1/現状把握
まだゲームに入りません。前座です。
こんな日常回がこれからちょくちょくあります。
あと更新遅くてすいません。
「えっと……」
俺、海月悠哉は先ほど異世界から転移させられたわけなんだが…
「ここ、俺の家だよな?」
おそらく自分の家の前に転移したっぽい。というか表札に海月って書いてあるからほぼ確定なんだが。
そしてさっきまで着ていたファンタジー感満載の服はいつの間にかフード付きパーカーとズボンに変わっている。
「良かった……」
流石にあの格好で歩道とかにでたら最悪逮捕とかなるか。危なかった……。
そんなことを考えながら家のドアを開ける。鍵かかってねぇ。不用心すぎだろ過去の俺。
「ただいま……」
その声に返事は返ってこない。トテトテ…と猫はすり寄ってきたが。
「しぶさん久しぶり……」
「ニャー」
すり寄って来た猫をなでていた瞬間、不意にスマホが鳴る。電源をつけてメッセージを見れば、
『2年になってから初日で遅刻……』
そこまで目を通した瞬間部屋にダッシュして鞄をつかみ取り、家を出る。……鞄に猫入った気がするけどいいや。気にせんとこ。
幸い家から学校までは公共交通機関を使わず自分の足だけで行けるので、あんまりない体力をフル活用して向かう。死にそう……。
「悠哉待ってえぇ〜」
そう俺と同じような死にそうな声で追ってくるのはおそらく同級生の神楽由芽。女みたいな名前だが男。女性のような見た目をした中性的な男。
中学から一緒であり、ネトゲ仲間でもある。ちなみに遅刻・赤点常習犯。
「悠哉が遅刻なんて珍しいね」
「ちょっと色々あって…」
遅刻が確定したからか走るのをやめて歩き出す。のどかだなぁ……。
「というか何でお前遅刻したの?改善してきてたじゃん」
こいつは遅刻常習犯ではあるがニ年の最後の方では遅刻しなくなってきていた。何があったんだ……?
「ちょっと異世界に行ってて」
「ほぉ……」
成る程異世界か〜……、待て異世界だと?まさかの身近に異世界に飛ばされた仲間が……!?
「……後で詳しく聞かせてよ?」
「後でね〜」
まるで何でもないことのように言うが、実際由芽が言っているのは普通だったら頭おかしいかラノベの読み過ぎかと言われるようなことだ。
……まぁその純真さが由芽の良いところなんだろうけど。
そのまま自然に学校の閉まっている校門を乗り越え、校舎に入り教室へ向かう。
「またお前と同じクラスかぁ……」
「今年もよろしく〜」
「今年度もよろしくでは……?」
「何が違うの?」
そういやこいつ馬鹿だった。その会話をなかったことにして教室に入る。
空いてるのは……窓際の一番前と前から三番目か……よし、一番前は嫌。
何食わぬ顔で席に座り教科書やらを取り出していく。しぶさんは出てこようとするんじゃない。
「おい、なんか言うことあるんじゃないのか……?」
前から多分担任の怒気のこもった声が聞こえてくる。言う事…?隣の席を見ると目をそらされた。
「あ、今年度もよろしくお願いします?」
「お願いしまーす!」
「「違う!!」」
担任と生徒、教室のみんなから総ツッコミをくらった。息ぴったりだなー…
「遅刻の謝罪じゃないのかぁ……?」
「遅刻なんてしたっけ……?」
「おい」
「ゴフッ」
先生の追求から逃れようとしたら脇腹に手刀が入った。割と痛いんですが。
少し怒りをこめて…やめた。なぜなら手刀を入れてきたのは俺が中学から約4年間迷惑をかけ続けてきたやつだったからだ。
「何?」
「何でもないです」
この人俺以外には優しいんだよな…とか考えていると射殺さんばかりにはよ謝れという思いが伝わってくる。
「遅刻してすいませんでした……」
「よし」
「さ、授業を始めるぞ〜。自己紹介中だったからな、海月やりなさい」
そう言って先生は切り替えたようで授業もといガイダンスに戻っていく。自己紹介か。
「あー、海月悠哉です。よくサボりでいなくなるので気にしないで下さい」
「教師の前で堂々とサボり発言をするとはいい度胸だな?」
「あ、やべー」
その瞬間クラスから笑いがあふれる。良かった、一応ウケたみたいだ。なんか一人ため息と苦笑いのやついるけど。
「神楽、お前もだ」
「は〜い!皆はじめまして〜!神楽由芽でゲッホゲホ…」
そこでむせるなよ。再び教室が笑いで包まれ由芽もあははと笑う。
「よろしくお願いしま〜す!」
そう無理矢理由芽が締めて自己紹介は終わった。
「次は学年集会だからな〜」
休み時間に先生が言った瞬間、俺の体は自然と屋上はと向かっていた。
「待て」
「ぐえっ」
後ろからフードを掴まれ首が締まる。後ろを向くとやはり約4年間迷惑をかけ続けてきたやつ…長谷瑞樹がいた。
「なんで止めるんですかね」
「遅刻からのサボりは流石に見逃せない」
そしてそのまま強制連行。案の定学年集会はぐっすり寝ました。隣の瑞樹がため息をついたのは見ないふり。
「ただいま〜」
「みゃー」
ちゃんとバッグから出なかったしぶさんも俺に同調するように鳴く。しぶさんは元気だけど俺はもう死にそう…学校辛い…。
その疲れた体に鞭打って夕ご飯を作ろうとするとピンポーンとインターホンが鳴る。俺何か頼んでたっけ?
「は〜い」
「あ、お届け物です。ここにハンコかサインお願いします」
そう言って荷物を渡してくる赤っぽい茶髪の配達員。なんか見覚えあるな…。
「怜さんも大変だね。はい、ハンコ」
「バレたか。ありがとうございます…」
「でも何かあったの?配達員は最後の手段とか言ってなかった?」
この人赤間怜は、有能なフリーター、アルバイターだが運転と肉体労働が嫌いなので稼げるけど配達員の仕事は最後の手段って言っていた。
「いやぁ、色々あってさ」
「異世界にでも行ってたの?」
「うん、大変だった……って……」
「大丈夫、俺も行ってたし由芽も行ったらしいから」
それを聞いた瞬間俺に荷物を渡してその場にしゃがみ込む怜さん。
「マジかよ」
「どうすする?今から話す?」
「いや、この中で話そう。まだ何件か残ってるんだよ、配達」
そう言ってまるで中身を知っているかのように俺に渡した荷物を指差す。
「中身見たの?」
「いや流石にやらないけど。これと同じものが俺を含めた5人にも送られてるんだよね」
成る程。それをすでに開けていたから怜さんは中身を知っていたと。
「じゃあまた後で〜。頑張ってね」
「もうひと頑張りしてくる…」
「ふぅ…」
怜さんの後ろ姿を見届けてから家に入る。そしてすぐさま箱を開ける。中に入っていたのは1本のゲームだった。
『FreeArtFantasia』、聞いたことあるな。
確か2年くらい前に出たVRMMOで、国内外からの評価も高いとプレイヤーであるらしい瑞樹が言っていた。あの人ゲームとかやるんだなぁ。
「まさかそんなゲームをやる機会が来るとはね」
春休みの間使わなかったため薄く埃を被りかけているVRギアに息を吹きかけ、『Free Art Fantasia』略してFAFのカセットをセットする。
「さて、行きますか」
ベッドに寝っ転がってゲームを起動すると浮遊感が俺を襲う。あ、夕ご飯食べてない……と思ったがすでに遅く、俺は意識を飛ばした……。
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ではお疲れ様でした〜