2話 一人の青年
1話を読んで下さりありがとうございます!!この作品のジャンルはヒューマンドラマが絡んだファンタジーという形で投稿していくつもりです。ジャンルで困惑した方がいれば、すいません。引き続きこの作品の応援、よろしくお願いします!!
あれ?記憶では確か正門前にいたような・・・でも今見えるのは、白い天井。
『目覚ました?おーい』
冷静沈着という言葉がよぎったあの口調とクールな声質が聞こえてくる。今は冷静というより天然な雰囲気を感じる。そんなことを考えながら、重い身体をゆっくり起こしていく。
『痛!!』
『ゆっくりでいいよ。まだ打ち付けたところが痛むだろうし』
暖かい手の平が私の背中を押し、上体を起こす補助をしてくれる。
少し余裕持てた私は優しくしてくれた男に視線を向ける。そこにいたのは正門前で助けてくれたあの青年だった。真正面で見ると、強調された白い肌に、綺麗な二重といったパーツ、それらが整った顔立ちと思わせる。
『あ!!あの!!遼くんは!?』
『彼も同じくこの病院に運ばれましたよ。あの後、急に倒れてね』
『そうですか・・・ご迷惑をおかけしました!』
今できることを込めて、彼に深く頭を下げる。
『迷惑はかけてませんよ。私が勝手に介入しただけなので』
その一言でしばらく会話が途切れた。さすがの沈黙で気まずくなったのか、彼はゆっくり椅子から立ち上がる。
『じゃあ、帰りますね。』
軽く会釈した後、そのまま立ち去ろうとする彼を引き止める。
『待ってください!!今度会う時間をもらえませんか?この一件の謝罪を込めて・・・』
『じきに会えますよ』
軽く微笑む彼はそのまま病室から去っていた。短いやり取りだったが、とても人ができた性格をしていたことを身に沁みて感じた。
* * *
あれから一週間後、私の通う高校はある話で話題になっていた。
『ねえねえ聞いた? この6月に転校生が来るって!!』
『6月!?微妙な時期に来るんもんだな』
『違うんだって!!そこじゃなくて!!その転校生がめっちゃイケメンなんだって!!』
青春真っ盛りの彼らにとって重要な話なのでしょう。でも、私は青春が生んだ爆弾のことが気になって仕方なかった。いつも優しく努力家の遼くんがあんな別人に変わるなんて。よっぽど何かあったのだろう。
そう思い、朝のホームルームが始まる前あたりでいろんな人に話を聞くことにした。特に遼くんと親しい部活仲間に。でも、いつも通りの遼くんで、変わった様子はなかったという。変な噂が流れてる訳でもないらしい。結局、答えを見つけられなかった私はそのまま窓際の席へと座る。ホームルームの時間が来た。
英語の教師とは思えないスポーツマンオーラ全開の担任。彼はめんどくさそうに予定を確認する。
『期末テストがそろそろあるから勉強するのはもちろんのこと、係の奴、教科の先生にテスト範囲聞いとけよ。ああ・・・聞いてるとは思うがこのクラスに転校生が来ることになった』
その知らせにウキウキした様子で目を光らせる女子高生たち。
『俺もこの時期に来るか?とは思ったが・・・まあ事情があるのだろうな。まあ入ってこい』
そうブツブツ呟きながら、廊下前に立つ転校生を手招く。
そこに現れた人物に思わず席から立ち上がってしまう。椅子を倒してまで。
「おい、岡本どうかしたか?』
気づけば勢いよく席から立った自分に驚いていた。
『いや・・・なんでもないです』
『一週間ぶりですね。岡本さん』
その笑顔を振りまく彼こそ・・・正門前で助けてくれたあの青年だった。
『初めまして!!転校して来ました坂口 紘です!!』