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怪奇研究会  作者: 白のふたとき
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目覚め

都市伝説・怪奇を廻るミステリー解読フィクションです。

「怪奇研究会」

 

第壱章


カーテンの隙間からこの部屋に留まっている闇に一筋の光が差し込んできた。人々が徐々に行動を起こすまでまだ少し時間がある、しかし、昨日から小さな画面と見つめ合っている女は、まだこのこと気が付いていない。

 「ふぅ、目痛い。今何時かな?」

 横河真琴は、そう言いながらパソコンの画面下部の時刻表示に目をやった。時間は既に四時を指していた。大学が夏休みになってからこのような生活循環を送っていた。

 「先輩方が言っていたサイトが見つからないな、本当にあるのかね、都市伝説の真相が書いてあるサイトなんて。」

 このことが気にかかって、この頃なかなか寝付けないようだ。

 「んー寝ようかな、でも、今日はサークルの会合あるし。今から寝たら起きられないような気もするし、どうしよう…。」

 横河は仕方なくカーテンを開けて窓を開いた。夏といえどこの時間帯はまだ然程気温は高くない、それどころか寒い位だった。横河は、会合に出席するために身だしなみを整え始めた。今年から地元では歴史のある夕ヶ丘大学に通い始め、三か月以上が立つ。やっとこの暮らしに慣れてきたところだった。

 「大学の夏休みは長いけど、やることないんだよね。こんな日くらいしか大学に行かないしな。」

 身じたくを整え終わるとアパートを出た。学校には歩いて十分位の所に住めたのは幸運だったと横河はずっと思っている。昔から遅刻ギリギリに滑り込む日課を思い出して笑いが込み上げてきた。大学の周りには多くのアパートがあり、そこにも学生が多く住んでいるようだ。まだ、ほとんど火の消えたように静かである。

 「本当に静かだね、学生街ってやつ?いつも大学通っている時は色々と騒がしいのにな。それに、この頃の夜はいつ寝るのって位騒がしいけどさ。」

 夕ヶ丘大学は周りが森に囲まれているというこの御時勢には珍しい大学だと横河はそう思っている。横河は、通学路にある樅の木が茂り、まるでトンネルのようになっているここが好きだった。時計は七時半を指していた。すっかり日は昇ってしまったが、人通りは少なく、大学の門の前に一人の男が立っているのが見えた。

 百樹昌也は、片手にコーヒーを持ちながらスマートフォンの画面に目をやっていた。

 「百樹君、おはよう。早いね」

 横河は、声を掛けると無防備だった百樹は驚いてコーヒーを吹いた。

 「んっ…ん、おはよう。横河さんこそ早いね、いつもは遅刻ギリギリなのに。」

 百樹は、咳をしながらそう答えた。

 百樹は、横河と同級生で今年知り合った仲であった、百樹は比較的高身長で、大学生にしては珍しい黒髪で見てくれはそれなりだ、一見モテそうではあるものの、性格が災いしてまり女性には縁のない男であった。この男と普通に話のできる横河も変わり者なのだ。

 「百樹君は、髪の毛染めないね。もう少しオシャレしてもいいと思うよ」

 横河は、からかいながら言った。

 「そういう横河さんこそ、手抜きの髪を縛ってくるの止めなよ。あと、ちゃんと寝なさい。」

 百樹は、横河のこと見やりながらそう言い放った。

 横河は、図星でぐうの音も出なかった。

 大学内は、広いためサークルの部室がある朱雀棟に行くのには時間がかかった。この学校では五つの棟があり四神の名をつけ、朱雀、玄武、青龍、白虎がありその中心に宝棟があるがこれらは全て学生たちが勝手に付けた名称でしかない。各棟の入り口前に色石のオブジェが名前の由来なのである。だが、いつからそう呼ばれているのかは誰も知らないのである。

 「しかし、朱雀棟は遠いから嫌だな、一々足を運ぶのが面倒くさいんだよな。」

 百樹は、ため息まじりでそう呟き、首元に下がっている鍵を握った。

 「百樹君さ、前から気になっていたけどその鍵なんなの?」

 「んっ?あぁ、これの事か。昔貰ったんだよ。」

 百樹は、遠くを見ながら寂しげに呟いた。

 「もしかして、彼女さん?いい趣味してるね!」

 横河はそんな百樹のことを気にせず言い放った。

 「いや、そんなんじゃないけど。ほ、ほら早く部室に向かおうよ‼」

 百樹は、そそくさと横河の手を引いて朱雀棟・怪奇研究会部室に向かっていた。棟内はヒンヤリとしていた。こんな時間にはまだ殆ど学生は来ていないようで静かだった。

 部室は朱雀棟三階にあり、昇っていくのは一苦労するもので夏休みにはいりだらけきっていた学生には地獄さながらである。

 二人は、部室の前に着くと部室から何人かの話し声が聞こえた。

 「もう誰か来てるのか。早いな、まだ八時になったばかりなのに。」

 「部長さんたちかな、なんかいつ来てもいるような…。家に帰ってるのかな?」

 「確かに、泊まってんのかな?(よもぎ)さんならやりかねない。」

 (よもぎ)紅葉(こうよう)、夕ヶ丘大学三年で怪奇研究会の部長であり、夕ヶ丘大学の特待生の一人であるがどうでもいいことである。理系に典型的な人間でメガネ白衣姿がよく映える。幼馴染みで副部長である(しき)獅子(しし)(ゆう)()には「紅葉(くれは)ちゃん」と呼ばれ続けている。

 獅子式悠希は、蓬と同学年でスポーツ特待生で頼りがいい姉御肌の美人である。なぜ怪奇研究会に属しているかは、分からない。

 部室にはやはり蓬と獅子式が居た。

 「部長さん、おはようございます。お早いですね。」

 「蓬さん、獅子式さん、おはようございます。」

 横河と百樹は苦笑いしながら挨拶すると、獅子式はいつも通りの笑顔を向けてきた。蓬は後ろの倉庫に頭を突っ込んでいる。声らしきものが聞こえてくるが聞き取ることは出来なかった。

 「やぁ、おはよう。真琴ちゃん、昌也君。紅葉ちゃんは今、「モノ」を探しているから少し待っておくれよ。」

 そういうと、獅子式は自販機で買ったであろう缶コーヒーを横河と百樹に手渡した。つい最近発売された物のようだ。

 蓬は、倉庫から這い出てくると眼鏡を上げて笑いながら探したものを自慢げに広げた。

 「よぉ、こいつを見てくれよ。お前らかげふみって知っているかい?」

 「かげふみってあの影を踏む遊びの事ですよね?」

 横河は、不思議そうに答えた。

 「その通りだ。横河君。」

 「で、蓬さんそれがどうしたんですか?まさかこれからかげふみして遊ぼうなんて言うんじゃないんですよね」

 百樹は、ふざけて笑いながらそんな風に言った。

 「前々から言ってた通りに夏の合宿は叫心山の“かげふみ伝説”の解読に行くぞ‼」

 蓬は、百樹の問いに答えることなく胸を張りながら言い放った。

 「「「聞いてない」」」

 満場一致でそう答えた。

                            第壱章


初めて書くので色々と粗相あるかもしれません。応援していただけたら嬉しいです。

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