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第69話 抱えた過去と開く未来

後書きに大事な報告があるので是非見てください



 私は粟岐月夜見です。小学六年生です。


 そんなヨミには力があります。それは人の心が見える力です。ヨミの右目と目があった人の心の奥底まで覗くことが出来ます。それだけじゃありません。その心にヨミの意思を植え付けることも出来ます。


 どんな荒唐無稽な命令でも心に植え付けれます。でも度が過ぎるとその人の心の器が壊れてしまいます。壊れたら最後、目は虚ろになり、他者とのコミニュケーションが取れず廃人となります。


 ヨミはとても恐ろしい力に目覚めてしまったのです。そのことを知っているのはお母さんです。お母さんはいつもヨミに言い聞かせます。


「この力は月詠命様の力なのよ。とても偉大で、絶大なお力なの。だから無闇に力を使ってはダメよ。でも自分の身に危険が迫ったら躊躇せずに力を行使しなさい。相手のことより自分の身を第一に考えなさい」


 何度も何度も聞かされましました。普段人には優しくしなさい、気配りができる子になりなさい、と言うお母さんだけど、身を守るためなら力を制限してはいけないというのです。


 その時はまだその意味が解りませんでした。その意味を理解したのはあの事件の時です。


 今でも鮮明に覚えています。ヨミが学校から帰ったら、いつもお母さんが出迎えてくれます。お帰りと言ってくれます。


 でもその日はお母さんは玄関まで出てきてくれませんでした。ヨミはお母さんを怒らせるようなことをした覚えがありませんでした。心配になったヨミは大きな声で「ただいまお母さん」と言いました。


 そしてリビングに入った時目にしたのは、血まみれになっていたお母さんの姿でした。


 ヨミは意味が解りませんでした。お母さんのお腹から血が出て、真っ赤になってました。泣くのを必死に我慢して、「お母さん」と叫びながら身体を揺すりました。そうすると。


「ヨミちゃん、お帰りなさい」


 とお母さんが言いました。喉に何かが詰まっているかなように咳き込みながらも。


「お母さん大丈夫?血がいっぱい出てるよ!救急車呼ばないと!」


 何をすればいいか解らなくなりながらも、救急車を呼ぶべきだと判断しました。近くに落ちていたお母さんの携帯電話で救急車を呼びました。


 電話の向こうで何か聞かれたけど、ヨミは必死にお母さんが死んじゃうと叫び、一方的に家の住所を伝えると電話を切りました。今思えば、身勝手で迷惑な要求でした。


「ヨミちゃん、そんな慌てても救急車はすぐに来ないわよ」


 声が掠れているお母さん。こんな時も冗談を言うお母さん。でも顔から血の気が引いていること、もう長くは保たないことを幼いながら悟りました。それでもヨミは。


「死なないでお母さん!死なないで!」


 叫びました。いつも優しいお母さん。死んでほしくない。それだけが望みでした。


「ヨミちゃん、お母さんのお話をよぉく聞いて。ヨミちゃんには力があるの。それはそれはすごい力よ」

「月詠命様の力でしょ?」

「そうよ。ヨミちゃんになら使いこなせるわ、きっと。そしてお母さんの分も生きてね。お母さん、先に天国に行ってるから」

「嫌だよ、お母さん!死なないで!いやああああああああああ」

「じゃあね」


 そう言うとお母さんは安らかに息を引き取りました。そして間もなくして救急隊員の人が来ました。でももう遅いのです。お母さんはもう死んじゃいました。それでも病院に連れて行くといいます。ヨミも一緒に来るようにと。


 その時、ヨミは意識を失いました。


 気付いた時には目隠しとヘッドホンがつけられ、手足が縛られていました。誘拐されたのだと解りました。別に誘拐自体は怖くもなんともありませんでした。


 女の子を誘拐する事件はよくテレビでやっていたので、ヨミも候補の一人だと日頃から周りを警戒して、ちょっと大人っぽく振る舞う子でしたから。


 しかし、今回の悪意は震撼するには十分な理由がありました。そう、犯人はヨミの力を知っているのです。だからこその目隠しとヘッドホン。


 何とか正気保てたのは犯人グループにいた塙山のおじさんのお陰だと思います。結局、おじさんはヨミのことを救ってくれましたから。今ではヨミは銀の弾丸に引き取られ、おじさんも近くで働いています。


 ここまで聞けば不幸はありましたが、お母さんを失ったのは悲しかったのですが、命あっただけ儲けものというやつです。めでたしめでたしと締めくくっても話としては完結していたことでしょう。


 しかし、そうは問屋が卸してくれませんでした。それは先日のこと。


「月夜見ちゃんのお母さんの名前って粟岐天照(あわぎあまてる)よね?」

「はい、そうですが……」


 古夏真冬さんからの唐突な質問で、びっくりしました。真意が見えないとはこのことです。


「見つかったのよ」

「……何かですか?」


 口詰りながらも、聞き返しました。とても嫌な予感がしました。こういった場合の予感というものは当たるものです。


「見つかったの、あなたのお母さんが」


 もう、我慢できませんでした。ヨミは能力を使い、真冬さんの心を覗きました。


 そして見たのです。ヨミのお母さん、粟岐天照が生存しているという情報を。死んだはずの母が生きていて、銀の弾丸の捜査網に引っかかったのだと。


 そこからあまり記憶がありません。記憶に関しては一頭地でいくヨミですが、この時ばかりは混乱していて覚えていません。とにかく外に出ないようにと厳命されたように思います。


 解らなくなりました。これからどうするべきか。能力者と言ってもまだヨミは小学生です。出来ることは限られています。


 しかも、戦闘力はゼロです。叩かれたら痛くて涙が出てくるですし、よく転びます。そんなヨミに何ができるのか。


 それでも必死に考えました。お母さんと再開するための最善手を。待っていられない。待つだけでは解決しないことだと気付いたから。





〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

 





 

 私、平塚紫(ひらつかゆかり)は実家の洋食屋“(くれない)”の手伝いを終えて、自室のベッドで寝転がっていた。


 夏休みに入り、客層が変わる。主婦層メインだったランチには子供連れの家族や学生達が加わる。夜も夜のでやはり長期休みになると財布の紐が緩むのか、来てくれるお客さんが増える。


 つまり、全体的に忙しくなるのは明白で。両親だけでは負担が大きくなるので、私が普段よりも助っ人として働くことが多くなる。しかし、これは今に始まったことではなく、昔からそうだ。


 と言っても、友達と遊びに行くといえば快く送り出してくれるから、困ったこともないし、悩みの種になった試しもない。私にとって、悩みがあるとすれば、それは実家の手伝いではない。


 単刀直入にいうと、幼馴染のことだ。先日起きた日向モールで起きた騒動の一幕を私は見てしまった。幼馴染の一人、天神党夜が能力者であることを知ってしまった。


 動揺した。驚きもした。あのトーヤが能力者だなんて。能力者ってあの能力者のことなのか、結びつかない。そんなはずない。私もトーヤもジンも能力適正診査を受けたけど、誰も適正はなかった。


 もちろん、後天的な人もいるらしいけどそれはごく一部で。それに最近の研究によって後天的であっても診査でほぼ確実に分かるとまで言われてるほどだ。


 じゃあどうして、なんでトーヤは能力者になったのか。なんで教えてくれなかったのか。一言、一言行ってくれても良かったじゃん。トーヤを責める感情もあった。


 今思えば、ここ最近のトーヤの行動は不審なことが多かった。いきなりバイトを始めるし、夜になっても帰ってこないこともあったらしいし。妹の結夏ちゃんも心配するほど。


 つまりは、バイトは能力者に関することってことなのか。これは邪推しすぎなのか。あるいは飛躍しすぎなのか。でもそうとしか思えない。


 玲奈ちゃんに呼び出された時も能力者についての話だったって言ってた。てことは玲奈ちゃんはトーヤが能力者だって気付いてたってことなのだろうか。


 これは私の推測でしかない。でも不思議と胸のつっかえが取れた気がした。それもそうだよね。うん、そうだった。どれもこれも私の中で既に答えは出てた。


 あたかも思い出したかのように回想したのは演技だ。嘘でしかない。また自分に嘘をつくところだった。そうだよね私。だって、だってさ、気がついていたもん。そうじゃないかなぁって。


 結局は、解答を見ながら自己採点してるようなものだった。


 私を家まで送ってくれた時もきっとそうだったんだ。ママの血を受け継いだのかな。勘は鋭い方なんだよね。一瞬だったけど私見てたんだよ。党夜が一瞬だけど怖い顔したのを。事情は分からないけど、私を守ろうとしてくれたことだけは解った。そのことがたまらなく嬉しくて。きっとママに見透かされてたんだろうな。


 そう、私はトーヤが隠し事をしていることも、それが能力者関連だということも薄々気が付いていた。可能性の一つとして考えていた。でもそこまで解っていたにも関わらず、それを心の奥底へ追いやって見ないようにしていた。


 臭いものに蓋とまでは言わないが目を背けたのは事実だ。なんでだろうな。たぶん怖かったんだと思う。能力者に関わることが。今でも能力者の悪いニュースは時々報じられる。無意識のうちに能力者に対して嫌悪感を抱いていたのかもしれない。


 でもこれもまた、上辺だけのものだ。確かにそれも怖かったけどそれよりも恐れていたのは、党夜と能力者を結びつけた時、知った時にこれまでの関係が崩れてしまうことだ。


 私は非能力者でごくごく普通の一般人。もしかしたらトーヤが能力者で私達とは別世界のひとになってしまった。それによる関係の破綻を目の当たりにするのが、何よりも恐怖だった。


 それほどに私の中でトーヤとの関係は失いたくないかけがえのないものだと暗に意味していた。それを認めてしまうのがむず痒いのもまた目を背けた理由なのかもしれない。


 私はいつもそうだ。トーヤとのことになると冷静さを欠いて、思ってもないことを口走って。でもそんな私をトーヤはいつも心配してくれて、構ってくれて。自分が悪かったと先に頭を下げてくれる。私の目に映るのはそんな友達想いの優しいトーヤで。


 ジンと比べれば、勉強が出来るわけでもスポーツが出来るわけでもないし、要領がいいわけでもなく、不器用で、雑で、無神経で―――それでも私は二人の幼馴染からジンではなくトーヤを好きになったのだろう。


 なんてことはない。幼い頃からの変わらぬ恋心。そう、私は天神党夜のことが昔から今まで好きで好きでたまらないんだ。決して口に出して言ったこともないし、これまでこんなに自分と向き合ったことすらなかった私だけど、今なら言える。


 天神党夜が例え能力者だったとしても変わらない。私、平塚紫は天神党夜に恋をしているんだ。


 だからあの時はキュンとした。死ぬかと思った私に寄り添って、必死な顔で心配してくれるトーヤが。私のために怒ってくれたことが。


 なら、そんなトーヤのために私ができることはなんなのか。そんなことは分かりきっているし、結論は出ている。


 待つことだ。トーヤが真実を伝えてくれるその時まで。私が知らないところで、どんなことに巻き込まれ、どんなふうに立ち回り、どんな解決に至ったのか。


 そんなトーヤが経験した武勇伝を交えて、話してくれる時をただじっと待てばいい。いつになるか分からないけど、待ち続けようと思う。


 そして、トーヤが打ち明けてくれた時に私も心の中を晒そう。等価交換ってわけじゃないけど、きっとそのタイミングなんだと思う。私の気持ちを伝えるタイミングは。


 待つことしかできない私だけど、応援はしてもいいよね。だから頑張って。トーヤが必死になるのはいつだって他人のためだもんね。


 頑張れ、トーヤ。でも無理はせず、必ず帰ってきてね。ジンと私はいつまでも待ってるから。









読んでいただきありがとうございます

誤字・脱字などがありましたら教えていただけたら幸いです


次回更新は未定です

過去編に入っていこうという予定でしたが、中々進まず……

完結させるつもりだったのですが、出来るか怪しくなって参りました

見切り発車だったことが尾を引いているようで

過負荷粒子や能力についての設定があやふやだったり、伏線(だと思ってるもの)を回収できてなかったり……

一先ず休止の方向を考えています


これまで読んでくれた方、ブックマークをしてくれている方、ポイントをつけてくれた方、感想をくれた方

本当に申し訳ありません

そしてこれまでありがとうございました


いつになるか分かりませんが時間が出来れば初めから構想し直したいとも考えています

この作品には思い入れがあり、もっと良いものにしたいという意欲があるからです

その場合はまたマイページにて活動報告を上げる予定ですが、

そうなってもこの作品は消すことなく、新甘党な俺〜(仮)という形で出そうかなと思ってます

折角頂いたみなさんの評価を残しておきたいからです

ですので改稿ではなく、新しくと考えています


勝手なことで本当に申し訳ありません

党夜たちが戻ってくることを待って頂けたら嬉しいです


維神真姫

2016/9/17

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