人間ダンジョン
思いついてしまい思わず書いたけれど、あまりにもキワモノすぎてどの層に需要があるの?
と思った結果、書きたいところだけ書いた代物です。
突如、世界中に現れた大きな門としか言えない得体の知れない物体は、地球の在り方を大きく変えた。
約一年の調査には数多の犠牲を生み出しながら一つの結論を出した。
地球とは異なる異界への通用門――通称『門』。
まるで創作世界で人気を博していたそれに合わせて、ゲートの向こうの世界を『ダンジョン』と呼ぶ事になった。
このダンジョンにはある特徴があった。それは『0/256』と言う数字がゲートに刻まれていた。初めこそその意味を誰も知ることはなかった。
ゲートの大きさは各々で異なり、家の扉の大きさから城の門のような見上げる程の大きさまで多種多様であった。
そのゲートの数字のある方から通り抜けしようとするとふっと姿が消えてしまいダンジョンに飛ばされるが、反対側からは通り抜けが出来る。
法則があるようだが、こんなものがポツンとあり、なんの準備も出来ていないものが間違えて通ってしまえば事故になるとそのゲートを中心に建物が作られた。
ゲート出現から五年。遂に数字の意味が判明した。
256とは恐らく地球上にあるゲートの数で、増える数字は攻略した数であろうと。
更に調査の結果、数字の前にあった模様は七種類存在し、ダンジョンの難易度を示しているのではないかとなった。事実、ダンジョンに調査に向かった者達の中で複数経験した者は「強さが違う」と感じたと言う。
そこで、ゲートを多く抱える国の代表者と研究者は以下のように定義した。
SS級、S級、A級、B級、C級、D級、E級。
まるでゲームや漫画の世界だな、と言ったのは誰かは分からないが、少しずつダンジョンの正体が判明する度に世界は熱を孕み始めた。
そしてE級ダンジョンを攻略した調査隊が持ち帰った取得物『ドロップ品』と呼ばれる物は常識を覆した。
そしてそれだけでなく、ダンジョンから帰還した者たちには特殊な力が生まれていた。創作の世界が現実を侵食した瞬間だった。
ある程度の基準が制定されて後、政府は国民に宣言した。
ダンジョンを一般開放する、と。
命の保証がない代わりにダンジョンの中で得られるドロップ品や素材は自由にしても良い。
ダンジョンに入る者を『探求者』と呼び、『探求者ギルド』を設立する。その際に企業が支援してくれるならば、希望する素材回収の依頼をシーカーに出すことができるなどを表明した。
シーカーは原則として16歳からなることが出来る。
そしてシーカーにはランク付けがなされる。
ゲームのような世界が現実となり、改定を繰り返しながらダンジョンは人の生活に馴染んだ。
そしてゲート出現から十八年。
ゲート数を確認していた調査員は最後の一つを見つけられないでいた。
各国の政府から雇われた調査員がしらみ潰しに探したのだが見つからない。
ゲートから発せられる波長が解明し、それを利用して探査機が作られ、海の中ですら見つけられたのに最後の一つがどうしても見つからないのだ。
正確に言えば波長を一瞬捉えたのに直ぐに消えてしまうのだ。そして位置も安定しない。
日本国内にあるのは分かるのに、何故か移動するゲートに調査員は困惑した。
彼らは知らない。そう簡単に見つかるわけが無いことを。
何故ならその最後の一つは『門』の形をしていなかったのだから。
「りーん!あれ?それ落し物?」
「ぽいね」
立ち止まってガリ、と棒付き飴を噛み砕いた少女の前にはバックパックが落ちていた。
友人から声を掛けられて振り返って話に合わせた少女は友人の「けーさつにもってく?」という言葉に「交番近いし持っていこうか」と返した。
これの持ち主、なーんでこんなおっきいの落としたんだろうねぇ、と緩く笑う友人に少女はさあね、と答える。
卒業もうすぐだし淋しい~と嘆く友人との何気ない会話。女子高生でいられるのは後少し。
交番にバックパックを持って行った二人に警官は規定通りの確認をして終わり。
だから知らない。これの持ち主が現れることはないということを。
「凛、また明日ねぇ」
「うん。また明日、結花。」
友人と別れて歩く凛と呼ばれた少女。
築年数はかなり長い古いアパートの一室。壁は薄く隣の部屋の住人のいびきが聞こえるほど。
「ふぅん。Bランクシーカーだったのか。ガラ悪すぎたから食べちゃったけど、ま、いっか」
彼女には親がいない。赤ん坊の時に施設の前に布で包まれた状態で転がっていたのだと言う。高校に入るまでに少しずつ金を貯め、高校生になって本格的にバイトをして施設を出た彼女の現在の城はこの部屋だったが、高校を卒業したら出ていく予定だ。
バイトをしなくても金は手に入れられるようになった。力が安定してクラスが上がったのだ。
十八歳の彼女はシーカー――ではない。
「ボードオープン」
少女が小さく呟くと、ホログラムが彼女の前にいくつも浮かび上がった。
一番大きな画面にはこう記載されていた。
【EX級 人間ダンジョン 暴食】
ダンジョンマスター 前原 凛
彼女自身がダンジョンであり、触れ合うだけで人を体内のダンジョンに引き込む事が出来る、動くゲートでもあった。
「便利だよね。食べちゃったシーカーの所持金が私のもんになるって。はは、チョロ」
彼女はダンジョンであり、まだ力が発現していなかった頃は良かったが、高校生になり、16歳になってシーカーになった事を喜ぶ同級生を見て「空腹」を感じた。
そこから彼女は定期的にシーカーを「食べた」。
強い力を持つ者は餌になる。力になる。ダンジョンとしての格をあげる。
「早く卒業したいな。ははは。たっくさん食べて強くなって……そして」
ダンジョンは攻略される為に存在しているようなものだ。
例えどんなに難易度が高くても、いつかは攻略される物。
そうあるべきとして産まれた彼女はお腹に手を当ててうっとりと微笑む。
「世界で一番強い人、私を攻略してね」
世界で唯一のEX級ダンジョンの攻略、それは地球にダンジョンをもたらしたものが次の段階に移行する為の大切な儀式。
凛は、人間ダンジョンは、特別な門である。
彼女が攻略された時、地球と異界が一つになる『ゲート』となる運命。
故に彼女は待っている。シーカーが凌ぎを削り、己以外の全てのダンジョンを攻略するのを。世界で一番強いシーカーが決まる事を。
そのシーカーを食べて、攻略してもらい、凛は『ゲート』になることを夢見ている。
いや、ほんと、どの層向けって話ですよね。
『人間ダンジョン』って響きが気に行ったんです。
人間体がダンジョンの入口で正面で意識して接触したら異界に飛ばされちゃいます。
意識しなければ発動しません。
なので探査機にひっかかりません。
主人公は『ダンジョンそのもの』です。
肉体を与えられて人間カテゴリなので人間ダンジョンと付けられてます。




