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第八話「思い出」

加東組は大騒ぎになっていた。若頭の高岡兄貴に若頭補佐の真下兄貴のツートップと連絡が付かねぇ上に、斎藤も姿を消しちまったんだから無理もねぇ。


組の中で事情を知ってるのは俺しかいねぇ。


でも俺ってつくづく間抜けだぜ。急いで出たから携帯持ってなかったんだよ。これじゃあ事務所に連絡できねぇ。


どっかサービスエリアの公衆電話使うしかねぇ。


「あっ!ご苦労さんです!」


事務所にきた加東の親分に、若い衆らが挨拶した。


「どうだお前ら。高岡達とは連絡ついたか?」


親分が言うと若い衆らは首を振った。


「そうか…。仕方ねぇ。ちょっと本部に行ってくるわ。」


親分が上の近藤組に一人で行こうとしたので、若い衆の一人が慌てて言った。


「親分、俺も同行します。一人じゃ危ねぇ。」


すると加東の親分は、静かに財布からカネを出すと、その若い衆に渡した。


「お前ら、徹夜で高岡達を探して腹減ってるだろ?これで何か食ってこい。俺のことなら心配すんな。近藤親分に相談しに行くだけだからよぉ。」


そう言うと、親分は事務所を後にした。


事務所から歩いて15分の所に美味いラーメン屋がある。この店の大将は、加東の親分の中学ん時の後輩で、親分とは元ヤンキー仲間なんだ。


この店は俺達若い衆の溜まり場みてぇな所で、大将が時々、餃子をおごってくれたりした。


俺はパーキングエリアを見つけたので、急いで車を停めると、電話ボックスを見つけて、事務所に電話した。


「ちくしょう!誰も出ねぇじゃねーか!」


そりゃあそうだ。みんな親分から「飯食ってこい。」って言われたから、大将の店に食いに行っちまったしな。


俺は速攻で車に乗り込むと、ぶっ飛ばした。アクセル全開だ。


加東の親分が、三車線の中央を車で走り、赤信号で停車した。右車線に他の車も停車した。


ダダダダダダダダダダダダダダ!!!


街の空気を切り裂く様な銃撃音がビルの谷間にこだました。


右車線に停まった車の中から、加東の親分を目掛けて、銃弾の嵐が襲い掛かった。


親分の車はボディが穴だらけになり、ガラスが砕け散った。親分は、蜂の巣になり、見る見るうちに血塗れになっていく。


それでも銃撃は止まない。


UZIとベレッタM12が容赦なく加東の親分の息の根を止めた。破壊された車の中で、親分は鮮血の海に沈んだ。


やがて信号が青になると、銃撃は止み、その車は、そのまま右折して姿を消した。


それは斎藤の手下達の乗った車だった。


加東組の若い衆らは大将の右で、束の間の休息をとっていた。


若い衆らはどこか不安気な表情だったので、店の大将が、場を和ますために声を掛けた。


「おめぇら、どうした?元気ねぇぞ。親分は元気かい?」


そう言って、店からのおごりで、若い衆に餃子を振る舞った。


「あざーす!!」


若い衆らは大将に礼を言った。


大将はその後、店のレジに戻ると、宅配屋が持ってきた荷物にサインをした。


宅配屋が店から出て、一分したぐらいだった。


凄まじい閃光と轟音、そして爆風が店を襲った。


店の入り口が吹き飛び、窓ガラスが木っ端微塵に吹き飛んだ。


その爆発は凄まじく、店の外の街路樹を薙ぎ倒すほどだった。


荷物の中身はSemtexセムテックスだった。旧チェコスロバキアの高性能プラスチック爆薬だ。


首都高を下りた俺は環状線を走り、その後、九箇所の交差点を通過して、いよいよ事務所に近付いた。


途中、やたらとパトカーや救急車のサイレンが喧しく鳴っていた。


「うるせぇなー!!」


俺は嫌な予感がした。


遂に事務所に着いた。俺は車を降りて急いで事務所に入った。誰もいない。


そこで、いつもの溜まり場のラーメン屋に走った。ところがだ。


非常線が張られ、すげぇ人数の警察や野次馬が集まっていた。パトカーが何十台も停まっている。機動隊までいやがる。


俺は愕然とした。店が跡形もないくらいに吹き飛んでいた。


俺は後退りすると、ぐるりと向きを変えて、再び車に飛び乗った。


「やべぇ、親分を探さねぇと。」


もしかすると、近藤の親っさんの所に行ったかも知れねぇ。


俺は車を走らせた、と、俺は慌てて急ブレーキを踏んだ。


交差点の数メートル手前だった。


道路にも非常線が張られている。ポリ公(警察官)が車に近付いてきたので、俺はカタギのフリをして、窓を開けた。


「すみません。事件が起こりまして、この先は通行禁止です。迂回して下さい。」


ポリ公がそう言ったので俺は引き続き、カタギのフリをして答えた。


「ああ、そうなんすね。分かりました。」


仕方がねぇから、俺は車をUターンさせて迂回しようとした。すると。


俺の目に加東親分の車が見えた。数メートル先だったが、あれは間違いない。親分の車だ。


その車は木っ端微塵だった。


「ちくしょう…。殺られた。」


俺は柄にもなく、ちょっとだけ涙が溢れちまった。


脳裏に思い出が過った。


俺は車を走らせると、上部の近藤組の本部へ向った。

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