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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その52 亡国費

作者: 天城冴
掲載日:2022/06/15

隣国の飛行機を撃ち落とし戦争状態に突入したニホン国。しかし、大国の支援もうけられず、政府与党の議員たちはジコウ党会館地下室に逃げ込んでいた。この状況にイラつくアベノ元総理に話しかける声の主とは…

ニホン国時間深夜2時。

夜間にも関わらず、轟音が響き渡り、コンクリートの壁に、またヒビが入った。

LEDの灯りで、照らされているはいえジコウ党会館地下室では、満月の光も届かない。

「ああ、ど、どうして、こんなことに、わ、私の予想となんでこんなに違っちゃうんだ!」

アベノ元総理の悲痛な声。

周りの元ジコウ党議員や前大臣たちが口々に答える。

「ぐ、軍事費いや、防衛費は出来るだけ増やしました。アメリカ武器も大量に買い入れました」

「マスコミを統制して、参院選も衆院選もわが党に有利な報道をして、ヨジカワ議員らのスキャンダルは報道させなかった。そして野党のレイワンやら共産ニッポンのあら捜しやらデマなどをネットでも流さ野党の議員議席を激減させたんです。ただし、我々に味方するメイジの党やら、ミンミン党のタマギギ派などはそのままで。だからこそ、軍事費を大幅に増やせたのです」

「そうです、社会保障費だのを削り、年金を減額し、消費税などの増税分は防衛費にまわし、さらに国債だって発行しました。野党どもが勢いづいていたら、国民生活が破綻すると反対していたでしょうが」

「こども庁だの、新型肺炎ウイルスなど感染症対策庁だの作って、国民を納得させようとしたんですが」

「け、憲法だって改正して、ジエータイを軍隊にして、強化しようとしたのに」

周囲の言葉に対してアベノ元総理は叫んだ。

「そ、それなのに、なんで隣国他から砲撃されるようなことになったんだ!アメリカの支援は!」

「あ、アベノ元総理、あ、アメリカからの支援は、その、我が国が一方的に隣国を攻撃したため、協定違反だとして、な、ないと」

ゼコウ元議員の返答に

「だから、なぜなんだ、アメリカ政府に忖度して、隣国の飛行機を撃ち落としたんだろう」

「そ、それが、その、アメリカ政府は、“ゼンカク諸島の問題はあくまでもニホン国との領土問題であり、話し合いが前提”と。交渉の場ももたないのは論外とのことで」

「こ、交渉なんて、あの海域のガス油田は欧米だって隣国の手に渡るのは不味いと考えていたに違いないのに!」

「し、しかしですねえ」

「各国連も、その、隣国が対話を引き延ばしているからとはいえ、領海に侵入してきた飛行機をいきなり撃ち落とすというのはと、ほかのアジア諸国からも非難されてますし」

「わ、我が国の現状で、いくら防衛費を増やしたとはいえ、その。戦争を、隣国と継続するのは難しいのではと」

「アジア諸国だと。あ、あいつらだって隣国を脅威に感じていたくせに!そ、それに今は無理って、防衛費は最大限、大ニホン皇国よりも多いのに!」

駄々をこねる子供のようなアベノ元総理をなだめようとするゼコウ元議員や元取り巻きの議員たち。議員だけでなく、ヨツウラ・ハリなどの御用学者たちも怯えた顔でアベノ元総理を見上げている。

“クスクス”

“バカみたい、いくら武器とか買ったって、人がいなけりゃどうしようもないのにねえ”

“ホント、扱える人がいなけりゃ、戦闘機もミサイルも只の鉄の塊”

ささやくような低い声。

「だ、誰だ。ぼ、僕を馬鹿にするのか!」

アベノ元総理の声に答えるように部屋の隅の暗闇からたくさんの声が聞こえてきた。

“馬鹿に?本当のことじゃないか”

“そうだよ、みんな事実じゃないか、この大ウソつきのおバカさん。国民が飢えて死んでも、仕事がなくなって他国に流出しても気にもとめなかったんだよねえ、政治家のくせに”

“アメリカだのの武器だの増やす国防がすべてだ、とかいって。武器だの、防衛システムだのにお金かけすぎて、教育とか基礎研究にまわすお金ないとかいってたんだよね”

“こども庁とか名前ばっかり、やってるふりだけ。子供が飢えたって、民間の子供食堂なんかで食べさせときゃいい、虐待なんて調査するフリ。本当に困ってるのをなんとかしようなんて思ってなかったんでしょ、私たちが施設に押し込められようと、職員さんの手が不足しすぎて、扱いが雑になっても。その職員さんが過労死しても”

“こんな国なんていてもいいことはない、って技術者とか、いろんな大人たちが逃げ出しても、愛国心がないとかいって、ほっといたんでしょ。むしろ積極的に追い出したんでしょ、基礎研究とか、すぐに儲からないものの開発なんて役にたたないとかいって。新型肺炎ウイルスのRNAワクチン技術だって、最初はモノになるかどうかわからないものだったのに”

“世界的食糧危機が起こっても、防衛が先、隣国の脅威に備えるのが先で、食料輸入が難しくなるのだってお構いなし。食糧自給率が低いのに、本気で改善なんてしようとしてなかったし。世界中が食糧の確保に躍起になってたのにさ”

“おまけに通貨安で、輸入食料は天井知らずの値段。自分たちはお金がいっぱいあるからね、国民が困っても議員の報酬も歳費も削りたくなかったんでしょ。メイジの党なんて政党交付金ため込みスゴイやってたんだよね”

“ジコウ党だっておんなじだよ、自分たちのやりたいことだけ予算つけて、都合のいいお金は削らないんだから。だからこんなことになったんだよ”

批判めいた口調に怒ったアベノ元総理は

「だから、なんなんだ!お、お前たちは」

“まだ、わからないの?私たちはアンタのせいで死んだ国民だよ、見捨てられた子供だよ”

“親が失業して、食えなくなって放置されたり”

“貧しくなって生まれるはずだったのに生まれてこれなかったり”

“おなかの中にいたのに、お母さんが仕事しすぎて、栄養不足で死んじゃったり”

“学業とバイト掛け持ちで過労死したり”

“ひどい目にあったよねえ、ジコウ党の、アベノ元総理たちのせいで”

そのセリフを聞いて震えだすアベノ元総理。声はなおも続いた。

“アンタたちジコウ党の奴らが国防とかいって、ほかに金かけすぎて、私たちのためになんか、お金も知恵も回してくれないから、こんなことになったんだよ”

“出生率なんて0.5切ったのに、まだ少子化対策なんていってるんだもん。でも財政が厳しいとかで予算つけなかったんだよね、予算の半分が防衛費なのにさ”

“今いる国民の大半が65歳以上なんだよねえ、若い人はジコウ党議員の親族とかがほとんどなんだよ。だって他国で出稼ぎしないと生活できないし、ニホン国民のままの方が損だしね。隣国で永住権とったほうがマシとか言われてるのにね”

“人はいないのに国防ってさ、すごいよね。防衛費って、誰を守るんだろうね、国民がほとんどいないのに”

“武器買ったり、防衛システムにお金かけすぎて、国民が死んだり、逃げ出したりしたんじゃ防衛費じゃなくて、亡国費だねえ”

“ほんと国を亡ぼすために税金をつかったようなものだよね。防衛って、何を守る気だったのかな、ジコウ党の、アベノ元総理の利権とかあ”

“自分たちだけを守りたかったのお”

「そ、そんなことは」

絞り出すようなアベノ元総理の声。

“でもさ、無駄だったよね”

“アメリカとかもさ、国民が逃げ出すような国は見捨てるよねえ、さすがに”

“だいたいさ、国民の多くが出稼ぎにいってる国にケンカ売るなんて、ひどいよねえ。自国でまともに食べられないから出てって仕送りしてるのに”

“だから、残ってた家族も逃げ出すんだよね。残ったのはジコウ党の周りの人だけ。あ、似非野党のメイジの党のハシゲンさんとかオーサカのマツイダさんたちも”

“でもさ、戦争前から国民が半減して、非戦闘員ってのが、ほとんどいないから砲撃しやすくなったらしいよねえ。なにしろ、残った人々はみんな戦闘員なんでしょ”

“ジコウ党自ら全員戦闘員体制だっていったもんね。出て行ったのは非国民だって、老若男女、子供だって戦闘態勢なんだってさ”

“わあ、大ニホン皇国の再現だねえ。そりゃ敵国条項とかさ、いろいろ言われて攻撃の口実にされるよねえ。今度こそ全滅させる、になっちゃうかもねえ”

「そ、そんな」

絶望的な声のアベノ元総理。すすり泣く女性議員や喚き散らす高齢の元男性議員たち。

“アハハハ、亡国費に税金を費やして、国民を、僕たちを苦しめた報いを受ければいい”

子供たちの声と同時に再び砲撃の音がした。

地下室の天井に亀裂が入り、コンクリートの破片がバラバラと落ちてきた。

悲鳴があちこちであがり、ところどころ血しぶきが飛び、そして、ついに建物全体が音をたてて崩れた。地下からはしばらく叫び声があがっていたが、やがて何も聞こえなくなった。


どこぞの国では、国民の生活を維持する金はないのに防衛予算は潤沢にあるようなことを与党がいってるらしいですが、国民を守らず何を守る気なんでしょうねえ。

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