私よりゴーレムの方が好感度高いのは気のせい?
ある夜会の出来事だった。
「エリカ・フォン・グランディール嬢。君との婚約は破棄させてもらう」
声高らかに告げるリュカの腕には――セレナがいた。
彼女は涼やかな笑みを浮かべ、私を見つめていた。
「理由をお聞きしても?」
「彼女は君より美しく、気品があり、知的だ。僕に相応しいのは彼女だ」
周囲がざわめく。
美貌の姉が婚約者を奪った――それはスキャンダルだが、彼女がゴーレムだとは誰も知らない。
私は表情を崩さず、静かに頷いた。
「承知しました。では、契約破棄の書類にサインを」
さらさらと書き上げ、会場を後にする。
帰宅後、セレナは私の手を包み込むように握った。
「……申し訳ございません、ご主人様。驚かせてしまいました」
「理由を聞くわ」
「ええ。あの方が、ご主人様を心から大事にできる人間か――試したのです」
「試す?」
「はい。婚約者は、ご主人様の未来を共に歩む存在。
その人が他の女性に心を動かされる人物なら、今のうちに手放すべきです」
その声は柔らかく、それでいて揺るぎない。
指先から、私を包み込むぬくもりが伝わってくる。
私の作ったゴーレムは私の瞳をまっすぐに見た。