ノーベル平和賞
♯ 033
とある町に一人の不良少年がいました。
ある日、その少年が住む町のショッピングモールに小さな占いの館がオープンしました。何処から来たのか知らないけれど、その館の占い師、占いが100発100中で、あっという間にテレビや雑誌、新聞にまで取り上げられて、少年の住む町も一気に有名になりました。
不良少年も地元民でしたし、話のタネに一度その占いの館に行って占ってもらいました。
特に悩みも無かった不良少年は、とりあえず 「俺って100歳まで生きられる?」と訪ねてみました。
占い師 「…うーん、生きるぞ。」
不良少年 「へぇ。じゃあさ、100歳の時の俺ってどんな感じ? スゲー幸せとか、不幸とか。」
占い師 「…ほう、これは。あなた、ちょうど100歳の時にノーベル平和賞を受賞するよ。」
不良少年 「はぁ? 俺がノーベル平和賞? はっはっは、くっだらねぇ。これホントに当たんのかよ。」
不良少年の占いはそれで終わったが、その後もこの占い師の占いは確実に当たると世間では評判になり続けていたため、不良少年も『100歳でノーベル平和賞受賞』を信じるようになっていました。しかし、それを信じきってしまった不良少年は、更生するどころかますます不良の道を突き進む。どんなに悪事を働いても100歳になった時にはノーベル平和賞を受賞するくらいの一発逆転な良い行いをするはずなので、それまでは悪い事し放題、金も使い放題の人生を送りました。
やがて少年だった彼も歳をとり、90歳も半ばを過ぎて23回目の刑務所暮らし。でも、そこで気になる事が。今回の刑期が終わる頃には100歳を超えてしまうが、刑務所の中で一体何をしてノーベル平和賞を受賞するのだろうか?
そんな事を考えながら、ちょうど彼が100歳になった年、全世界の国々で武器兵器の完全撤廃が完了し、『今後、人間同士の争いは行わない』という人類における永久平和宣言が成された事で、それに伴いノーベル平和賞は全人類に一律平等に授与されて廃止となりました。
イマイチ、オチが甘かったです。