使える!なるほど系怖い話
一人称視点の練習がてら、夏に合う怖い話です!
に、するつもりが最後は感動物っぽくなってしまったかな。
片手間に読める長さなので、暇があったら、ぜひ!
日もすっかり暮れてしまった。娘の6歳の誕生日だと言うのに
上司命令でしかたがなく仕事に出ていた俺は家に向かう歩調を
早めた。本当なら、娘を遊園地に連れていってやる予定だったのに。
俺は肩を落としながら、家に入った。
「ただいま~」
当然、娘もママも出迎えになんかは来ないだろう。予想はしてた。
しかし、娘には出迎えてほしかった。あの笑顔で「お帰り!」を
言われるために帰ってきていると言っても過言ではない。
「はぁ・・・」
俺は溜め息をこぼした。何て言ってリビングに入ろう。リビングからは
19:30から始まる人気アニメの音がしてくる。申し訳ない表情を
作りながら、俺はリビングの扉を押し開けた。
「2人とも、今日はごめん!穴埋めは必ずするからっ!」
顔の前で両手を合わせて、精一杯謝る。娘とママは2人でテーブルにつき
夕食を取っている様だった。当然、返事はない。2人とも、相当な
ご立腹の様子である。
しかたがなく、俺は仕事の疲れを癒すべく、風呂に向かうことにした。
「風呂入ってくる・・・」
大好きな娘には「お帰り」を言ってもらえず、おまけに2人揃って無視
してくるのだ。これは精神にかなり堪える。
その日は風呂を出ると、肉体的にも精神的にも参った俺はすぐ寝ることにした。
翌日は休日だった。朝起きて、食卓に着くと、俺の分が用意されていない。
流石に、むっとした俺は抗議の声を上げることにした。
「なぁ、そろそろ許してくれよ!穴埋めはしっかり・・と?」
ここで、二人がテレビのニュースに釘付けになっていることに気付く。
列車事故が起きたらしく、行方不明者も大量に出て、続々と
死亡者も発見されているというものだった。
これを観て、頭のどこかが痛むが、そんなことは気にしない。
列車事故なんて、今の俺にとってはどうでもいいことだ。俺は再び
ママと娘に向かって、苛立ちを感じ取られないように優しい媚びた
声音で話かける。
「なぁ、本当に悪かった、だから・・・」
言葉の途中で、娘が食事を終えて席を立つ。
「お母さん、ごちそうさまでした!」
「全部食べて偉いね~」
ママが娘の頭を撫でている。この話をきっかけに俺も混ざろうとした。
「お、全部食べて、偉いぞ~!!」
と、娘の頭を撫でてやろうとしたが、その瞬間、娘はお茶碗を片付けるために
台所へと向かって行ってしまった。俺は呆然とした。まさか、ここまでとは
思っていなかったからだ。
その日1日はソファーで何をすることもなく過ごした。ただ空の一点を
見つめていた。その日の夕食にも俺の分はなかった。
耐えがたい苦痛が何日も何日も続いた。果てのない苦役を科せられている
様で、俺は終わりない道を果てしなく歩いている気分だった。
遂に俺は自分を抑えることができなくなった。ある日の夕食の時に
俺の怒りは爆発した。
「いい加減にしろよ!謝ってるし、何日も何日も無視しやがって!
陰湿すぎるんだよ!!!」
娘の視線が俺に向けられてることに気付いた。ママの視線も
俺に向けられている。良かった、ようやく相手にしてくれる。
そう思った時だった。
「パパは、まだこっち来ちゃダメ」
「あなたは、まだ頑張りなさいよ」
と、2人は優しく微笑んでいる。
意味不明だった。何言ってるんだ?突如、2人の姿が光り始め
それに伴って視界がどんどんと明るくなっていくのがわかる。
どこからか女性の声がしてきた。
「~~さん!~~さん!!しっかりしてください!~~さん!」
俺の名を連呼している。この人は誰だ?
しかし、体が思うように動かないし、全身が痛む。頭には・・・
包帯が巻かれている様だった。俺の様子に気付いたのか、目の前の見知らぬ
女性が声を一層と張り上げた。
「先生!患者さんの意識が戻りました!!」
俺はベッドの上で目を覚ました。病院独特の消毒液の臭いがする。
そして思い出した、俺は、誕生日の約束をすっぽかして
次の日に穴埋めとして、家族3人で遊園地へと出かけていたんだった。
その途中で列車が・・・。
そうか、そういうことだったのか・・・
溢れた涙が零れ落ち、頬を伝うのを感じた。
頬にはいくつもの涙の筋が出来ていた。
END
読んでいただき、ありがとうございました!
一人称視点での物語りですが、どうでしたか?
良ければ感想を頂けると嬉しいです!