カレルの見事な攻撃に観客のテンションは一気に最高潮に達した。ハルバードを右手に掲げ歓声をうけるカレル。これは本当に優勝出来るんじゃないか?と思わせるほどの実力だった。


「ふんっ!どこまでこれが続くのかしらねぇ!」


 ケイトは呆れたように吐き捨てるのだった。




「よう、お疲れ」


 試合を終えたカレルが控え室に戻ってくる。今2試合目が終わり、3試合目が始まろうとしていた。


「おう、ディオ!見てたかー俺の勇姿を~!」

「もちろん。さすがだな」

「まぁな。お前ももうすぐだろ?」

「あぁ。そろそろ準備をしないとな」

「あ~っと....5試合目だっけか?」


 鎧を外しながらカレルが言った。


「そういえば、お前のハルバードどんな仕掛けがあったんだ?」


 そう。さっきの戦いでは攻撃こそ凄かったが、武器に変化があったとは思えなかった。


「それならまだ使ってねぇよ」

「そうなのか?」

「あたりめぇだろうが。あの程度の奴に使えるほどお手軽じゃないんでね」


 鎧をはずし終えたカレルが椅子に座りながらいった。


「安心しろ、ディオと戦う時まで誰にも使う気はねぇから」

「別に今教えてくれてもいいんだぜ?」

「ははっせっかちになるなって」


 そんなことを話していると放送が流れる。


『エントリーNo.9のディオ·カーティルさん、エントリーNo.10のハバス·ロフトさんは選手控えに集合してください。繰り返します。エントリーNo.9の―』

「おっいよいよか」

「それじゃあ、行ってくるわ」

「頑張れよ~」



 係員についていき選手控えに到着する。


「では、試合までここで待機していてください」

「分かりました」


 控え室に取り付けてある小型のモニター的なものには現在フィールドで行われている試合が写し出されていた。そしてそのモニターに写っていたのは、俺が前に試合を申し込まれたあの女子生徒だった。これといって目立つ装飾はしておらず、腕に黒い宝石の埋め込まれたブレスレットを着けているだけだった。


「にしても...これは...」


 女子生徒の対戦相手はなかなか体格いい男子生徒だった。世紀末のような鎧をつけて手にはメイスと呼ばれる先端に鉄の塊がついた棒を持ち、いかにも武闘派な格好をしていた。それに対して女子生徒は普段通りの制服と細身の刀身を持つレイピアで戦っていた。しかし刀身が細く脆いレイピアではメイスの重い攻撃を受け止めることも弾き返すことも出来ない。ただその華奢な体を傷だらけにされていくだけだった。


『ひゃははは、これで終わりだぜー!』


 モニターから男子生徒の声が聞こえてくる。その直後にモニターから聞こえる鈍い打撃音。女子生徒から淡い光が粒子となって弾ける。すぐさまに救護班が駆けつけ女子生徒の様子を確かめる。どうやら命に別状はなかったらしい。モニターから観客の声が聞こえてこないのからするに観客も結構ひいてるみたいだ。


「つ、次の選手、お願いします」


 気まずそうに係員が入場を促す。


「うっす」


 入場ゲートに立つが観客の声は聞こえない。はぁ全くもってやりづらい。


『エントリーNo.9、ディオ·カーティル選手!!』


 アナウンスが入り少々観客が盛り上がりを取り戻す。


『エントリーNo.10、ハバス·ロフト選手!!』


 フィールドの反対側から同じように入場ゲートから相手の選手が出てくる。試合用の格好もまた普通でアニメよく見る勇者って感じだな。


「両者、構え!....始め!!」


 俺もカレルと同じく開始の合図とともに一気に相手と距離を開ける。相手も同じ考えのようでお互いの間に距離が生まれる。相手も使っている武器は剣のようでこれもまた良く見る勇者っぽい剣だった。俺は仕込み杖から刀身を抜き取ると左手に仕込み刃、右手に鞘を持ちいつでも攻撃と防御に移ることの出来る構えをとった。


「はぁあああああ!!」


 ハバスは剣を下段に構えて俺との間合いを詰めた。


「でりゃあああ!!!」


 俺との間合いが2メートルあるかないか位のところでハバスが俺に斬りかかってきた。


「よっと!」


 俺はそれを仕込み刃は腹を使って受け流す。


「わぁあああああ!!!!!」


 俺の巧みなかわしかたに観客が沸く。俺に攻撃を受け流されたハバスは再度俺に斬りかかって来る。


「次は俺の番だ!!」


 俺は紙一重のところでハバスの剣をかわすと一気にハバスの懐に潜り込む。


「なにっ!?」

「オラァ!」


 俺は右手に持った鞘でハバスの腹に一発入れるとそのまま仕込み刃でハバスに攻撃を加えていった。袈裟斬り、突き、振り下ろし、薙ぎ払いと次々に俺は攻撃を繰り出した。


「くそっ」


 ふと真上にあったモニターに目をやるとハバスの体力は残り僅かになっていた。


「そろそろ終わりにするか」


 俺は連撃を止め、ハバスから距離をとった。


「ハァ、ハァ、くらえぇええええ!!」


 俺が隙を見せたと思ったのか迷わず突っ込んでくるハバス。俺はハバスを斬り伏せようとした。しかし、


「我ここに命ずる。森羅万象の怒りをもって示す者に濃霧の迷いを」


 その瞬間、俺の意識は―










誤字脱字のご指摘お待ちしております♪

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