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第十話「バーディーショット」

それから俺は血眼になって永田達を探した。だが、一向に見つからない。


どれくらい経ったろう?多分、半年だ。


ちょっとずつ貯めてたカネが、底を突き始めた。


俺は借りてるアパートの部屋の畳の上に大の字になって、仰向けになって目を閉じた。


ふと、近藤の親っさんから貰ったゴルフバッグのことを思い出した。


バッグは押入れにしまってある。


「バイトでもしねぇとカネが無くなっちまうなぁ。」


そこで俺は、近くのコンビニでバイトの求人誌を立ち読みした。で、ゴルフバッグのことを思い出したんで、求人誌にあった、ゴルフ場のバイトに応募した。


簡単な面接を受けた。以前は工場勤務で、機械に手を挟まれて、怪我して辞めたって言ってやった。


小指のことは、上手く誤魔化せた。


仕事は、ゴルフ場の芝の整備だった。


一ヶ月ぐらい経ったある日のこと。二人の客がプレーしに来た。


でもな。どっかで見た顔だ。


次の瞬間、俺は雷に打たれた様な感覚に襲われた。その客の一人、あぁ、間違いない。斎藤だ。


俺は仕事してるフリして、そっと斎藤に近付いた。


「伊藤さん。最高で何ヤード?スコアは?」


斎藤がもう一人に話し掛けている。


伊藤だと?伊藤って確か永田の。


俺はゴルフ場のペントハウスに戻り、上司がいないことを確認すると、パソコンの中にある、客のデータを覗いてやった。


「伊藤と斎藤…。あった。これだ。」


データによると、野郎どもは、毎月一回はプレーしに来てる。第二日曜か、或いは、第三日曜。


「決まった。後は殺るだけだ。」


ただ一つ気掛かりだったのは、永田がいねぇってことだ。


それもそのはず。永田はもう外国に住んでて、この国にはいねぇ。


その時の俺は気付いていなかった。仕方ねぇ。まぁ、取り敢えず、あの二人を殺ろう。


翌月、第二日曜。俺は準備して、ゴルフ場に向った。だが、この日は奴らは現れなかった。


次の週、第三日曜。俺はいつもの様に、芝を手入れしていた。キャディーでも無いのにゴルフバッグを担いで。


「来た!伊藤と斎藤だ!!」


カートに乗って、5番ホールに移動した。


俺は先回りして、7番ホールのグリーンの背後にある茂みに隠れると、担いでいた、近藤親分から貰ったゴルフバッグから、俺にとっての「ドライバー」を取り出した。


「ナイスショット!」


伊藤のボールが7番ホールのグリーンに載った。次は斎藤か。


シュッ!!


アイアンが芝を切ると、ボールはグリーンの手前のバンカーに落ちた。


「んだよ、アイツ下手じゃん。」


俺は茂みから、その様子をじっと見ていた。


バンッ!!


砂埃が舞って、ようやく斎藤のボールがグリーンに載った。


伊藤がパットを決めた。


コロォン…。


バーディーらしい。上手いじゃねーか。知らんけど。


俺はじっと待った。斎藤がキメたら、俺もキメる。


コンッ!


「馬鹿野郎、外しやがった!」


正直、斎藤は下手みてぇだ。


気を取り直して、もういっちょ。


コロォン…。決まった…。


俺は茂みから飛び出すと、伊藤の頭から足の先まで、フルオートで撃ちまくった。


ダダダダダダダダダダダ!!!!!


俺のドライバー、M4カービンが火を吹いた。


5.56✕45mmのNATO弾が、伊藤の身体を貫いて穴だらけにした。


血塗れの伊藤がグリーンにぶっ倒れた。青い芝が見る見るうちに鮮血で赤く染まる。


全弾ぶち込んでやったので、すかさず俺は予備の弾倉を装填した。


斎藤が全力疾走で逃げて行く。


俺は奴を追いかけると、セミオートに切り替えて、5発発砲した。斎藤の脚に命中した。


ラフに倒れ込む斎藤。


俺はM4を構えて、近付くと、セレクターをフルオートに切り替えた。それから、倒れた斎藤に銃口を向けた。


「斎藤!てめぇ、よくも高岡兄貴を殺ってくれたなぁ!!!」


俺が言うと、斎藤は命乞いした。


「た、た、た、頼む、殺さないでくれ、カネでも株でも何でもくれてやるから…。」 


そこで俺は尋問した。


「いらねぇよ、そんなもん!情報をよこせ!永田は何処だ!!」


すると斎藤は答えた。


「マ、マ、マ、マニラ…。」


俺はM4の銃口を斎藤の頭に押し付けた。


「マニラの何処だ!言え!!」


斎藤が答えた。


「パッ、パシック河南岸、イントラムロスのホテルマニラ…。」


俺が怒鳴る。


「ホテルだと?ホテルの何階だ!何号室だ!言わねぇか!!!」


すると斎藤は全部ゲロした。


「7階、7階の710号室…。」


それを聞いた俺は引き金を引いた。


ダダダダダダダダダダダ!!!!!


全弾撃ち込んで殺った。


芝が真っ赤に染まる。所々に斎藤の頭から吹っ飛んだ肉片が飛び散った。


俺は銃をその場に捨てて、ゴルフ場を後にした。


自分で言うのも何だけど、見事なバーディーショットだった。


雲一つない青空だった。俺の行方は、太陽だけが知っていた。

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