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第二話「パーキングエリア」

事務所の駐車場でタバコを吹かしていると、1台の軽自動車が入ってきた。霧島のやつだ。


「おい、何だよ。だっせーなぁ。」


俺が笑って言ってやると霧島も笑いながら答えた。


「馬鹿野郎。俺のじゃねーよ。仕事で使うんだよ。」


霧島とは古い付き合いだ。俺がヤンキー時代からのバイク仲間で、一緒に組に入った。まぁ「同期入社」ってわけだ。


「んで、高岡の兄貴からの命令は?」


俺は霧島に聞いてみた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いいかおい。藍沢は中部の平塚組と兄弟の杯交わしてるからなぁ。今頃は、兄弟分にチクっていやがるはずだ。」


兄貴が霧島に話した。


「マジっすか!んでかしら、どうすりゃいいんすか?」


霧島が高岡兄貴に聞いた。


兄貴の見立てじゃあ、藍沢の野郎は、平塚組に挨拶しに行くはずだってことだ。


電話一本で援軍頼むんじゃ誠意がねーから、必ず直に会いに行くはず。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「だからな。常に藍沢組の事務所を見張って、いつでもたま取れる様にしとけって訳よ。」


と霧島は軽く答えた。


俺はタバコを吹かし、上を向いて煙を吐いた。


空は雲一つない青空だった。


「成る程な。黒塗りの車じゃバレちまうしな。」


よく勘違いされるんだが、俺達は毎日スーツ着て、黒塗りの高級車に乗ってるわけじゃねー。


普段は何処にでもいる普通の格好で、普通の車に乗ってる。


スーツと高級車でバシッとキメるのは、幹部会とかで、親分や兄貴に同行する時だけだ。


「道具(凶器)は?」


霧島に聞くと奴は静かに軽自動車の後に回りトランクを開けた。


「これ使う。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いいか霧島、藍沢の野郎を確実に仕留めてーからな。」


高岡の兄貴はそう言うと、霧島に貸し倉庫の鍵を渡した。


「開けちゃっていいんすか?」


と、霧島。


「あぁ、いいぜ。好きな道具もってけよ。」


兄貴は俺達に仕事を任せた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


霧島はトランクに入っている道具を見せてくれた。


カラシニコフだ。銃床が折りたたみ式のヤツ。弾倉は一つで、弾は満タン。計30発ってわけだ。


「どっちが使う?俺?お前?」


俺か聞くと、霧島は返した。


「どっちでもいいぜ。」


俺もどっちでも良かった。この世界にいりゃあ、どのみちいつかは、死ぬか豚箱に行くだろうしな。まぁ、覚悟は出来てる。


「じゃあ、いくぜ!最初はグー!」


で俺は勝っちまった。俺が藍沢の魂を取る方を選んだ。


「務所に面会に来るときゃ、何か差し入れ持って来いよ。」


俺がそう言うと、霧島は、笑って言ったんだ。


「面会じゃなくて香典の準備しとくよ。」


俺達は軽自動車に乗って、早速仕事に掛かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


何日か藍沢組の事務所を見張ったが、なかなか動きがない。


時々、車が出入りするが、藍沢じゃない。


「どうなっちまった?」


と、霧島。半袖のTシャツの袖口から、墨が少し見えた。


そいやぁ、面白い話がある。霧島のヤツ、初めて背中に墨を彫ってもらった時、本当は「たつ」を入れて欲しかったんだが、彫り師のおっさんが、勝手に「女の生首」にしちまって、マジギレしたって話がある。


結局、彫り師が半値にして丸く収まった訳だがな。


「ったく。今日も動き無しかよ。」


霧島が毒付いた。


すると、事務所のシャッターが開き、車が出てきた。黒塗りの高級車。間違いない藍沢だ。


「兄弟に会うのは久しぶりだなぁ。」


藍沢が車の中で呟いた。


そんなことを知る訳がねー俺達は軽自動車を走らせて、その車を追った。


暫く走ると、黒塗りの車は高速に入って行った。


「なぁ、おい。ガソリン入れてあるよな?長距離戦みてぇだぜ。」


俺が聞くと、霧島は頷く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


45分くらい走ると、黒塗りの車は、パーキングエリアに入った。便所か?


俺達も後を追った。


駐車スペースに軽自動車を停めて、直ぐ側の黒塗りの車を見張る。軽自動車のエンジンはかけたままで。


藍沢だ。藍沢がトイレから戻って来た。


「よっしゃあ!いっちょ、かまして来るわ!」


俺は軽自動車を降りて、トランクから、カラシニコフを取り出すと、ゆっくりと黒塗りの車に近付いた。


藍沢が後部座席に乗り込んだ次の瞬間、俺は運転手に向かってフロントガラス越しに銃弾を撃ち込んだ。


ガラスが大きくひび割れて、運転手の血が飛び散り、その破片が赤くなった。


俺は後ろの座席側に移動すると、ガラス越しに藍沢を撃った。


大体の数しか分からないが、運転手に10発ぐらい食らわせたから、多分、残りは20発だろう。


俺は全弾撃ち尽くすまで、ガラス越しに藍沢にカラシニコフの銃口を向けて、フルオートで撃ち続けた。


車内が鮮血で赤くなるのが分かった。


やがて弾が尽きた。俺は急いで軽自動車に戻り、助手席に乗り込むと、霧島は、思い切りアクセルを踏んで、パーキングエリアを後にした。


「おい!やったぞ!やってやった!」


俺は興奮が止まらなかった。霧島は、後で一杯おごってくれるそうだ。


「大浜、おめぇは最高のダチだぜ!」


霧島も興奮していた。


空は雲一つない青空だった。

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