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 俺、入学する ―3

よろしくお願いいたします^_^

あのあと朝食を食べた俺とノエルは都市立クロムフロウ魔法学校に続く大通りを歩いていた。ロイスさんは今日が新学期の開始日ということもあってか、俺達よりも早めに家を出た。学校は街のなかで恐らく一番大きな建物なのでこの街にあまり土地勘のない俺でも簡単に場所が分かる。俺とノエルはまだ制服が支給されていないので私服(といっても割としっかりとしたヤツだけど)を着ていく。


「ねぇねぇディオ。どんな所なのかなぁ?」


目をキラキラと輝かせながらノエルが俺に言ってきた。ノエルは学校に入るのが楽しみなようで昨日からずっとそわそわしている。


「さぁな...俺も街に来たときにチラッと見かけた程度だからなぁ...」


そんな俺も久しぶりに聞く『学校』という響きにわくわくはしていた。俺は前世で小、中、高と進学して大学の試験にも合格していた。その大学は日本でも結構有名なとこだったので入学出来なかったのが少々悔やまれる所ではあるが。ロイスさんに聞いた話だとクロムフロウ魔法学校はこの世界で最も進んだ学習、つまり魔法に関する事を学ぶ事ができるらしい。もちろんクロムフロウ魔法学校は高校の役割もしているので一般学習もしっかりとできる。俺は魔法以外の事は小さい時にほとんど記憶しているので勉強に関しては最強だ。


「そういえばノエルは勉強、大丈夫なのか?」


考えていてふと疑問に思った。ノエルは昔から俺と遊んでいたけど、一緒に勉強をしたりといったことは全くなかった。なんか成り行きでノエルは入学出来たけど入学して勉強について行けなかったら意味がない。


「うん!勉強はディオが休憩してるまにロイスさんに教えてもらってたから。」

「そうなの!?」


ロイスさん。本当にお世話になってるな...


「あ、ディオ!!ほら、クロムフロウの門が見えるよ!」


そう言ってノエルが指差す先には大きな黒い門があった。細かい所まで美しい装飾や細工、彫刻が施されており芸術品と言われても違和感の無いような物だった。


「すげぇな...」


今まで見たことのない迫力に俺もノエルもただただ驚いていた。


「君たち、一体何をしているんだい?」


俺達が門の前で立ち尽くしていると門の横にある小さな小屋、恐らく警備室みたいな所から衛兵の格好をした大柄な男が出てきた。


「す、すいません。俺達今日からここに転入する予定なんですけど...」

「あぁ。それなら聞いているよ。ディオ·カーティル君にノエル·アムレルト君だね。ディオ君はこれから入学テストを受けてもらいます。その辺はロイス先生から聞いてると思うので私は会場の案内だけさせていただきます。ノエル君は一緒に着いてきますか?」

「え?あ、お願いします」


警備員っぽい人は俺達を連れて門の前に立った。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵を持って閉ざされた門を開け」


警備員の人がそう唱えるとガタンッ、ガタガタガタと重々しい音を立てて巨大な門が開いた。詠唱はシンプルだけどもこれだけ巨大な門をたった一人で動かしているのだからこの警備員さんも相当な魔力を持っているのだろうな。


「さぁ、こちらです」


門を開き終えると警備員さんは何事もなかったかのように俺達の方をむいて言った。門をくぐるとさっきまでとはまるで違う景色が広がっていた。


「ここには生徒達の生活に必要な物がほとんど揃っています。娯楽、食品店、運動場などほぼ全ての事がこの学校敷地内ですますことが出来るようになっています」


歩きながら警備員さんが俺達に説明してくれる。話の通り、娯楽施設やショッピングモールの様な物まで建ててある。さすがはこの世界で最も進んだ学校と言ったところか。


「何か良く分からないけど、すごいね」


警備員さんに聞こえないようにノエルが小声で言った。


「あぁ。これから一年間楽しめそうだな」


日本にいた時、つまり十数年前はこんな学校はなかった気がする。中央都市自体かなり進んだ文明を誇っているはずだけど、この学校を見てしまうと、なんかこう...冒険者になりずらそうだな...


「着きました。ノエル君はこの先にある校長室に行って挨拶をしてきてください。ディオ君はここを真っ直ぐ進んだ所に試験会場がありますのでそこで試験を受けるようにしてください」

「分かりました。ありがとうございました」


ここまで案内してくれた警備員さんに軽く挨拶をする。


「それじゃ、ディオ。試験頑張ってね!」


ノエルは俺に手を振ると校長室に行った。


「さてと....俺も行くか」


俺はロイスさんに貰っていた敷地内の地図を見ながら試験会場に向かった。



「はぁ、はぁ。やっと、着いた...」


俺が試験会場に到着したのはノエルと別れてから数時間後だった。


「ひろ...すぎる...」


そう。敷地が思っていた倍以上広かった。真っ直ぐ、と警備員さんが言ってたから走って行ってたんだけどいつまでたっても試験会場らしきものが見えない。商店街みたいな建物とか図書館みたいなのとか色々あった。ひたすら走ってやっとの思いで着いたんだ。完璧に遅刻だろうな。


「はぁ...」


俺はため息をつきながら試験会場と思われる体育館に入っていった。


「すいません!試験を受ける事になっていた―」

「遅い!!!」


俺が謝罪と弁解を述べようとしたら若い女性の声が遮った。


「いや、だからすいま―」

「遅すぎる!!」


まただ。俺は若干イライラしながら声のする方をみた。するとそこには十六歳位のスーツを着た黒髪の小柄な女の子が立っていた。ちょうど良い。まだ試験官の先生は来ていないようだからあの人に呼んで貰おう。


「あの、ディオ·カーティルって言うんですけど、試験官の先生呼んできて貰えるかな?」

「なっ!?」


俺が年下に話すような口調で言うと女性は俺のことを睨んできた。まぁ身長があまり高くないのでそんなに怖くはない。むしろ妹的な可愛さすら感じる。


「だから、試験官の先生を―」

「私がその試験官の先生だ、このばかたれ!!」


....へ?嘘だろ?こんなにちっちゃくてかわいいのが?


「う、嘘っすよね?」

「本当だ、ばかたれ!!私はお前が編入するクラスの担任のリオネ·バルトハイネだ!!」


ドドン!という効果音のつきそうな仁王立ちで俺の前のちびっこが言った。


「はぁ!?」

「はぁ!?とはなんだはぁ!?とは!だいたい何でこんなに遅刻するんだ!すっごくドキドキしたんだぞ!!」


あ、かわいい。


「ほ、本当に先生なんすか...」

「そうだ!お前が遅刻したせいで一人ぼっちで待ってたんだぞ!」

「は、はぁ」

「えぇい!もう良い!試験内容を説明するぞ!試験は筆記試験と実技試験の2つ!まずは筆記試験からだ!今からお前に渡す問題用紙にこの学校の入試問題が書いてある。それで80点以上とれ!質問は!!」

「あの―」

「よろしい!!それでは筆記試験を始める!」


無茶苦茶か!!!とツッコミたい気持ちを押さえて渡された問題を解いていく。うん。やっぱり簡単だな。解答欄も直ぐに全部うめる事が出来た。なんてったって俺のチート記憶力限界突破のお陰でロイスさんに貰った参考書を丸暗記出来ている。


「終わりました」

「んなっ!?」


始まって数分で俺はテスト用紙を攻略した。リオネ先生は油断していたのか突然の俺の申告にかわいい声で驚いてくれた。


「こ、コホン。う、うむ。なかなか早いではないか。でもな早いだけでは意味がない...ぞ...」


問題の丸つけをしていた先生の手が止まる。


「どうかしましたか?」

「なんで....なんで全問正解なんだーーー!!」


わー!とテスト用紙と赤ペンを俺に向かって投げてきた。このちびっこが!


「なんで全問正解なんだ!すっごい難しいんだぞこの問題!!」


あぁ。そういう事か。


「はは、きっと運が良かったんデスヨ」

「そ、そんなもんなのか?」

「そんなもんです」


記憶力限界突破の事を話すわけにはいかないので適当に流しておいた。


「ふぅん...ま、まぁよかろう!次だ!実技試験行くぞ!」

「はいはい」

「今から小型の魔導機を飛ばす。十分以内に魔法を使って破壊することが出来れば合格だ!」

「あの、魔導機って何ですか?」


魔導機?聞いた事ないな。


「なんだ?お前知らないのか?全問正解だったのにぃ?」


この人いちいちイライラするな。


「しょーがないなぁ。このリオネ先生が教えてやろう」


急に機嫌の良くなったリオネ先生は魔導機について教えてくれた。


「人の中には魔力はあっても体が弱かったり近接戦闘が得意じゃなくて戦えない者がいるだろ?そんな人のために開発されたのが魔力で操る機械人形、魔導機だ。魔導機の形は人型から獣型、飛行型など用途によってさまざまな種類がある。この学校には魔導機を開発する魔導科というのもある。今回使うのは訓練用の飛行型の魔導機だ」

「へぇ...」


魔力で操るロボットって事か。かっけぇぇ!!俺は魔法は使えないけど魔力は父さんのお陰で強力だし魔導機と相性良いんじゃないか?やっべぇ!オラわくわくしてきたぞぉ!!


「お、おい。大丈夫か?顔が怖いぞ?」

「あ、すいません。それじゃお願いします!」

「うむ」


そう言うとリオネ先生は木製のアタッシュケースみたいなのの中から機械で出来た鳥を取り出すと手をかざした。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵を持って意思なき錻に力を宿せ」


リオネ先生がそう唱えると鳥型魔導機がパァッと青く光った。そして、


「キャオオオオ!!」


と、甲高い鳴き声をあげると翼を広げて宙に浮いた。


「それではディオ。準備はいいな?」

「うっす!」

「よし....始め!!!」


リオネ先生の合図とほぼ同時に俺は動き出した。


「我ここに命ずる。森羅万象の知恵を持って気の波動を...」


空気弾(エアバレット)の詠唱をしながら魔導機から距離をとる。


「キャオオオオ!!」


魔導機は真っ直ぐに俺に向かって飛んでくる。


「示せ!!」


詠唱を終えた俺は魔導機に向かって空気弾(エアバレット)を放った。先手必勝!バフンッと音をたてて魔導機と空気弾(エアバレット)がぶつかった。


「やったか!?」


あ、フラグだ。しまった。


「キャオオオオ!!」


俺がたててしまったフラグのせいか無傷ではないもののあまりダメージを与える事は出来ていなかった。


「クッソ!!ってあぶねぇ!!」


鳥型の魔導機は俺に向かって魔力で形成された羽根を飛ばしてきやがった!


「我ここに命ずる。森羅万象の..ってうわぁ!!」


魔導機の攻撃は詠唱の間も止むことはなく、どちらもダメージを与えられないまま時間だけが過ぎていった。


「あと一分だぞ!!」


リオネ先生が時間を知らせる。


「一分!?」


まずいぞ!詠唱にかかる時間は約10秒。攻撃の回避も考えるとあと数回しか使う事が出来ない!こうなったら!


「我ここに命ずる!森羅万象の知恵を持って気の波動を示せ!!」


詠唱をしながら俺は魔導機に向かって走り出した。


「な、何をしている!!」


俺の奇行にリオネ先生も驚いている。それもその筈だ。魔導機は羽根を数秒間マシンガンのように発射してくる。それに向かって走っていくなんて自滅にも等しい。だが!俺が所有するもうひとつのチート、全運勢限界突破!!


「うおおおお!!!」


発射された羽根を見ながら最低限の回避だけして真っ直ぐに突っ込む。放たれた羽根の1つが俺の頬を掠める。


「くらえ!!!」


そう叫びながら俺は魔導機にゼロ距離から空気弾(エアバレット)を放った。腕に伝わってくるビリビリとした衝撃波。それにこらえながら俺は鳥型の魔導機を貫いた。


「はぁ、はぁ、はぁ。リオネ先生、どうっすか?」

「ご、合格だ...」


俺の戦闘を見ていたリオネ先生は口をパクパクさせながら驚いていた。


「お、おい、ディオ。お前どうやって攻撃をかわしたんだ?」

「えーと...運が良かったんですよ」


というかそうとしか言いようがない。


「そ、そんなんでいいのか?」

「いいんです」


何このデジャブ感。


「と、とにかく合格だ。少し休憩したら校長室に行くぞ」

「りょ、了解です...」


こうして俺の編入試験が終了した。





誤字脱字のご指摘お待ちしております♪

これから出来るだけ毎日投稿していきます。

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