物書き少女の馴れ初め
2人の出会い編。実に2人らしく書けたような。
私が爽香と出会ったのは、利用していた小説投稿サイトのオフ会でした。男性2人に女性3人。男性2人とは百合書きっていう繋がりで一応知ってたんだけど、女性2人は今日初めて絡む知らない人でした。2人が同じ学校の先輩後輩関係にあたるって事は聞いてたかな。女同士仲良く出来たらいいなって思いながら電車に乗り、1時間ほどして集合場所の駅に到着。
それから近くのカフェでのんびり自己紹介や雑談をして親交を深めたところで、カラオケへ移動。そこで事件は起きました。男性2人とは会うのは初めてだったけど、やっぱり百合好きということで話が盛り上がってました。
「人生1回でいいから百合キスを見てみたいですよ」
「分かりますー! 私もちょっとしてみたかったり」
「あれ? でも彼氏いるんじゃ?」
「いますけど、正直まだ恋とか分かんなくて。私は友達みたいな感覚なんですよね」
そう、この時私は幼馴染みの彼氏がいて。彼の事はどうしても幼馴染み以上には思えなかったのです。
「あたしが叶えてあげましょうか」
その時歌っていたはずの爽香が、マイク越しにそう言ったのが始まりです。
「え? で、でも、」
オロオロしていると腕を引っ張られ、彼女の腕が腰にまわり、逃げられなくなりました。
「嫌ですか?」
「や、そうじゃないですけど、あの、」
綺麗な顔だし近いし、身長が高いしで緊張はピークでした。
「まさかこんなに可愛い女の子があの小説を。びっくりしました」
それが爽香です。しょっぱなから飛ばしてましたね。はい。
「キス、しましょ?」
その時後ろで3人が「キマシタワー!」って叫んでました。私も覚悟を決めて目を閉じます。人前でキスなんて恥ずかしいけど! チュってするだけだよね! 一瞬で終わるんだよし来い!
「……ん…!?」
チュッで終わるどころか舌まで入ってきてテンパる私。彼氏とのキス以上にドキドキしてました。
「あの、ん、……」
思わず目を開けて爽香を見ると、それはもう嬉しそうな顔でした。なかなか終わらない濃厚なキスに頭はもう真っ白。なぜか体から力が抜けてすがってるみたいだし。実際キスがすごく気持ちよくて。
「ふぁ……んぅ…」
手がお尻を触り始めたところでようやく我に返りました。
「はわ、こ、これ以上はダメですぅー!」
「かーわいい♡」
もちろん彼女に罪悪感というものは一切感じられず。
「もう! みなさんも止めてください!」
ちなみに当たり前だけどしっかり見ていたようで。
「えー」
「先輩一言いいッスか。いいぞもっとやれ」
「どうぞ続けて下さい!」
敵だ。これ以上はなんというか、ヤバい。
「どうします? あ、あたし実は一目惚れしちゃってて。付き合いませんか?」
「えっ? えと、あの」
ちなみに腕はまだ私を捕まえています。
「あたしなら絶対幸せにするし、恋を教えてあげますよ。それより後のことも」
あと?? っていうか、これは、多分、
「既に、おちてるのかも……」
こんなにドキドキしてるの、初めてなんですけど。強引なのがちょっと素敵だったり。あ、でも今日知り合ったばっかりだし。頭の中ではグルグルと考えつつそれ以上何も言えないでいると、
「抜けて2人でホテルにでも行きますか? お互いいろいろ知りたいだろうし。それともここでいいですか? 止まんなくなっちゃいますけど。男性陣の前で」
「ふえぇ…」
それは困る! でも何故ホテル!!?
爽香の攻めはまだまだ止まらず。
体をイスに押し付けられ、再び熱いキスをされます。
「んぁ……んっ」
思考停止。助けを求めて3人を見るも、男性2人は目を背けてるし、女の子の方とは目が合いましたが、「エロい……」と呟いたきり何も言わず。止めてくれない。やっぱり敵でした。
ぴちゃぴちゃと唾液の音が聞こえて恥ずかしくてたまらなかったですよええ。
「……移動、しますか?」
「ふぁい……」
もはや拒否権無いですよねこれ。
「じゃあ行きましょ。あ、これだけ百合キスを見せてあげたんですから、カラオケ代くらい任せていいですよね? ではまたの機会に」
あっさりカラオケ代払わせて行きましたよホテル。しかも全部払ってくれました。イケメンか! 帰る頃にはすっかり爽香に懐いて離れがたくて、見事にフォーリンラブ。
そんなわけで付き合う事になりました。
ちなみに彼氏には振る前に振られました。
「お前俺のこと好きじゃないだろ? 別の女の子と付き合う事にしたから。じゃ」
いやいや、恋を知らなかったけど、それでも良いって言ったのあんたじゃん? っていう文句はとりあえず抑えて、すんでのところで、
「私も恋人できたの。恋が分かったよ。あと、確かに好きじゃなかったけど幼馴染みとしての好きならあるよ」
と、いうことでなんとか絶交にはならずに済みました。今でもたまーに連絡取り合ってる仲です。
こんなオフ会に出くわしてみたい。もしくはこんな風に攻められたい。羨ましい