小さな出会い
「ヘルスポーション素材集めかぁ。楽勝じゃん!すみませーん!この依頼、お願いしますっ!」
「かしこまりました。例の物がそろったらギルドに届けてください。報酬は依頼人と確認した後に支払われます。」
そんなわけで、私が薬草を集めるために古代森へ入った。
珍しい苔を見つけ、種類を確かめたくて魔導書を調べていたそのすきに、目の前にいた苔の玉が消えていた…転がった跡だけを残して。
その跡は森の奥へ向かっていた。
跡を追って地面に広がる大穴へたどり着いた。その中をのぞき込むと、そこは緑にあふれたところだった。そこまで深くはなかった。しかも、昇れる自信もあった。
穴の底にはやわらかい苔が一面に生えていた。キラキラした薬草も群生していた。
「わあ…すごい、魔力にあふれてる…」とおもわずつぶやいた。
日の光がやさしく照らし暖かさに包まれたあの場所はまるで精霊たちの加護を受けているように見えた。
「ころん…」という音がして、ちらっと動きが見えた。
動く苔だった。
「君が私をここに連れてきた苔なのかい?」
できる限り優しい声でしゃべった。それでも苔さんはビクッと驚いた。
「とってもきれいなお家だね!」苔に向かって、にっこり笑いかけた。
「ありがと!みせてくれて!」
苔さんの体が静かに揺れていた。喜んでいる…かな?
「フフ…もう少し見ていい?」
苔は、また、やさしくゆらゆらりとした。
周りの植物をくわしく調べて、その特徴を魔導書に記録した。夢中になりすぎて、壁全体に蔓草がびっしり生えていて…その下に隠れていたものにまったく気づいていなかった。
見つけた瞬間、声も出なかった。
そりゃそうだ!
理由は簡単だよ。
私がのんきに遊んでいた場所は——ダンジョンの入り口だった‼
「嘘…早く町に報告せねば。ここにダンジョンがあるはずがない。でも…」
ダンジョンが発生したと町の長が知ったら必ず中を調べろと命じる。冒険者が来るとここも踏みつぶされる…
足首に何かがサラッと触った。
その瞬間に頭の中にはっきりと子供の声が聞こえた。
「きれいな心を持つ人間の子よ!」
「しゃ、喋った!?あたしに??」
「うむ、君にじゃ!この森の者たちはあのどうくつを恐れている。助けてくれないか?」
「え?!ムリムリ!ダンジョンクリアなんて単独じゃ絶対無理よ!」
苔さんは明らかにしぼんでいた。
「一人ならね!ハー……でもパーティーの仲間も一緒に行ったらクリアできるかもしれない。とりあえず依頼は確かに受け取りました!」
「じゃあ…助けてくれるの?」
苔さんの声はとても小さくて泣きそうだった。
「はい!冒険者ギルドの一員としてそして、個人としても約束します!」
苔さんはうれしすぎて転がり始めた。
「大丈夫。苔さんのおうちは、私が必ずお守りする。」
これは、苔さんと出会った日の話。そして、それがどんな冒険へとつながった—そんな物語。