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彼氏に振られた君に、本当のことは言わなかった

作者: Wataru
掲載日:2026/04/17

 夜の駅前。


 人はまばらで、やけに静かだった。


 街灯の下で、彼女は泣いていた。


「……ごめん、って言われちゃった」


 ぽつりと、こぼす。


 誰に向けた言葉でもない。


「好きな人ができた、って」


 笑おうとして、失敗する。


「私、何がダメだったのかな」


 肩が、小さく震える。


 少し離れた場所から、その様子を見ていた。


 声はかけない。


 ただ、聞いている。


「もっと、可愛ければよかったのかな」


「もっと、ちゃんとしてたら」


「もっと……」


 言葉が続かなくなる。


 彼女はうつむいたまま、拳を握る。


 ――違う。


 頭の中で、すぐに否定する。


 それは全部、違う。


 あいつが選んだだけだ。


 お前のせいじゃない。


 何も足りてなかったわけじゃない。


 むしろ――


 言いかけて、やめる。


 それを言っても、意味がない。


 今の彼女は、それを受け取れない。


 言葉にすれば、軽くなる。


 分かっていないやつの慰めに聞こえる。


 だから、言わない。


 ただ、近づく。


 足音で気づいたのか、彼女が顔を上げた。


「あ……」


 少しだけ、驚いた顔。


 すぐに視線を逸らす。


「……見てた?」


「見てない」


 即答する。


 嘘だ。


 最初から、全部見ていた。


 でも、それも言わない。


「……そっか」


 少しだけ、安心したように笑う。


 泣き顔のまま。


 沈黙が落ちる。


 何か言うべきだろうか、と一瞬だけ考える。


 でも、やめる。


 今は、何もいらない。


 隣に立つ。


 それだけでいい。


 しばらくして、彼女がぽつりと呟いた。


「ねえ」


「私、そんなにダメだったかな」


 同じ質問。


 さっきと同じ言葉。


 でも、少しだけ弱くなっている。


 答えは、決まっている。


 ずっと前から。


 でも――


「……さあな」


 それだけ言う。


 彼女は少しだけ、唇を尖らせた。


「ひどい」


「優しくないね」


「優しくないな」


 肯定する。


 それ以上は、言わない。


 言わないまま、隣にいる。


 しばらくして、彼女の呼吸が落ち着いてくる。


 涙も、止まっていた。


「……ありがと」


 小さな声。


「何もしてない」


「ううん」


 彼女は首を振る。


「いてくれただけで、いい」


 その言葉に、少しだけ視線を向ける。


 何も言わない。


 言わなくても、いいと思った。


 ――君は何も悪くない。


 そう、分かっている。


 でも、それは言わない。


 言わなくても、


 そのうち、自分で気づく。


 その時まで、


 隣にいればいい。

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― 新着の感想 ―
こんばんは! ただ隣にいてくれるだけでいいんですよ。 彼は、ちゃんと分かってます。 二人の関係がどうなっていくのか気になります。 読みやすくて素敵なお話を読ませていただき、誠にありがとうございます。
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