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デイズ -名も無き魂の復讐者-  作者: 竜
Season2
31/37

如月紫苑 -復讐を終える男の物語- 9話

『はい、皆さーん、元気にしてますか?』

日常として流れていたテレビは突如、謎の仮面をつけた人物によって乗っ取られた。ボイスは何かしらの音声機能で変えられ、素顔を辿るための手がかりは見つかりそうにない。そして不気味な仮面。その顔を近づけられるたびに、不快な気分にしかならない。そして目の前の男が距離を置いたことで映ったのは、椅子にくくりつけられた人質。相手は少女・・・

『皆さん、約3ヶ月前まではどんなことが起きていたか覚えてますか?そう。影の怪物・・・』

何かを合図に、語り始めた内容に(テレビの)画面前の僕たちは困惑していた。チャンネルを変えようとリボコンで番組を切り替えてもそのまま、仮面の男が話を続ける。

『なあ!!瑛太!!何でチャンネル変えても変わらんねん!!!もう、コンセント抜いて』

僕は母のいわれるがままに、コンセントを切った。しかし、画面の映像は消えないし、再生され続けている。もちろんリボコンでテレビの電源は消してるはずだし、コンセントだって抜いてる。それなのに、、、その不気味さに母はリビングからあっという間に離れていってしまった。


『皆さん、きっと思っていたでしょう?なぜ怪物狩りの組織は狩るだけで、その根本である治療に専念しないのか? というかは、以前は、被害者のメンタルケアはあったようですね。なのに、3ヶ月前までは被害者まで狩られた。全部それらが、怪物狩りの組織の思惑だとしたら?』


この画面から離れ、指を突き出す先には少女の人質。


『はあ・・・三浦香穂ちゃん・・・』


一度面識のあるあの少女。一体、何が起きてる!?紫苑が一緒だったんじゃないのか?僕は、ポケットに仕舞い込んでいた携帯電話でいつもの如月紫苑につながる着信を入れる。しばらく鳴り響く着信音。しかし、なかなか反応を見せない。クソ!!なぜだ!!!僕にはできることがないのか・・・と思いきや、仮面をつけたもう一人の全体像が映った時、僕は開いた口が塞がらなかった。



*  *  *


三浦大和自宅の2階にて。

『うううん!!!!ううううんんん!!!!』

口に強く縛り付けられているテープで、必死に声を上げてもかき消される。何かうめき声をあげているだけ。

『オラ!!静かにしろや!!!』

そう仮面を付けた見張りの男から、強烈な蹴りを喰らう。その足蹴りが腹部に入り込む力で、車椅子から地面へとうつ伏せに放られる。

『お前、車椅子の茅だったっけ?』

私の名を名指しで呼ばれ、迫り来るその恐ろしい仮面。

『何かあれば、お前が真っ先に死ぬ。だから、じっとしている以外方法はねえんだよ』

心もないその一言に、私はこれ以上にない涙粒が湧き上がってくる。頬へと描かれる熱い線を引きながら。だが、心もない情もない拳を不条理にひたすらぶつけられるだけ。痛い、痛い!!!誰か!!助けて!!!そう心で祈るばかり。次の瞬間、頬に打ち付けられた拳は、窓の外から感じた何かで静止した。

『ああ・・・』

急いで、外へと目を向けた相手に焦ったのか、彼は急いで無線で繋いでいた耳に手を当てる。

『おい、もう怪物狩りの奴が来たみたいだ・・・』

『俺と1階で見張りをしているBで仕留める。お前はそのまま生配信を続けろ』

そんな会話が聞こえてきた。三浦ちゃんの父さんの自宅に侵入したのは3人。今生配信をしているメインと1階の玄関で見張りをする人物を含めて、2人。そして2階の1人部屋で私を見張っている目の前の男を入れて3人。この家の状況を把握した最中で、その男はベット上に置いていた袋から仕舞い込んでいた何かに手を入れる。一体何を!?そう袋の中から、取り出したのは軍用チョッキのあらゆるポッケに仕込まれていた火薬とタイマー。それを見た瞬間、私は"やめて・・・"と伝えた。だけど、足は動かないし、このざま。ただ涙を流すことしかできない。必死の命乞いなんか届かず、そのまま私の胴体に火薬とタイマーが括り付けられたチョッキ。

『お前はここでじっとしてろ!!じゃないと、爆弾が作動しちゃうぜ』

そのまま、その男は高さなんて気にもしない様で2階の窓ガラスを引く。私は最後に足掻いた。"外して!!!"と懇願するように。目から溢れていく涙を見せるように。だが、そのまま逃げるように窓の外へと姿を消した。もう泣くことしかできない。誰か・・・助けて・・・もう一度、香穂ちゃんに・・・会いたい・・・


*  *  *


2階と1階で見張っていた仮面の集団たちは自宅の外へと現れる。仮面の彼らは、目の前にいる男の様子を見ている。右手に握られた刀からは赤く染まった血液が滴る。

『お前・・・』

さすがに、仮面の男も声を出してしまうほど。しかし屍のように佇む相手にこれ以上近づけないオーラが放たれていた。

『お前ら・・・三浦香穂を今すぐ引き渡せ』

やっと発した屍の男の真意が理解できた。だが、易々と渡す相手じゃない。

『断る・・・お前らの不正を暴くために・・・』

『早く引き渡せ!!!!!!!』

仮面集団の言葉なんか聞きもしない遮りと振り下ろす刀に、仮面の二人は思わず一手の攻撃が遅れる。


*  *  *


ドオオオオン!!!!!!


激しく鳴り響いた衝撃音に、自宅も左右へと揺られる。地震に近い感覚に、私は何が起きているのかわからない恐怖に陥っていた。しかし、目の前の(仮面の)男は、淡々と私・三浦香穂を証拠に、怪物狩りの組織に隠された真実を突きつける。その真実は世間に向けて突きつけられた。

『そう。この香穂ちゃんは、一度奪われた心を自分で再生する力を持っているのです!!!では、早速、私の得た怪物の力で彼女の心を奪って見せましょう』

そう向けられた私への視線。表情ひとつ見えないその男に思わず身震いする。だけど、これでいいと思った。これで私の家族を破滅させた怪物狩りの組織に復讐できると、思ってしまった・・・なら協力すると。

そう思った途端に、宙を真っ直ぐに吹き飛んでくる人影が、裏庭につながるガラス窓を突き抜けていく。

『え!!何!?』

投げ飛ばしてきた方向から忍び寄ってくる足跡。でも、それだけじゃない。重い何かを引きずっているような・・・

『え・・・紫苑兄さん・・・』

気絶しているのか・・・そこには頭から血を流した男を引きずりながら、動画を撮っている仮面の男に迫り来る紫苑兄さんが!!!

『何してるの・・・ハッ!!』

兄さんの瞳は黄色く濁った色を見せ、屍のように表情を失っていた。それで私はすぐ感づいた。彼は・・・

『お前を殺す・・・この世界の奴ら全員殺す。俺の家族を殺そうとする奴は全員殲滅する!!!』

右手に握った刀、今までの怒りや憎しみを込める力で撮影をしている男へと振り下ろす。仮面の男は迫り来る刀を躱すこともなく、あっさり肩に深く斬り込まれる。

『うっあ・・・・』

全方位に舞っていく血飛沫の数滴は私の頬へと伝わっていく。さらに深くめり込む刀は、男の肩を断絶するつもりにしか見えない。

『兄さん、やめて』

私のお願いなんか、眼中にもない。洗脳されたように・・・感情なんか消え去ったように仮面の男へ刀を食い込ませていく。これ以上、見ていられない!!!

『もうやめて!!!』

二度目の声も声が届かず。

『お願いだから!!!!やめて!!!!!』

前後に揺らした重心で、椅子は前のめりへと傾く。そのまま勢いに乗っかり、紫苑兄さんの額へと激突。微かな雷の線が額のぶつかり合う箇所から放たれた一瞬。私はそのまま、椅子の下敷きとなるように、地面へと身を打ち付ける。

『うっく・・・』

しばらく静止した現場、兄さんの攻撃はしばらく見受けられない。何が・・・深く目を瞑った先に視線を向けると、地面から頭を離そうと四つん這いになった紫苑兄さんが・・・

『兄さん・・・』

やっと私の言葉で反応を示した彼。

『香穂・・・俺は・・・何があった?』

『やっぱり、心を奪われてたんだね・・・』

『俺が・・・マジか』


『どうでした!?見ましたか?お望みの過程ではありませんが、彼女の再生能力が他の人の心にも効いたみたいですよ!!!』

そうカメラの先にいる視聴者に淡々と語りかける仮面の男。肩の深い傷なんかお構いなしに。

『でも、これじゃ納得できない?なら、今度こそ私の怪物の力で・・・この子の心を!!』

仮面の男の狂気に従うように迫り来るのは、2、3メートルを優に超えている筋肉質な影の怪物。白い口元を見せてひたすら笑っている。獲物を見つけた喜びを全面に突きつけるように。

『よせ!!!』

娘を守るために、ソファで身柄を拘束されていた三浦大和が、仮面の男に声を掛ける。そこに新たなアクションが予期せぬ展開を生んだ。


『怪物狩りの組織が、治療法を隠してたのは事実。つまり心を奪われた被害者なんか殺す必要なんてなかったし、加害者も心の治療さえすれば治せる』

あっさり言葉として世間に突きつけた真実。

『怪物狩りの組織に所属していたこの如月紫苑!!俺が言っているんだ!!そこにいるお前らはこの言葉を信じて、これからどうするか決めろ!!!』

そう言った先に、カメラ機器を真っ二つに斬り込んだ。もちろん、破壊されたことで、これ以上再生されることはない。次に紫苑兄さんが面と向き合うのは、例の仮面の男。彼の真意を確認するように、彼と話したいように、ビデオの件を早く終わらせたみたい。

『お前は、怪物狩りの組織に復讐したかったんだな』

真っ直ぐに向かっていく紫苑兄さんの瞳に応えるように、仮面の男も・・・本音を漏らした。

『お前らに大事な人を失う悲しみをもっと共感してほしいんだ。それがやがて怪物狩りの組織に対する憎しみとなる』

そう手の内を見せると、そこには起爆装置らしきボタンが握られていた。

『今、2階にいる香穂ちゃんの大事な友達に起爆装置のタイマーをスタートさせた。もっと苦しめ、お前ら。もっと憎しみで心を埋め尽くせ』

『もしかして・・・』

リビングで放心状態になっていた三浦大和は、仮面の男の意図に気づいた眼差しを突きつける。

『私たちが研究をやめたことに関しての復讐でもあるのか・・・』

『そうだ。お前らは研究をやめても、怪物狩りの組織に憎しみなんか持たずに日常の生活を送っていた。俺はそれが許せなかった。なんで・・・研究をやめようと思えた?今でも人の心が奪われているのに・・・』

仮面の男の目的。それは、私たちの復讐でもあり、組織に対する復讐でもある。その気持ちははっきりと理解できていた兄さんは、仮面の男となんとか交渉を試みる。


『組織は何とかする・・・だから、お前はこれ以上苦しむな』

『はあ?組織は何とかする?信用ならないな・・・』

ピッ!!

何かが反応するような起動音に私は、感情をコントロールできそうにない。

『今、お前が余計なこと言ったから、爆弾のタイマーが10分から5分になった。今すぐでも起爆できる。』

紫苑兄さんの横顔は言うまでもなく、焦りと怒りが混ざり合う表情が濃く刻まれる。

『これ以上、何もされたくなければ大和の車を用意して、私の仲間を車に乗せろ。逃げた後も、追いかけてくることはないように』

紫苑兄さんは言われるがまま、気絶させた二人の仲間を車に乗せた。言う通りに早く動いたものも、時間はもう3分を切っている。そう感覚がうったえていた。

『じゃあな、紫苑』

リーダーでもあるように見えた仮面の男は仲間の二人を乗せ、車で逃走していった。


*  *  *


『誰か!!!早く鎖を解いて!!!』

香穂の焦る口調と声量ある声に俺・如月紫苑の心はかき混ぜられた。もちろん、その間に親父の大和が香穂に括り付けられた鎖を解いていく。

『親父!!香穂をここから逃したら、近隣住民の人に避難を促してくれ。どのくらいの規模か分からない!!』

『え・・・』

俺の一言で、真っ青に染まった香穂の表情。

『茅を見捨てるの?』

『違う!!!彼女を助けても、爆弾を解除する時間はない!!!いいから俺を信じろ!!!』

もうこの一言一言で、一刻と迫っていく時間。香穂は俺を信じることしかできないのか、親父に引っ張られていく先へと素直に応じた。


*  *  *

三浦大和の自宅、2階にて。


『茅!!!!助けに来た!!!』

勢いよく吹き飛ばした扉の先には、死を覚悟したように茅が地面に横たわっていた。爆弾のタイマーは2分。俺は急いで、爆弾の種類とどう繋がれているか確認した。コードは複雑だ。爆弾とタイマー付きの軍用チョッキは後から着させたようだが、コードが見事に車椅子と彼女を取り囲むように絡み合っている。あと、火薬がそれぞれのポケットに収納されてるから、1個の爆弾を解除すればいいわけではない。全部だ!!クソが!!!これを単に切ればいいというわけでもない。

どれかミスれば、彼女は死ぬ。落ち着け・・・どのコードを切ればいいか、冷静な判断と共に線を辿っていく。

『茅・・・大丈夫。俺が助けるから・・・』

香穂の友人を必死に落ち着かせるも、途端に蘇ってくるあの言葉。"まだ、あなたの力を必要としてくれる人はいる”

本当にそうなのか?そう入り乱れる感情と共に切るべきコードを見つける。これか。日本刀の先端で、一つの線を断ち切った。これで1個か。え・・・もう20秒。考えろ!!!俺!!!!

どうしたら、この軍用チョッキを切ってしまえばというのは単純だが、同時にまとわり付いているコードも一緒に切ることになる。その時に指していた残り時間3、2、1、・・・・ごめん、香穂、茅。俺は深く目を瞑った。0。

ついにセカンドシーズンはクライマックスへと動き出します!!来週は少しスケジュールが変わります。

5月17日(水)10・11話

5月20日(土)12・最終話

勢いに乗ってデイズの物語を楽しんでいただけると嬉しいです!!よろしくお願いします!

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