俺、編入する
よろしくお願いいたします^_^
筆記試験と実技試験を終わらせた俺はリオネ先生と校長室に向かっていた。俺は高校が実質最後の学校だったので、クロムフロウの圧倒的学校感にとてもわくわくしていた。
「ディオ。着いたぞ」
校舎内をしばらく歩くとリオネ先生が高級そうな部屋の前で足を止めた。
「この中には校長先生と理事長が待っていらっしゃる。くれぐれも無礼の無いようにな」
「分かりました」
コンコンとリオネ先生が校長室のドアをノックした。
「リオネです。ディオ·カーティルを連れて来ました」
そう言うとリオネ先生はドアを開けて中に入っていった。
「し、失礼します!」
リオネ先生のあとに続き俺も校長室に入る。
「やぁディオ君。思ったより時間がかかったね」
「ロイスさん!?」
校長室の中にはスーツを着た体格の良い男と白髪の若い男の他にロイスさんまで座っていた。
「君がディオ君か」
ロイスさんの登場に驚いていた俺に低い声で声がかけられる。
「はい」
「私はこの学校の校長をしている、ゲルト·クロムフロウ。君の神創魔法はロイス君から聞いている」
ゲルト校長は白髪、というよりは灰色に近い髪の色をしている。黒いスーツを着ているのもあって高貴な雰囲気が滲み出ている。っていうかクロムフロウってゲルト校長がつくったのかよ!!
「ディオ君。立っていないでソファーに座ったらどうだい?」
「あ、はい。ありがとうございます」
体格の良い男性に手招きをされてソファーに腰かける。
「俺はウォル·クロムフロウ。分かると思うが校長の弟だ」
そう言うウォルさんはゲルト校長とは正反対の雰囲気を纏っていた。ビシッとスーツを着ているゲルト校長に対して、ウォルさんはかなり着崩した格好をしている。それにスーツの上からでも分かる隆々とした筋肉と全身にある傷痕から相当な実力を持っているのがわかる。
「その様子だと試験を問題なく合格出来たようだね。リオネ先生、ディオ君はどうでした?」
俺の隣に座っていたロイスさんが口を開いた。ロイスさんはいつもの服ではなく、白いダイヤモンドのような宝石が埋め込んである美しい装飾のブローチが付けられた焦げ茶色のコートを着ていた。
「ロイス先生!ディオはすごいぞ!筆記試験を数分で全問正解したうえに、戦い方は無茶苦茶だったが空気弾で魔導機を破壊したんだ!」
「ほぅ。なかなか面白い戦いかたをするじゃないか」
リオネ先生の全身を使った報告にゲルト校長は称賛の声をあげた。
「ディオ君。君は今日から我が校の生徒だ。学業、社会貢献共に努力してくれたまえ」
ゲルト校長が言った。学業、はそのままの意味だろう。社会貢献はきっと魔物の討伐とかそういった事を言っているんだと思う。
「分かりました」
「ではリオネ先生、ディオ君を教室に連れていって下さい」
ウォルさんがリオネ先生に促す。
「了解です。ほらディオ。行くぞ」
「はいはい」
「「失礼しました」」
俺とリオネ先生は校長室を出ると教室に向けて歩き始めた。
「なぁリオネ先生。俺は普通に教室に行っていいのか?」
「なんでタメ口なんだ!!というか普通に教室に入る以外にどうやってはいるんだ?手品でもするのか?(笑)」
ぷぷぷ、と笑いながらリオネ先生が答えた。ホントいちいちイライラするなこのちびっこ。ホントに先生なのか?
「ほらディオ。着いたぞ」
階段をのぼって四階まで来たところで俺達は足をとめた。そこには俺の世界みたいにたくさん並んでいる教室があった。
「お前が入る教室は3-Aだ。私が担任をしている」
そう言いながらリオネ先生は教室に入っていった。
「私が呼んだら入ってこい」
「了解です」
俺は日本にいたときに転勤族だったからよく転校してたんだ。転校初日って周りのイメージが面白いよな。なんもしてないのに『スポーツできそう!』とか『頭良さそう!』とかな。そんなことを考えていると教室からリオネ先生の声が聞こえた。
「コホン。本日から新しい生徒が3-Aに編入してくる。みんな適度に仲良くしてやってくれな」
リオネ先生の話で教室が騒がしくなる。
「先生!男ですか女ですか!!」
男子生徒の声が聞こえる。
「男だ」
「「「「キャ-!」」」」
「「「「ちっ」」」」
リオネ先生の答えで女子の叫び声と男子の舌打ちまで聞こえてくる。入りずらいわ!!
「それじゃあディオ。入れ」
教室からリオネ先生に入室するように促される。
「はぁ...」
若干の入りずらさはあったが平然を装って教室に入る。
「はじめまして。今日からこのクラスに編入することになったディオ·カーティルです。適度に仲良くしてください」
最初から考えていた挨拶をする。クラスのみんなは何やら小声で話しているけど編入つったらこんなもんか。
「ディオは後ろから2番目の机が空いてるからそこに座ってな」
「はいはい」
リオネ先生の指示に従ってクラスの角、後ろから2列目の席に座る。
「なぁ」
俺が着席すると俺の後ろから声がかけられた。俺が後ろを振り返ると短髪の男子が座っていた。
「お前ディオって言うんだよな」
「あぁそうだけど...」
「俺、カレル。カレル·アークってんだ。よろしくな!」
「お、おう。よろしくな」
カレルと名乗った男子生徒は俺に一枚の紙切れを渡してきた。その紙にはこのクラスの生徒の席順と名前が書いてあった。俺が何となくみんなの名前を見ていると...
「アイナ!?」
教室の入り口のすぐ横にある席には『アイナ·ルフ』の名前があった。アイナといえば馬スに乗っていた時に俺達を魔法で助けてくれた茶髪赤縁メガネのあの子だ。俺は急いでその席に目をやった。するとそこには顔はよく見えないが茶髪の女子生徒が座っていた。
「これでホームルームを終わる。カレル、ディオに科の事説明しといてくれ」
俺が紙切れを見ている間にホームルームが終わったらしい。リオネ先生は書類を纏めると教室から出ていった。俺はすぐにアイナの席に向かおうとした。だが、
「ねぇねぇディオ君」
と隣に座っていた女子生徒によって阻まれてしまった。
「なんだ?」
「アタシ、ケイト·ピューラっていうの。よろしくネ!」
そう言って女子生徒は俺にウインクをした。ケイトは俺より少し身長が低く、藍色の髪をしていた。
「あぁよろしく」
「ふふっディオ君まだ分かんない事多いだろうしアタシが教えてあげようか?」
ニコッと笑いながらケイトが言った。ケイトは顔が割といいみたいだから言動と相まって小悪魔系の雰囲気が出ている。ケイトと仲良さそうに話す俺に周囲の男子から何故か睨まれる。結構人気あるのかもな。
「おい、ケイト!ディオの案内を任されたのは俺だろー!」
俺とケイトのやり取りを見て後ろからカレルが出てくる。カレルは橙色の短髪に青いヘアピンをつけている。制服の袖を捲っているので活発なのがもろに分かる。
「あら~カレル。アンタみたいなヤンチャ坊主に付きまとわれるよりアタシみたいな美少女に付き添ってもらったほうがディオ君も嬉しいでしょ!ね、ディオ君?」
俺の腕に抱きつきながらケイトがカレルをからかった。別にからかうのはどうでもいいけどその体制は止めていただきたい。腕にリアルな感触が伝わってきてつらい。というか周囲の男子の視線と舌打ちのダメージがでかい。こうなったら。
「まぁ確かにケイトみたいな超絶美少女に一日中一緒にいてもらえるなら嬉しいな」
「ちょ、ディオ君。そんな大げさな...」
あれ?ケイト思った以上に照れてないか?まさかケイト、実は純粋な子?
「お、おいディオ!マジで言ってんのかよ!?」
俺の悪ふざけにカレルがあたふたする。
「冗談だって。カレル、お願いするよ」
「おう、任せろ」
ガシッとカレルと握手をする。ケイトはと言うと...
「....ディオ君.....一日一緒だなんて................」
と顔を真っ赤にして体をくねくねさせていた。
「お、おいケイト?大丈夫かー?」
カレルがケイトに声をかける。するとケイトは急に意識を取り戻して、
「はっ....しょ、しょうがないわね。カレルだけじゃ不安だからアタシもディオ君に付き添ってあげる!」
「は、はぁ。ありがとな」
「「「「「「「「チッ!!」」」」」」」
その瞬間クラス中に舌打ちが響いた。怖いわ!!
「お前ら....ディオ。早速だけど科の説明でもするか」
「あ、あぁ。頼む」
張りつめた空気を何とかしようとカレルが話を進める。
「うちの学校には5の科があってな、魔導機を開発する『魔導科』、魔法の研究を主にする『魔法科』、魔法を使わない兵器とかを開発する『兵器科』、主に学校の外に出て魔物の研究をする『生物科』、経済とかを主に学ぶ『経済科』の5つの中からどれか2つ選んで授業を受けるんだ」
「へぇ...」
カレルが書き出してくれた科の一覧を見ながら考える。ノエルはどの科をとったんだろうか。やっぱりせっかく異世界の学校なんだし『経済科』とかは嫌だなぁ。『魔導科』はロマンだし決定、あと1つは...ま、無難に『兵器科』にでもするか。
「お、きまったか?見せてみ」
チェックをつけた紙をカレルとケイトに見せる。
「あ、ディオ君『魔導科』受けるの?アタシもなんだ!」
「そうなのか。それじゃ頼りにしてるぞケイト」
「な、ディオ君、頼りにしてるなんて...」
そう言ってケイトはまたくねくねモードになってしまった。ヤダこの子めんどくさい。
「俺は『兵器科』とってるしその時は一緒にだな」
「良かった。どっちかと一緒か。心強いな」
「だな。ディオこのあとどうする?今日は三学期初日だからもう授業はないぞ?」
あぁそうか。そういえば初日だったな。とりあえずは寮に届けてあるはずの荷物を整理しなくては。
「俺はとりあえず寮に行って荷物の整理でもするわ」
「そうか。なら俺も手伝うわ。俺ら同じ部屋っぽいし」
「マジで!?」
「おう」
相当運がいいな。カレルが同じ部屋ならクラスも科も同じだし便利だろう。
「今から行くか?」
「あぁ」
俺とカレルは教室を後にした。
「なんだこれ....」
教室を出て数分後俺は口をあんぐりと開けて驚いていた。何故かと言うと寮が無駄にハイクオリティーだったからだ。俺は学生寮ってくらいだしこじんまりとした小さな物件を想像していた。しかしカレルに案内されてやって来たのは高級ホテルだと言われても違和感のないほど立派な屋敷だった。
「はは、やっぱ驚くよなこの寮。俺も初めて見たときはかなり驚いたぜ」
「この学校の生徒みんなこのホテ..寮に住んでるのか?」
「ん~、家が近くて家から登校してるヤツもいるから全員ではないけど...まぁほとんどのヤツがここに住んでるな」
マジでか、スゴいなこの学校。
「ほらディオ。行くぞ」
カレルはあたりまえのように寮に入っていく。いやまぁ当たり前と言っちゃ当たり前何だろうけどさ。
「あらカレル君。もしかしてその子がディオ君?」
そう言って俺達を出迎えてくれたのは二十代位の女性だった。
「はい、こいつがディオっす。アイシャさん、俺らの部屋の鍵お願いします」
アイシャさんと呼ばれた女性は後ろにあるたくさんの引き出しの中から304とかかれた鍵を取り出した。
「はい、304号室の鍵ね」
「どうもっす」
アイシャさんに手を振られながら俺とカレルは部屋に向かった。
「なぁカレル。さっきのアイシャさんって誰なんだ?」
「おっなんだディオ、気になるのか?」
「ばっか違ぇよ。なんの仕事してんのか聞いたんだよ」
「アイシャさんはこの寮の寮母さんなんだけど、変な教師が多いこの学校のなかでも校長の次に謎が多い人でな、一見若そうに見えるけど学校の設立当時からここで働いてたとか、色んな噂があるんだよ」
「へぇ....」
「ディオ、着いたぞ。ここが俺達の部屋だ!」
そう言ってカレルが部屋のドアを開けた。部屋は意外と広く男二人が生活するのに十分過ぎるほどの広さだった。
「さ、とっとと荷物の整理終わらせようぜ!」
「おう」
こうして俺の新しい学校生活が始まった。
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