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第64話 見えそうで見えない関係




「次左です」

「突き当りを右に」

「その信号を右折してください」


 党夜が目的地への道筋を逐一玲奈に指示する。そして玲奈は党夜の指示に従い、車を走らせる。ちなみに、玲奈も真冬と同じく自動運転には頼らず、自らハンドルを握って運転している。


 忘れた人も多いかもしれないので追記しておこう。今や自動車はほぼオートメーション化しており、走行中基本的に運転手も乗ってるだけである。ハンドルもブレーキも自動で行われるので運転手の役目は目的地の設定で終えてしまう。GPSの精度も上がっているため正確な位置情報を入力することができるのだ。


 乗っているだけで目的地に着くので居眠り運転は過去の異物となり、ブレーキの自動制御で衝突事故もほとんどなくなった。よって多くの人が自立運転システムの虜となり利用することになった。


 しかし一部では、オートではなくマニュアル運転をする人も少なからず存在する。運転好きから言わせれば自立運転システムなんて邪道であり、不必要なものなのだ。自分で運転することに楽しみを感じる、それが車好きと呼ばれる人種である。真冬も玲奈もまさにそれ。但し、マニュアル運転であっても衝突の危険を察知し次第、自動ブレーキは機能する。


 自動車がオートで運転してくれるからといって誰でも乗れるわけではない。従来通り、車を運転する(実際は運転してもらう)ためには免許証が必要なのだ。免許証を取る方法も変わっていない。


 そして無免許運転は原則的に出来なくなっている。今の車には免許証を読み込む機械が導入されており、正式な免許証を読み込まないとエンジンが起動しないよう造ることを義務付けられているからだ。免許証の偽造や読み込み機の改造も原則的に不可能とされている。以上。


 駅に近づいているので、自然と人通りが増えてくる。しかし目的地は駅ではない。見えてきたのは学生や主婦が多い商店街。車のままでは入れないので、脇道に逸れて小道から目指す。コインパーキングに車を止めて、あとは徒歩で向かった。


「ここです」


 党夜が指差す方には一件の喫茶店が。その名は“甘味処良田屋”。


「喫茶店か。ここが案内したい所か?」

「はい。せっかく玲奈ちゃんには美味しいラーメン屋を教えてもらったんで、お返しに俺のオススメのお店を紹介しますよ」

「先生をちゃん付けで呼ぶな」


 扉を開くとカランカランと鈴の音が鳴り響く。これもまた喫茶店の醍醐味か。党夜が中に入っていく。


「いらっしゃいませ……あれ?党夜くん?お久しぶりね」

「最近忙しくてなかなか来れなくてすいません、奈々さん」

「学生さんが忙しいのは仕方ないね。お姉さんが大目に見てあげる。今日は一人?」

「いえ、入ってきてください」


 出迎えてくれたのは現役大学生でここの看板娘こと、良田奈々(よしだなな)。ミス平塚ヶ丘にも選ばれたこの辺り一帯ではかなりの有名人。そして党夜に呼ばれて、店の外観を観察していた玲奈が店内へと足を踏み入れると。


「いらっしゃいませ……って玲奈ちゃん先生!?」

「ん?良田か。懐かしいな。それより先生をちゃん付けで呼ぶな!」

「うわぁ、ホント久しぶり!玲奈ちゃん先生の()生徒なんで時効でーす」

「え!?ちょっと待って……二人って知り合いなんですか?」


 奈々と玲奈がまさか知り合いだとは思ってもいなかった党夜は、二人のやり取りにびっくりしてしまった。不意に先程あった、ラーメン屋での玲奈と大将のやり取りを思い出す。


 会話から奈々が玲奈の教え子であることは容易に想像できるのだが。


「あれ?党夜くんに言ってなかったっけ?私、平塚ヶ丘高校のOGだよ」

「えぇぇ!?そうなんですか?奈々さんって俺の先輩だったんですね」

「えっへんっ!頑張り給えよ、天神後輩」

「いきなり、先輩感出さないでくださいよ。反応に困ります」


 胸を張ることで大きく実った奈々の胸が白のブラウスを押し上げられる。薄っすらと浮かび上がる水色の何かは見なかったことにしようと思う党夜。いつも通りの奈々のお茶目さが出たところで、店の奥から一人の男性が顔を出した。


「奈々!いつまでお客さんと立ち話しているんだ。早く席にご案内しなさい」

「は~い、お父さん。じゃあこっちにどうぞ」


 奥から出てきたのは奈々の父親であり、この店のマスターである|良田禅三郎(よしだぜんざぶろう)だ。なんだか党夜が紫を連れてきた時とほぼ同じ光景を見た、所謂デジャヴに感じる。


「禅さん、お邪魔してます」

「いらっしゃい党夜くん。今日も女性の連れかい?」

「いつも女性を連れこんでるみたいな言い方やめてください。親娘揃って俺をイジらないでくださいよ」

「すまんすまん。で、今日は……っ!?まさか君は玲奈くんか?」

「お久しぶりです。禅三郎さん」

「「え?二人共知り合いなの?」」


 綺麗に党夜と奈々がハモる。党夜からすれば、玲奈と禅三郎が知り合いであったことは、奈々と玲奈の関係よりも驚きは大きかった。加えて、奈々も同時に驚いていることから、奈々も父親と恩師が知り合いであったことを知らなかったことを意味する。


 たった四人が集まっただけで、これまで明らかになっていなかった何かが紐解かれていっている。そう錯覚してもおかしくない。寧ろ偶然が招いたのかも怪しく感じるほどに、入り混じった関係性は歪だった。


「お父さん、玲奈ちゃん先生とどういう関係?」


 真っ先に口を開いたのは奈々だった。その言葉からは何やら的外れな想いが含まれているように感じる。禅三郎も娘のそういった機微に気付き、娘が求めている答えを提供した。


「玲奈くんとは昔からの知り合いに過ぎない。言っちゃあ、腐れ縁だ。お前が考えているような関係ではない。それに玲奈くんには――」

「禅三郎さん、昔のことはいいじゃないですか。全て終わったことですから……」

「……すまない。それではまだ?」

「これは私が抱える問題です」


 有無を言わさぬ玲奈の言葉に禅三郎は黙るしかなかった。目の前で交わされた会話から、奈々も父を疑うことをやめたが何やらすっきりしない。


 党夜もまた霧のかかった森に彷徨いこんだ感覚に陥った。見えそうで見えない。だからもどかしい。何だか他人事ではないような、直感的にそう感じた。


 そして何よりも玲奈の表情からは後悔や自責の念が僅かに見られたから。容易に踏み込んではいけないであろう玲奈の過去を垣間見て、党夜はどうすることもできなかった。


 その後、党夜と玲奈は席につくもコーヒーを一杯飲むと良田屋を後にした。何とも言えない空気に耐えきれず、長居することは躊躇われ、党夜と玲奈はここで別れることに。今日の午後の補習は中止になった。


 帰り道、党夜はまだ高い太陽を見上げ思う。自分は知った気になっていただけなのだと。今日だけで水無月玲奈という女性の教師以外の顔を見ることになった。


 時間の問題だったなどと言うつもりはない。教師と生徒の関係など千差万別であるが故に、私情まで共有する実用性があるわけではない。


 ただ、能力者として、DoFの力を引き継いだ者として悩んでいた党夜を導いたのは紛れもなく玲奈だった。教師と生徒の枠からはみ出した問題を共有していたのも事実であり、党夜は玲奈を信用していた。


 裏切られたと感じたのは党夜の身勝手な思い込みであって、玲奈を責めるのは見当違いである。そんなことは党夜も重々承知なのだが。


 それでも、悩みを聞いてくれた相手の悩みを、悩みでなくとも愚痴でもいいから、話し相手でもいいから頼ってくれても良かったのではないか。党夜はやりきれなく、己の表現力では表し得ない感情に(さいな)まれた。


 党夜が感傷に浸りながら、帰宅していた最中、ポケットの中でスマホが震えた。画面を見ると“真冬さん”の文字が。真冬からの着信だった。


「もしもし天神です」

『党夜くん、いま何処にいるぅ?』

「えっと、最寄駅近くの商店街ですけど……」

『なら良かったぁ。今から来れるぅ?』

「はい、大丈夫です」

『なら至急来て頂戴』


 用件を言い終えると真冬は電話を切った。なんだか分からないが、急用があることだけは理解できた党夜は回れ右をして、駅と向かった。


 



〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜





「スバルくんとの連絡が途絶えましたぁ」


 銀の弾丸の拠点となる“SILVER MOON”の地下施設に招集された党夜。集まったのは、以前風縫抗争で招集された時に使われた会議室で、集まった面々もその時と同じ。


 席順は上座の古夏真冬から時計回りに姉川未桜、七瀬涼子、天神党夜、八頭葉聖、水無月桃香、明日原飛鳥。今回もやはり粟岐月夜見の姿はなかった。銀の弾丸としては、他の孤児たち同様、月夜見は保護対象として見ていることが伺える。


 全員が揃ったのを確認した真冬がこう切り出した。しかし、党夜は瞬時にその重大さが如何なるものかピンとこない。


 それもそのはず。銀の弾丸の裏方であり、実力は組織内でもトップクラスである九里山スバルという男の存在は知っていたとはいえ、未だに会ったことがなかった。涼子もまた同様だ。


 ただ、招集される程の案件であることは分かる。真っ先に反応したのは桃香だった。


「連絡が取れない?私が言うのも何ですが、先生はマメに連絡を取る人じゃありません。その辺りは抜けてるというか……報告のし忘れも多々ありました。これまでだって何度か連絡が取れなくなったことだってありますし……」

「桃香の言う通り。スバルは仕事が絡まなくなれば、姿をくらますし、連絡がつかなくなるのはいつものことだ。それにアイツが事件に巻き込まれるなんてヘマはしないし、巻き込まれても切り抜けるだけの力もある」


 桃香の意見に賛同したのは、未桜だった。その言葉からは九里山スバルの力量に対する絶対的な信頼があった。暫定的な未桜の弟子のような位置にいる党夜と涼子は、未桜の言葉だけで会ったこともない男の強さを垣間見た気がした。


「私だってプライベートまでとやかく言うつもりはないわぁ。彼は極力人と関わることをしないし、好まないから有事以外連絡がつかなくても構わないと思ってるぅ」

「それって今が有事ってことですか?でも、今任務は特にないですよね?」


 ここで初めて飛鳥が口を開いた。飛鳥もまたスバルの働きをよく知っている。スバルに頼る時はかなり大事であるか、大事にしまいと動くときかだった。


 真冬が今スバルと連絡を取れないことに危機感を覚えている、つまりそれは何か大事が起きようとしているのだろうと読んだのだ。

しかしその読みは正しくなかった。


「そうじゃないのぉ。彼は任務中に連絡が途絶えたの」

「なんだと……!?」

「先生が……嘘っ!?」

「あのスバルさんが?」


 真冬の告白に未桜、桃香、聖が驚きの声を上げる。誰もが驚きを隠せない様子だ。


「そんなまさかですよ。あの人に限ってそんな……報告義務を怠ってるんでしょ、きっと」

「飛鳥ちゃん、残念だけど今回ばかりはそんな楽観視できる状況じゃないのぉ」

「!?」

「どういうことが真冬。きちんと説明してもらおうか」

「ええ……そのつもりよ」


 党夜と涼子を除く、皆が驚きを隠せない中、真冬が説明のため言葉を紡ぐ。


「今回、スバルくんに頼んだ任務はある男についての捜査」

「ある男?」

「その男はこれまであらゆる事件の裏側で暗躍していた危険人物なのぉ。ここ最近でなら、風縫抗争もその一つね」

「「…………」」


 誰もが息を呑む。記憶に新しい風縫抗争。あの事件を裏で手引きしていた者がいるなど思いもしなかった党夜。単に組織間の抗争事件ではなかった。何者かによって仕組まれ、意図的に引き起こされた抗争。


(その男のせいで陣が巻き込まれたっ!!)


 党夜の考えは甘く、安直なものだったが、間違いではないだろう。縫戸側の風霧への鬱憤が吐き出されるのは時間の問題だったのかもしれない。それでもタイミングというものがある。少なくとも、その予定を繰り上げたのはその男があったからなのは間違いない。


「加えて、月夜見ちゃんのこともその男が噛んでいるわぁ。というよりも指揮を取ってたらしいわぁ」

「それ、本当ですか!!」


 流石に黙ってられなくなった党夜。月夜見の事件、日向モールの一件を党夜が忘れるはずがない。我を忘れる程に激昂したあの事件。目の前で幼馴染の平塚紫を失いかけたあの情景がフラッシュバックし、一気に頭に血が登る。


「落ち着け、党夜!まだ話は終わっていない」

「でも姐さん……」

「真冬、続けてくれ」

「……既に鋭い人は気がついていると思うけど、その男は私達がこれまで敵対してきた組織の幹部、それもボスの側近とも言われる人物よぉ。涼子ちゃんには耳が痛い話かもしれないわねぇ」

「私は大丈夫ですから……」


 涼子が以前加入していたのが正に、その組織の末端。涼子にとっては消し去りたい過去であろう。それ故の真冬の配慮だった。


「その男の名は東雲(しののめ)。本名なのかは定かではないけど、スバルくんの情報だとコードネームという話だったわ」

「東雲……その名前どこかで……」

「党夜、知ってるんっすか?そいつのこと」


 聞き覚えのある名前。でも、どこで聞いたのか思い出せない。もう少し、何かきっかけがあれば出てきそうな、喉に小骨がつっかえたような不快感。


 能力者であることは間違いない。ならば、ここ最近で聞いたはずだ。それでも、霧は晴れない。どうしても思い出せない。しかし、そのきっかけ、と言うよりも寧ろほぼ模範解答が提示された。


「一度、あったことがあるよね?涼子ちゃんと戦って、鎖使いくんを倒した廃墟でね」

「あっ!あの時の……でも、なんで真冬さんがそのことを?今の今まで忘れてて報告してなかったのに……」

「本来はこういった重要なことは即時即座に報告するべきよぉ。まあ状況が状況だったし、仕方ないわぁ。私が知ってるのは、スバルくんから報告を受けたから。あの時、スバルくんは東雲を追っていたのぉ。結局、逃げられちゃったんだけどねぇ」


 そう、党夜は東雲本人からその名を聞いていたのだ。東雲の能力と思われる何らかの力によって地面に這いつくばらざるを得ない屈辱的な体勢で。


 涼子の電撃そして相模の鎖攻撃を受けた傷を癒やしてもらったとはいえ、万全とは程遠い状況で対峙していたのだ。傷は癒せても疲労や心労までは完治できない。なんせ、あの時が党夜の初陣でもあったのだ。その精神的負荷を踏まえても抗える余地はなかった。


 東雲はスバルに追われつつも、党夜との接触を優先したことになる。スバル程度なら撒けると踏んでいたのか、それともスバルの追跡よりも優先順位が高かったのか。それは党夜には解らない。


 でも、わざわざ接触を図ったからには何か理由があるはずだ。相模を回収するだけとは到底思えなかった。


 今なら解る。党夜も涼子も満身創痍な状態で、東雲が姿を表し、しかも名乗る利点などないに等しい。裏があると深読みしたくなるのは当然だろう。それは真冬も同じようで。


「なんで東雲が党夜くんに接触したのかは解らないわぁ。でも、何か理由があるとしか思えないのぉ、それもきな臭い理由が」

「確かに。スバルに追われても尚、寄り道をするぐらいだからな。それで真冬、私たちはどうするんだ。いや、どうするべきだ?」

「集まってもらったのは、スバルくんが消息を経ったことを伝えるため。今後出来るだけ単独行動を控えるように促すため。あと桃香ちゃん、あなたには外出の禁止を通告するためよ」

「な、なんで!?こんな時に!?」


 未桜の問いかけに三つの理由を述べる。その理由の一つに桃香が反発する。しかし、そのことも真冬は想定済み。


「あなたがスバルくんを探そうとするのは目に見えてる。正直に言うわよぉ。桃香ちゃんではこの事件は解決できない」

「だから黙って先生の帰りを待てって言うんですか!?先生が今何処で何をされているか解らないこの状況で!?そんなの無理に決まってます!私は先生から正義を学びました。正義は自分のためではなく、大切な人のために尽くせる心だと教わりました。今まさに正義を体現する時じゃないんですか!?先生を救うために正義を振りかざす時じゃないんですか!?」


 真冬の言論でさらに熱くなる桃香。この中では最年少である桃香。党夜も涼子も付き合いは短いが、ここまで声を荒げた桃香を見たことがなかった。年下ではあるが、いつも落ち着いている少女という印象しかなかった。


 誤認していたのだ。桃香の本質を。桃香とスバルの関係性を。桃香にとってスバルがどれほど大きな存在なのかを。


「あなたの掲げる小さな正義では、あなたが思う結果は得られません」


 しかし、真冬から告げられたのは冷たい一言。いつもの伸びきった甘い口調ではない。表情も同じく冷たかった。たったそれだけの変化で加熱してきた空気が一気に冷えきったのだと、集められた面々には解った。もちろん桃香も同様に。


「何時まであなたはスバルくんの足を引っ張るつもりですか?」

「足を引っ張るなんて……」

「そうでしょう?今も輪を乱したのは桃香ちゃんではなかったですか?スバルくんが今どうなっているか解らない、そういったのは桃香ちゃんでしょう?みんなそんなことは集められ、議題が上がった時点で解っているんです。それに私がいつスバルくんを見捨てると言いましたか?」

「それは……」

「いいですか。桃香ちゃんの能力は貴重なんです。相手の能力情報を根こそぎすくい取る力なんて他にはないんですよ。しかも、その発動条件が緩い。自分がどれほどの戦力か理解していない証拠です。加えて、その力が捜索向きではないことを理解できない程馬鹿ではないはずです」

「………」

「未桜の問いに答えます。今後の“銀の弾丸(シルバーブレッド)”としての意向は、九里山スバルの捜索と保護。相手がどんな手を打ってくるか解らない今、単独行動は禁止します。もちろん、桃香ちゃんは先ほど行った通り、外出を禁止します。いいですね?」

「はい……」


 真冬に説き伏せられた桃香はさっきまでの勢いはなく、ただ返事をし、俯いていた。党夜には桃香の気持ちがほんの少しだけ解った。大切な人がいなくなっているのに、自分の無力さ故に何も出来ない。そんな自分が不甲斐なく、許せない。


 自分だったら抑えられるだろうか。いや、無理だ。実際に以前銀次の件で耐えきれなくなった党夜は飛び出したのだ。その点、桃香の方が大人だと言える。桃香は自分の心を必死に抑え込んでいる。そんな桃香の様子を党夜は見てられなかった。


(俺は何をしてやれるだろうか……俺には何ができる……)


 ただただ自問自答を繰り返すことしか出来ず、答えが見当たらない。そんな中でも会議は進み。


「動くのは、姉川未桜、明日原飛鳥、八頭葉聖の三名。以上三名は作戦行動中は常にともに動くこと。残りの水無月桃香、七瀬涼子、状況が動くまで待機。天神党夜はこれまで通り日常を過ごすこと。勝手な行動は慎むように。いいですね?」

「「「「はい」」」」


 特にこれといった何かもなく、この場は解散となった。





読んでいただきありがとうございます

誤字・脱字などがありましたら教えていただけたら幸いです


第65話は来週土曜日18時投稿予定です



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