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デイズ -名も無き魂の復讐者-  作者: 竜
Season1
14/37

13話 展開

『影の怪物が学校を襲い出した』

『なんで?』

『何人かの体を乗っ取り出したんだよ!!それも影の怪物も一体だけじゃない!!』

急いで通話を切り、驚きの表情を晒す紫苑に事情を説明する。

『どうした?』

『学校に怪物が攻め込んだらしい。俺は騒ぎを止めに行く。お前はあの副社長に張り付く悪魔を処理してくれ』

覚悟を決めた鋭い眼差しを見て、俺の願いを受け入れる紫苑。

『分かった。応援は呼んでおく』

『ありがとう』

そのまま、俺・坂口紘は喫茶店をあっという間に抜け出した。


*  *  *

騒動が起きる数分前の教室。

『優花!!今日はどうする昼ごはん?』

『私弁当あるし、教室で食べるよ』

理恵の優しい気遣いにも疲れ切った様子で対応してしまう。

『そっか、じゃあ私は食堂で食べるね』

笑顔で彼女の言葉に反応するも、顔が引きつっていることを身にしみて感じる。よっぽどショックだったのかな。昨日、影の怪物を目の前にしたこと・・・いや、一番ショックだったのは、坂口紘くんが影の怪物である可能性が浮上したこと。昨日はどこにも彼が見つからなかったし、病院に運ばれる前に、紘くんが発見された場所は影の怪物が去っていった方角と同じ位置にいたこと。そんなことを脳内で巡らせているうちに、遼くんがゆっくり座り込む姿が目に映る。

『紘の容態を確認するためにも、放課後、お見舞いに行こう』

優しく寄り添う彼の言葉には感謝してもしきれないほどだった。それと同時に・・・

『うん、ありがとう・・・最近ごめんね』

『うん?何が?』

『最近、紘くんの事ばかりで頭いっぱいになって・・・私たちの関係を疎かにしてしまったこと』

ゆっくり一呼吸を入れながら、反省の意志を彼に突き出す。その言葉に彼は一つ表情も変えず・・・

『全然気にしてないよ。俺も優花と同じこと考えてた』

『え?』

『紘が俺たちを助けてくれていたのかもしれないって思うと・・・俺も彼にできることはしてあげたい。だって怪物狩りの話だと、心を奪われた人間は元には戻せないんだろ?なのに、彼は俺を・・・いや俺たちの関係を修復してくれたかもしれない。それが本当なら・・・存在が気になるのも無理はない』


しばらく、その会話は途切れた。内では、彼の広い心に感動してしまっていたのだ。こんな素敵な人と付き合えたのだと、改めて感じる自分がいた。そんな風にあれこれ考えることが多すぎたのか、弁当を食べ終えるより先に、満腹感に浸っていた。そこで、彼がボソッと呟く。

『きっと、そういう人思いなところに惚れたんだろうな。』

『急に何よ!?』

照れくさくなったのか、真っ赤に染まっていく頰を隠すべく、下を俯く私。そんな私の頭を遼くんは優しく包み込むように撫でてくれる。


*  *  *


『きゃああああああああああああ!!!』

廊下全域に広がる悲鳴に思わず、ほとんどの生徒たちが振り向く。尋常さを感じさせる悲鳴の正体を知りたかった私はゆっくり廊下へと顔を出す。そこには、あの時の私と同じく、友人であろう人物にナイフを振り落とそうとする女子高生が目の前にいた。

『ダメ!!!』

自分の状況と重ねてしまった私は、振り上げたナイフを持つ女子高校生に目がけて、自分ごと突っ込んでいく。その衝撃で、ナイフを振り下ろす彼女は、後ろへと大きく頭をつく。何とか止めれたの?四つん這い状態で上げた視線の先には、もうすでに立ち上がった女子高校生がナイフを再び突き出す。しかし、現場に待ち合わせた男子たち3人が、一斉に彼女を取り押さえる。


『こいつ・・・力強いぞ』

なんとか危機を逃れた・・・と少し安堵していた。彼女を押さえつける男子たちの背後に現れる大きな身体を目にするまでは。そこで目にした光景はあの時と同じ白い眼球と緩んだ口元が映る。

『今すぐ彼女から離れて!!!!』

必死に止めに入るも、話を聞く余裕がなかったのか反応を示さない。いや、違う。もう遅かった。

『な・・・・なんだって!!!!えええええええ!!!』

そう顔を上げる3人男子高校生の目元は、あの黄色い瞳に変わっていた。


今置かれた状況に見当がついたのか、みんなを避難させるよう促す遼くんの声が廊下中に響く。同時に私のところまで駆けつけてきた彼が、身体を引き起こすほどの力で引っ張り上げる。その勢いで私はその場を離れていく。


『優花!!!お前は、急いでみんなを門の方へ避難させろ!!俺は校内にいる他の生徒たちを逃すから!!!!』

冷静かつ必死に行動するよう訴えるその鋭い目つき、恐怖で震えている私はそれに応えるべく、精一杯頷く。

『気をつけて!!』

私の言葉にあの爽やかな笑顔で応える。だがそんな余韻に浸ってる暇もなく、彼も私もそれぞれの場所に向かって走っていく。



*  *  *


運動場は、すでに門の方へ走っていく多くの生徒で埋めつくされていた。人の身長を優に超える正門と重量を感じさせるゲートの重さに苦戦していた。私は重い扉を開けるのを手伝うべく、2、3人が開けようとする門の補助に参加する。私を含む4人がかりでやっと、のそのそと開いていた門はスムーズに動き出す。完全に開いたその門を目にした瞬間、生徒たちの波が一気に押し寄せてくる。その後ろにはに影の怪物に乗っ取られた生徒たちが迫っていた。さすがに、窮地に追い込まれた私はまた冷静さを失う。どうすれば!?

そこに、スポーツマンメインの男子高校たちが、影の怪物に乗り移った生徒たちの波を押さえつける。

その時間稼ぎで、逃げる生徒たちを一人でも逃していく。これ以上の犠牲者は出させないという強い意志によって動かされた行動力で。

だが、超人的な握力では、堅いの大きい運動部でも押さえつけられてしまう。

『もう無理だ!!』

その状況で私が下した判断、それは急いで正門のゲートを閉じること。

『正門はもう無理。とりあえずここは塞ごう!!』

その掛け声と共に、今度は、ゲートを閉じるのを手伝う。重さでゆっくりしか動かないゲートを一刻も早く、閉め終える。

一方、限界突破を迎えた運動部たちは簡単に投げ飛ばされてしまう。

*  *  *

なんとか正門は完了。次に、私の指示に付いてくる複数の生徒に対して・・・

『私は西門を!!あなたたちは皆の避難完了次第で東門を封鎖して!!!』

わたしの考えに賛同したというサインを、東門に向かっていく行動で証明する他の生徒たち。

西門へと向かう過程で大勢の生徒が、影の怪物に呑み込まれていく様を目撃をする。助けたい一心が強すぎるが、到底敵う相手ではないこと、そして少しでも多くの生徒が助かる選択肢を選ぶなら、学校の封鎖が最優先。そう思うしかない私は目を瞑りながらも、西門へ向かっていく。


*  *  *


ようやく見えてきた西門前には、他の生徒を避難させる理恵の姿を目撃する。

『理恵!!よかった!無事で!!』

『おう!!ひとまず、避難は大体完了した!』

理恵の表情を見て、不意に浮かび上がる橘 萌絵の表情。

『あれ!? 橘は!!萌絵は!!』

『まだ見てない!!』

ひとまず、他の生徒たちを逃すことを優先させよう。もしかしたら紛れてるかも。

そう信じて、理恵が指揮する避難のサポートに率先した。だが、あっという間に現場は威圧的な怪物が差し迫ってる。生徒が門に集まるぶん、怪物も群れるのは当然の結果だろう。

その群れから現れたのは、橘 萌絵と寮くんの姿。 彼らが少しでも多くの生徒を避難させた結果が後ろの塊で目に見える。あとは、一直線に走ってくる彼らを援助するだけ!!

『もう門閉める準備して!!』

理恵の指示で、複数の生徒がゲートの端で待機する。一気に学校を抜け出す生徒の波。

『よし!!いける!!!』

波の中から大きい悲鳴が突如聞こえてくる。その悲鳴の先に映ったのは、ナイフを持った男子高校生が理恵を刺そうとする姿。

『危ない!!』

彼女との距離が遠いせいで、呼び止める声だけでしか阻止できない私の代わりに遼くんが止めに入る。

『うっ!!!』

次の瞬間、ナイフを持った男子高校生と遼くんが静止してる光景が目に映る。何が起きたの!?よく見ると、遼くんの腹部には男子高校生が持っていたナイフが突き刺さっていた。滴る血が床に溢れると同時に、彼は崩れ落ちる。理恵も目の前の出来事に驚きを隠せない様子。だが、あっという間に驚きから怒りの感情に変わる。

『私の兄貴に何してんだよ!!!!』

理恵の中でキレたのか、強烈な足蹴りをナイフ握る男子高校生にお見舞いする。


『遼くん!!!!!!』

急いで駆け寄り、彼に肩を貸す。二、三歩遅れながらも私らは門の向こう側へと避難することができた。

『遼くん!!』

必死に呼ぶも、意識朦朧とした半目で、反応する気力がない様子。

『ねぇ!!遼くん!!誰か救急車呼んで!!』

責任を感じた理恵は、急いで救急車を派遣するよう連絡してを取る。

『なあ、、、ゆうか。もういいよ』

私の細々とした腕を最後の力を尽くして、掴みかかる暖かい手。遼くんが必死に伝えようとする言葉に耳を傾けるが、彼の弱っていく姿を目視できなかった。それでも向き合わないと!!そういう思いで彼と目を合わせる。

『一つ約束してくれ・・・俺の分まで幸せになれ。俺が羨むぐらい・・・楽しい毎日を送ってくれ・・・』

『・・・・・・うん!!約・・・・約束する!!』

言葉に詰まりながらも応えた言葉に彼は爽やかな笑みで返事を返す。次第に、私の腕を掴んだ手の握力はなくなり、そのまま眠りについた。必死に嗚咽を我慢して彼の言葉に応えたぶん、大量の涙が一気に溢れ出す。


次第に足音と共に近づいてくる一人の男。そこに現れたのは、紘くん。

『何があった?』

息を切らしながらも、目の前の状況が読めなかった。私の腕の中で眠った遼くんが視界に入ると、ゆっくり彼のそばに屈む。

『遼・・・』

紘くんが、呼びかけるもの反応なし。彼が亡くなったことを確信した彼は、俯いたまま、何粒の涙を地面に溢していく。


『俺は・・・何も・・・できなかった』

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