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デイズ -名も無き魂の復讐者-  作者: 竜
Season1
18/37

17話 じゃあな、魂の復讐者

大阪駅へとついた新幹線。ゆっくり停車したことを確信した新幹線はゆっくり扉を開く。そのまま何事もなかったかのように、駅のホームへと足を踏み入れる。その時だった。一番最初に降りた橘萌絵は重力にでも引っ張られるよう、俺の視界から消える。急いで扉の前からでは見えない死角へと顔を覗かせる。だが、その正体を見破るより先に、脇腹に何かが当たるような感触を覚える。

『ご同行お願いします』

とても暗い声とともに、後ろから現れたスーツ姿の男。辺りを振り返るも、優花たちはすでに銃を突きつけられていた。

『そのまま指定席の3号車に乗れ』

反抗する隙が生まれるまで、指示に従うしかない。ひとまず、俺たちは彼らの言う通り、3号車へと向かう。どこかで隙を作れないかと辺りの人や物に目を凝らすも、何にも思いつかない。ここで瞬間移動すれば、俺や紫苑が躱せても、他の優花たちが助かる保証はない。

『瞬間移動しようなんて考えるなよ』

今俺の考えを・・・いや違う。紫苑を見張っている奴の方から声が聞こえた。だがボディガードにしては澄んだ声をしている。まだ高校生のような若々しい声が。後ろ見て状況を確認したいが、今は振り向けない。


*  *  *

そんなことを考えている間に、3号車の中へと乗車するよう指示される。逆らえば、俺以外の奴が・・・自分の判断が正しかったと祈るばかりで3号車へと踏み出す。

廊下を通り、自動ドアを抜けたその号車には誰も座っていない。完全に全座席を買い占めたようだ。となると・・・・この一連の犯人は・・・

『久しぶりだな。夏休みに入ってから全然会えてないから、最初に会った時が昔のようだ』

そういい、座席から顔を出すのはあの吉田隆文。口の中に入ったガムの音を鳴らしながら、近づいてくる。あの舐め腐った態度に余裕の表情。同時に、俺の膝を蹴りあげられ、無理やり跪かせる護衛。誰もいない状況になると少々乱暴なやり方だ。隆文の両手で鳴らした音で空気が変わった車内。

『お前たちの命を助ける。殺しなんてやったら吉田財閥らしくないしな。その代わり、二つ条件がある。』

突き出した人差し指と中指で、これから話すことに意識が向き始める。

『一つは自宅軟禁の生活を送ってもらう。お前たちがもう二度と財閥に逆らわないって言う証拠が欲しい。そのためにも暫くボディガードを近くに配備するし、監視カメラを部屋に置かさせてもらう』

『二つ目は、例の鍵を渡せか?』

だいたい彼の言うことに察しがついた俺は先に答えを出す。

『そうだ。それをするだけで、誰も死なない。もう二度と、遼のような犠牲者は出さなくて済む』

その条件を引き換えに、助かるのか。今ここで逆らえば、確実にみんなの危険に及ぶだろうし。ここで降伏すれば、二度と奴らに逆らうことはできなくなる。それでも・・・

『無理だ。諦めきれない』

俺の発言を聞いた隆文は呆れた表情で、瞼を深くとじる。深くつくため息と共に。すると合図を出すかのように、指を鳴らす。殺して構わないと言う意志を込めたようだ。

腰に位置していた銃は頭へと向けられる。

『じゃあな、魂の復讐者』

『何してんの!!!やめて!!!!』

必死に止めようとする優花と理恵。萌絵は恐怖で声も出ない様子が頭に浮かび上がる。だが(護衛の)ガードの固さで俺のとこまで来れないはず。

『やめて!!!!!』

ついに限界を迎えた優花の勢いはボディガードさえ押しのけ、俺に向けられていた銃口はあっという間に別の方向に傾く。そのまま俺の背後にいた男は視界に映る位置へと身を打ち付ける。

『こいつ!!』

怒りと共に再び突きつけられた拳銃。その銃口は俺のしがみつく腕で、銃弾の軌道は新幹線の窓へと変わる。次の瞬間、静かな空間は割られた窓から入ってくる強風で現場は荒れていく。それが戦闘の合図だと踏んだ俺は、優花に銃を突きつけたボディガードに強烈な拳をお見舞いする。拳に込め威力で、席へと身を打ち付けられる。突然、肩と脇腹の服が後ろへと引っ張られると同時に、そのまま弧を描くよう頭を打ち付ける。次の相手は吉田隆文だ。


『如月!!!早く行け!!!』

俺の張り上げた言葉で、考えてることはだいたい見当がついてるだろう。紫苑の勘が鋭いなら、吉田隆文につながれた糸状の線をたどっていくはず。その読みは的中し、紫苑は糸状の線が引かれていく別号車へと、座席の上を飛び越えていく。だが、横から若手男子の邪魔が入る。その手に握っていた刀を振りかざして。そして俺にもだ。

思い切り、服にしわを寄せるほどの力で胸ぐらに摑みかかる隆文。

『てめえらがその気なら、ド派手にやらねえとな!!』

言葉と同時に、拳を俺の顔面へと降りかける。だがそのまま拳を受け止める気になれない。だって彼の本心を知らずして、むやみに殴れない。だが、抵抗を見せない俺の頰に強烈なパンチをぶつけてくる。頭蓋骨にヒビが入りそうなくらいに。

『隆文!!目を覚ませ!!!今のお前は本当のお前じゃない!!!』

『これが吉田隆文だよ!!!!』

また拳がみぞ、腹、頰へと打ち込まれていく。だが攻撃するより、彼の心の中へと訴えかけることに重きを置いた。

『本当は!!!財閥のやり方が間違って気付いてるんだろう!?』

両肩に食い込んだ指で摑みかかる隆文に対し、俺は筋肉で浮き出た腕にしがみつく。黄色く光った瞳から我に返るような眼差しを突き出すも、一瞬のこと。両肩に食い込んでいた指は肩から首もとへ力が込められていく。首に集中した指の力で、一定の呼吸で受け取っていた酸素がなくなり、目の前の視界が霞んでくる。

『頼む!!!お前にはまだ大切な人がいるだろう!!!!』

『なんだ?大切な人って!!!???』

『頼む。お前は家族の奴らが間違ってるから、説得したんだろ?なら、こんな影の怪物の洗脳にやられるな!!!』

だが、首を絞めつける握力は強まるばかり。

『もうやめてよ!!!隆文!!!!』

一瞬、握力が弱まったのは、萌絵の止めようとする腕が介入してくる。ところどころ、まばたきの回数が増えていく仕草が見える。元の彼へと戻っているのか?いや、まだ彼につながれた糸状の線が消えていない。

『邪魔なんだよ!!!!』

振りのけた威力で、小柄な萌絵の身体は吹き飛ばされ、座席の肘掛けへと頭を強打。その瞬間、身体の中に怒りがこみ上げてくる。大事な人をこんな風に傷つけるなんて。この世の中には、会いたくても、そばに居たくても・・・帰ってこない人がいるのに。その時に、優花が腕の中で抱えていた遼の死に顔が蘇ってくる。

気づけば、ボディガードが手にしていた銃を拾い上げ、萌絵へと撃鉄を起こす隆文。

もう二度とこんなことさせねええよ!!!

その思いとともに、瞬間移動の能力で止めに入ったものも、銃声は車内に鳴り響いた。一斉にみんなが振り向くほどの強烈な音で。

勢いで何も見えなかった・・・でも目の前の感触は、地面より柔らかくものにのしかかっている。よく見ると、床に倒れこんだ隆文の上にのしかかっていたのだ。彼にはどこも外傷はなさそう。萌絵は!? 急いで、彼女がうずくまっていた座席へと顔を覗く。

『おい!!萌絵、大丈夫か!?』

急いで向けた視線の先には、銃声で震え上がる萌絵が身を小さくしていた。見た限りでは、銃弾は当たっていない。優花たちの安否は!?さらに急いで後ろへと振り向くと、そこにはボディガードを地面に伏せさせた理恵の凛々しい姿と、みんなが無事なことに安堵の表情を示す優花が立っていた。

『お前ら怪我は?』

大男を相手にしてたから、優花たちは、息切れするほど体力を使っていた様子。よろけながらも向かってくる理恵は、勢いよく床へと尻をつける。

『なんとか・・・』

ひとまず誰も怪我してない。次は紫苑を助けださないと。その一心で、糸状の線でつながれた先へと号車を乗り換えていく。優花も続いて。次第に紫苑に近づいてるのだろう。剣同士がぶつかり合う金属音が近づいてくる。次の号車へと顔を出すと、あの時に遭遇したあいつがいた。隆文に誘拐されたあの日・・・


11話より・・・

”『行け!!行けー!!!』

吉田の荒れた声と共に車の中から現れるのは怪物狩りの連中だ。なんで、怪物狩りのこいつらがここに!!もしかして・・・あらかじめ俺の正体に見当がついてったってことか。2、3人同時に握った刀で斬りつける構えを取ると。急いで打ち合った平手技を発動。その手から生まれた衝撃波で2人は見えない程の距離まで吹き飛ばされる。しかし一人の動きが応用力ある動きで、脇腹に鋭く深く突き刺さる刃。 厚い肌で覆うも、怪物殺しの刀はなかなか強烈だ。それに動きが圧倒的に早い。

『トドメだ!!!』

気づけば、背後に移動していた男が斬りかかる勢いで、刀を振りかざす。”


影の怪物に変身した俺を追い詰めたあいつだ。

俺たちに気づいたその怪物狩りは、紫苑を無視し、あっという間に瞬間移動の速さで車内から消えてしまう。不利だと思ったのか・・・

『桐島の野郎・・・』

なんとか、紫苑も無事に危機を免れたよう。


『隆文を操っていた怪物は倒したのか?』

『もう始末したよ』

紫苑も俺もどこかで気が抜けたのか、適当に座れる座席へと腰を下ろす。

『よく、、俺の行け!!っていう合図でわかったな』

『まあ糸状の線が見えてたし・・・彼が操られていたのは、なんとなくわかった』

『もう・・・心臓に悪いぜ』



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