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デイズ -名も無き魂の復讐者-  作者: 竜
Season1
11/37

10話 襲撃 

如月 紫苑、彼と別れた後、暗い帰り道をひたすら歩いていた。服が背中の汗にへばりつくこの感覚、夏が近づいてる証拠だろう。考えているのはこの程度のこと。


次第に電車の下を潜る暗いトンネルへと入っていく。点滅しながらの照明、学校で楽しいと思わせるものとは違うこの感覚。これが感情なのか・・・そんな訳も分からないことを脳内にめぐらせていた。不自然なバイク音が気になるまでは・・・。なにせ歩道専用のトンネルであるはず背後から聞こえてくるのだから。その勘は間違いではなかった。


まばゆいばかりの光が背中を照らしていく事に感づいた俺は、急いで電車の下に通るトンネルをくぐり抜ける。そしてしぶといほどについてくるバイクを瞬間移動の能力を使って躱す。容赦ないスピードで突っ込んでくるバイク。完全に狙われてるな。一先ず、この場所から退散しないと。


しかし狭い路地裏に入った俺を逃がさない勢いで後を追い続ける。追いつかれまいという意志で路地裏の中を駆け抜けていく。同時に保険をかけとくか・・・急いで携帯電話をポケットに取り出し・・・

路地裏を抜けた先には、横から突っ込んでくる黒い車と衝突。その衝撃で俺の身体は、大きく重力に逆らうほどの勢いで回転していく。なんども地面に打ち付けた頭で、はっきりしていた意識は一気に霞んでしまっている。もう重たい体を持ち上げようとするも、反撃する体力はもうなかった。


*  *  *

今度 クラスのみんなで遊ぶんだけど、紘くんも来ない?そんな文面を彼に送信する私。どうしても送りたかった文面を打ち終えた後は、気を取り直し、机にある英語に取り掛かる。そういう気持ちで動くも、1分も満たない間に携帯が鳴り響く。画面に映る電話の相手は遼くんからだ。彼から電話くるのは珍しいと思いながら、応答ボタンに触れる、

『遅くにすまない。優花に急ぎで聞きたいことがあって』

”急ぎ”という言葉の通り、慌てた口調が表れている。

『何?』

『紘に何か言われたり、連絡が来てたりしないか?』

『いや、今日は何も』

彼の身に何かあったのだろうか?そんな嫌な予感を感じた私は瞬時にあの機能を利用する。

『ねえ、何かあったんでしょ!!紘くんに!!!』

問い詰めた私の口調にすぐに反応できない遼くん。どうやら図星のようだ。

『実はこの場所に警察を呼ぶように言われたんだ』

この場所というのは友達追加した時に共有される互いの位置情報。そして紘くんがいるとされる場所は完全に人里を離れた廃墟エリア。周りにあるのは山といった鬱蒼とした自然のみ。

『ねえ、遼くんバイク持ってたよね?急いで迎えに来てくれる?』

『いや、何するつもりなの?心配しなくてm』

彼が言いかける耳も持たず、怒鳴りつける。だって止められることはもう分かってる。それでも・・・

『何かあってからでは遅いでしょ!!ここからならそう遠くない!!』


*  *  *


約束通り、彼のバイクで紘の場所へと向かっていた。街中を走るどの車も追い抜く勢いで、その勢いは止まらず、数分もしない間に暗く長い道路をもうスピードでかっ飛ばしていく。街を離れ、廃墟エリアに近づいてる証拠だ。

『お願い、間に合って!!』


* *  *


霞んだ視界から聞こえてくる男の声。それも皮肉な口調がやけに脳裏に焼きつく。その舐めた態度は声だけではなく、覗き込むその表情もそうだ。

『やっと起きたか。お前が起きるまで退屈してたぜ』

そこにいたのは、この世で一番憎んでると言える男、吉田隆文だった。そいつが目の前にいると知った瞬間、奴の頰に拳をお見舞いしたやるという勢いで振り込む。だが、両手首につながれた鎖で身動きできなかった。

『ほお、威勢のいいことだ。そこは褒めてやるよ』

俺が起きるまで、楽しみをとっといたのだろう。目覚めたばかりの俺の腹部に強烈な拳を打ち込む。不意打ちに思わず、無様な声を出してしまうが、それを見る吉田からすると、とても喜ばしいこと。まるで初めて欲しいものを手に入れた子供のように笑い声をあげる。なおさら、その表情が俺をイラつかせる。

『痛かったな・・・かわいそうに。でもお前を助けにくる奴なんかいねえよ』

こんなチンピラの振る舞いしかできない彼が財閥の息子?その理不尽さに我慢できなかった俺は言葉として吐き出す。

『人間のクズが!!!!』

たったの一言だが、ストレートな6文字が効いたのだろう。一瞬にして威圧的な声変わりを見せる。だが、相手もバカじゃない。別の作戦で俺を攻める。

『お前と俺が食堂で喧嘩した時に、止めに入った女がいたよな?』

よっぽど俺の存在が邪魔なのだろう。分かりやすい挑発で陥れようとする方法、これが別作戦のようだ。だが、身体に入ってる無駄な力がなかなか抜けない。

『ああ、岡本優花か!!親父に捨てられた一家だったっけ?』

今は感情を抑えろ!!これは相手の思う壺だ。そう自分に言い聞かせるも、鎖の音がやけに響いてしまう。

『なんでこんなこと言ったと思う?ただお前を追い詰めたとこで何の意味も持たない。じゃあ、意味のあることって?そう。お前を助ける人全員、苦しませることだ』

『やめろ・・・』

また口が緩み、笑みをこぼし始める吉田の表情。何で?すごい体がざわめつく。挑発だとわかってるのに。

『いい表情だな・・・紘・く・ん』

優花の呼び方を真似した後、またあの高笑い。

『やめろって言ってんだろうがああああああああああああああ!!!』

俺の中で何かが切れた。気づけば、鎖を引き抜くほどの超人に変わる黒の怪物になっていた。


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