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[3]

 『虹の橋』の先は、想像とはまったく違った風景だった。


 エンマ様なんて聞いたら、おどろおどろしい地獄のイメージであるけれど、ここはもっと荘厳で神聖な空気に包まれている。辿り着いたエンマ様のお城も、まるで神殿のような神々(こうごう)しい白亜の宮殿だった。


「柏木めのう、十九歳。間違いはないか?」

「は……はい!」


 こはくに連れられて訪れた大広間にて、早速エンマ様の足元にひれ伏した。と言ってもエンマ様は遥か向こうの玉座に腰掛けている。つまりはとてつもなく巨大なお姿で、目の前に足先があるというのに、告げる口元はずっと遠くてずっと上空にあるのだ。


「う~む。この者、死ぬ予定であったか? リストには載っておらんが」

「……え?」


 再び響き渡ったエンマ様の声は、とても(いぶか)しい雰囲気だった。


「では、エンマ様。めのうを生き返らせてはいただけないでしょうか?」

「こはく……?」


 隣に佇むこはくが大声を張り上げた。『死者のリスト』に載っていないのにも関わらず、もし間違って死んでしまったというのなら……もしかして生き返ることも出来るのだろうか?


「いいや……それは無理であろうな。この者を生き返らせては、綴られた過去が変わってしまう。が、その代わり今すぐにでも来世へ飛ばしてやろう」

「来世へ……そ、それではエンマ様! どうかこはくと共にお願いします!!」

「めのちゃん……」


 エンマ様の呟きと提案に、わたしは息つく間もなく懇願した。折角こはくに会えたんだ……また一緒にいられると思った矢先に、離れ離れになんてされたら元も子もない!


「こはく、おぬしはそれで良いか?」

「はい、エンマ様。めのうといられるのならどこへでも」

「こはく……」


 淀みのないこはくの応えに、わたしはゆっくりと隣の彼を見下ろす。同時にエンマ様からわたしに首を反らせたこはくの眼差しは、とても愛情深い温かさを放っていた。


「良かろう。ではこれより来世へ向かいなさい。次の世で共にありたいと願うならば、その手決して放すでないぞ」

「「はい!!」」


 こはくとわたしの高らかな返答が、広大な室内に同時に反響(こだま)した。

 と突然地面がグラグラと揺れ、着いている筈の床が割れる。一瞬にして開いた穴に、すっぽりと急降下するわたしの身体。その手が差し伸べられたこはくの前脚を握り締め、そのままこはくごと、わたしは暗い暗い奈落へ堕ちていった──。




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