『フカき者』本部
嘘あらすじ疲れるので停止。
異世界へと転生し、右も左も分からない鮫。
暴漢に襲われていたエルフの姫アミティを助けた事により、彼女と行動を共にすることとなった。
そして、彼女に連れられて、鮫映画を信仰する宗教団体『フカき者』の本部へとやって来たのだった。
「ここが我々の本部シャークベースですわ。」
彼女が指し示したのは町はずれの港・・・を少し外れた海上に建てられた、ファンタジー世界には場違いな石油プラットフォームのような建物だった。
「なんですかこれは?」
「シャークベースですわ!」
「あ、はい聞こえてましたよ。そうではなくて、なぜ石油プラットフォームがこんなところに?」
「石油は別に採掘していませんけれど、鮫映画によく出てくるアレですわ。」
「ああ、見た目だけなのですね。」
「何はともあれ中へどうぞ。・・・と思いましたが、鮫さんの大きさでは本部に入れませんね。」
「大きさに関してはお気遣いなく。」
鮫はそう言うと体を縮め、本部の正面玄関を通れる程度まで小さくなった。
「鮫さんは魔法を使えるのですか?」
「いえ、これはただの鮫の基本的な能力ですよ。」
鮫映画に登場する鮫は場面ごとにサイズを変え、舞台に合わせた大きさへと自動的に調節する能力を持っている。
これは縮尺がいい加減なのではなく、実際の鮫が自在にその体を伸縮できることによる表現なのだ。
巨大なメガロドンが人間社会で生活できていたのも、この能力あってこそである。
「それでは改めて中に入りましょう。」
「はい。」
本当は気が進まない鮫であったが、怪しい宗教団体の内情を知っておいた方がいいとも思っていたので、大人しく彼女に連れられて本部へと入っていく。
本部の中は外観相応に広く、居住区域と映画鑑賞用のシアタールーム、そして儀式の間に分かれている。
彼女は迷うことなく一直線に儀式の間へと鮫を案内するのだった。
「さあ着きましたわ。改めてようこそフカき者へ。我々はあなたを歓迎します。」
儀式の間に鮫が現れるとその場にいた信者たちがどよめき、周りに集まって来た。
「おお!その姿はまさしく鮫だ!」
「ありがたやありがたや。」
「本物ですか?握手してください!」
「すいませんが私手がないので、握手はちょっと。」
「これは失礼しました。お会いできて光栄です。」
「あっはい。どうも。」
信者たちは鮫を神格化しており、まるで仏像を拝むような扱いだ。
もちろん鮫はまったくうれしくないのだが、とりあえず信者たちに実害は無さそうなので一安心するのだった。
「せっかく鮫さんが来てくださった事ですし、儀式を執り行いましょうか。」
「それは良い考えですね。」
「もちろんですとも。」
「そうと決まれば特別な生贄を用意しなくては。」
アミの提案でにわかに活気づく信者達とは対照的に、鮫は居心地の悪さを感じていた。
「あのー?何をするんですか?」
「鮫さんは少々ここで待っていてくださいな。」
生贄という不穏な言葉に嫌な予感がする鮫だったが、本気を出されたらアミには逆らえないので、とりあえずは様子見するのだった。
次回「奴隷の少女」で鮫と地獄に付き合ってもらう。