トップおねぇは三角関係を見るためなら何でもする
※1000文字以下の短編企画『なろうラジオ大賞2』参加作品です。
選択キーワード:『おねぇ』
私はトップおねぇ。
学生の頃、三角関係に巻き込まれすぎて頂点を極めたオトメ。
好きになったコはみんな他の人と結ばれた。
自分でも何故あんなに色んなコを好きになったのか不思議だったけれど。
今なら分かるわ。
私の言葉には、恋心を芽生えさせる力がある。
だから、恐らくあの頃の私は。
自分の言葉に酔っていた!
間違いないわ。
「あのー、先生?」
はっ! いけない。
個人面談の最中だったわ。
担任になって早々に信頼を失ってはマズイわね。
まずは世間話でも。
「好きなコは、いるのかしら?
もしかしてカオリちゃん?」
「嫌いな人なら今できました。目の前にいます」
図書委員のヒロトくん。
「カオリちゃんは幼馴染みで、同じ図書委員。
何か思うところは無いのかしら?」
「……ありませんよ。僕が好きなのは本ですからね」
「それはどうかしら?
あなたが今までに読んだ小説のヒロインは、どんなコ達だった?」
「いきなり何を……」
「カオリちゃんの髪型は何だったかしら?」
「黒髪ロング、前髪パッツン寝癖なし……まさか!?」
「全員同じ髪型、でしょ?」
「き、気付かなかった……」
ふふ。
心のセキュリティがお留守になったようね。
徹夜で調べた甲斐があったわ。
「あなたは無意識のうちにカオリちゃんのことを考えていたのよ」
「……僕、本当はカオリのことが……
でも、自分から誘うのは負けな気がして……」
「カオリちゃんも似たようなことを言っていたわ」
「本当ですか!」
「明日の昼休みに体育館の裏。
あとは分かるわね?」
「ありがとうございます、先生!」
「“トップおねぇ”と、お呼びなさい」
ふぅ、明日が楽しみね。
昼休み、時間差でタクヤくんが来るはず。
昨日できたばかりの、カオリちゃんの彼氏。
ためらっていたけれど、幼馴染みのヒロトくんには話しておきたいようね。
あなた達は最初から三角関係だったのよ。
でも安心なさい、ヒロトくん。
あなたに本当にお似合いなコは他にいる。
次はあなたが三角関係の柱になりなさい。
それにしても楽しみだわ。
早く明日にならないかしら。
早く♪ 早く♪ 早──
「こんなところで
何をしているのかね?」
「……ぁ……教頭センセ……」
「君の仕業かね?
まさかこの学園でカップルが成立するとは」
「だが、これで確信したよ。
すっかり変わったが、君はあの時の学生だね?
先生達の間でも有名だったよ。
“三角関係に振り回される子”としてね」
「しかし懐かしい。本当に懐かしい。
“トップおにぃ”と呼ばれた
あの頃が」
お読み下さりありがとうございました。
一応、トップおねぇに悪気は無いようです。
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