9話 実力
俺は今、ホーミ・フレッチェ学院長と共にGクラスに向かっている。俺の手には布に包まれた“黒龍”を持っている。“黒龍”は戦闘の時以外はいつも布に包んである状態だ。
そして、歩くこと数分………。
「着いたぞ。」
(ここがGクラス………。)
ホーミ学院長はGクラスの扉をノックしてから開けた。
「失礼する。アリー先生少し時間を貰えるか?」
「はい、いいですよ。」
「ありがとう。」
ホーミ学院長は礼をアリーと呼ばれる先生に言った後教壇に立った。
「学院長がこんな落ちこぼれクラスに何のようだろう?」
「さぁ。」
クラスの生徒達がざわつく。
「静粛に!」
学院長のその一言でクラスは静まり返る。
「今日は編入生を連れてきた。」
「編入生?」
「この時期に?てか、このクラスに?」
「どんな人ー?」
クラスの生徒達はどんな人がくるのか気になっているみたいだ。
「では、紹介する。入れ。」
「はい。」
俺は右足を教室の中へと入れる。
そして、俺の顔を見た生徒達が様々な感想を述べる。
「彼の名は内田諒。東洋人だと思われる。皆、仲良くしてやってくれ。あ、ちなみに彼は魔法使えないから。」
『!!!!』
おっ、皆驚いてる。面白い!
「え?んじゃ、私達よりも下ってこと?」
「てか、魔法使えないからここに来たんだもんね。納得できる。」
「その前に魔法使えない奴とかいんの⁉︎俺達が言えねぇけど。」
また、騒がしくなったか……。ん?ドアの向こうから気配が。
「誰だ!」
俺が放った一言でクラスの全員が驚いた。だが、次の瞬間、教室のドアが開かれる。
———ガラガラ
「おいおい、あれって天照院晴香じゃねーか。」
「こんなクラスに何のようだろ?」
「あなたが編入生ですか?」
「あぁ、そうだが?あんた誰?」
誰?と俺が聞いた瞬間、クラスの全員が再び驚いた顔をする。
「あの天照院家を知らねーのか?」
「あぁ、誰それ?」
「天照院家はこの世界の二大院家何だよ。でも、何で君は知らないのだ?」
学院長が俺に聞く。俺は簡潔に答えることにした。
「あぁ、俺はあんまりそういうの興味ないから。」
そう答えた瞬間、天照院晴香と呼ばれた生徒の方から何かが切れる音がした。
———ブチッ
「貴方、今、私に興味ないと言いましたね?」
「いや、俺が言ったのはそういう権力とかが興味ないって言ったの。」
「それは私に対する侮辱ですか?」
「あれ?話聞いてた?」
「私、Sクラスの天照院晴香はGクラスの貴方に勝負を挑みます!」
「はぁ⁉︎俺はやらねぇぞ!」
「逃げるんですか?」
「いや、てめぇと戦う意味がねぇっていってるんだ!」
「それとも貴方は女子に負けるのが怖いというのですか?」
「あぁ?んなわけねぇだろ!」
「じゃあ勝負してはっきり決めましょう!」
「いいだろう。後悔さしてやる!」
俺は何故か編入初日に勝負をすることになった。てか、何で初日に勝負するんだよ!騎士学園の時と一緒じゃねぇかよ!てか、クラスの奴らうるせぇ!さっきからなんだ!
「瞬殺だな。」
とか、
「死んだな。」
とか、
「ご臨終です。」
とか、ってか全部死んでることになってる?まぁ、いいや。絶対後悔さしてやる。
☆★☆★☆★☆★
はぁ、何で俺ここにいんだ?
諒は今フィールドの上に立っている。何故かと言うと、この目の前にいる女のせいだ。
観客は全校生徒いる。皆からしたら、ストレス発散だと思っているだろう。
「さーて、本気を出しましょうか?それともいたぶったほうがいいでしょか?」
「本気でいいぜ。」
本気を出すか、いたぶるか聞いてきたので俺は簡易に答えた。
『さぁ、始まりました!今日の模擬戦、第一回は、Sクラスの天照院晴香さんと、今日編入してきた、内田諒さんです!』
実況が俺達を紹介したあと、天照院が俺に聞いてきた。
「貴方、武器はいらないのですか?さっきあったでしょ?」
「あぁ、いらね。てか、てめぇなど、素手で充分。」
「ほんと!!貴方はどこまで私を侮辱したら気が済むんですか!Gクラスの分際で!」
「んー、だって負ける気がしないし?」
「じゃあ、貴方が勝ったら私は何でも貴方の言うことを聞いてあげるわ!でも、もし貴方が負ければ貴方は一生私達天照院家の奴隷になってもらいます!」
「あぁ、いいぜ。」
俺と天照院はそんな会話をしている中、ホーミ学院長とアリー先生もまた、会話している。
「アリー先生、彼の事どう思います?」
「どう思いますとは?」
「さっき、クラスにいたとき、彼女は姿を見せていなかった。それに完璧に魔法で気配を消していたはずだ。なのに、彼は見破った。」
「私もそれは薄々おかしいと思ってました。」
「彼は一体何者なんだ?」
「調べますか?」
「あぁ、頼むよ。」
「分かりました。」
声が小さすぎて何を言っているのか分からなかった。まぁ、いいか。とりあえず今はこいつだ。
『さぁ、では始めますよー』
「あぁ。」
「えぇ。」
『それでは、レディーゴー!』
実況が開始の合図を言ったあと、天照院は何かを唱え始めた。
「太陽の神よ、我に力を。そして、敵に罰を………」
そう唱えると、観客から色々な声が聞こえる。
「あぁ、あの技か。あの編入生終わったな。」
「どんまいだな。これであいつは一生天照院家の奴隷だな。」
うるせぇな。まだ終わったとは限らねぇだろうが。そう思っていると、天照院は技を繰り出すため俺に向かって最後の言葉を放った。
「“天照”!」
そう唱えると、俺の頭上から特大の光線的なものが落ちてきた。
———ドッゴォォォォン!
会場にもの凄い音が響く。
天照院は勝利を確信し、会場を後にしようとするが、
『おや?彼は一体何処に消えたのだ?塵となって消えたのか?』
実況がそう言った途端、天照院は驚いた表情を浮かべる。そしてこう言った。
「塵になるほどやっていないわ!じゃあ、何処に⁉︎」
「後ろだ。」
天照院のうしろから男の声がする。天照院が振り返ると、そこには内田諒が立っていた。
「え?」
おもわず、驚いたような声をだす、天照院。それは会場にいた人達、全員が一緒のようだ。
「おい、あいつ天照院さんの攻撃くらったよな?」
「あ、あぁ。けど、あいつ無傷だぜ?」
「どうなっているんだ?天照院さんのあの技を魔法も使えないGクラスの奴が、何故無傷なんだ?」
全校生徒だけでなく、先生も驚いていた。天照院は唖然とした顔で俺に問いかける。
「貴方、一体何を……?」
「そうだな、いいもの見せてもらったし、教えてやるよ。」
俺は、俺が何をしたのか答えてやる事にした。
「俺はこの世界で言う魔法は持っていない。だが、俺だってできることぐらいある。剣術、体術、忍術、フリーランニングとかな。まぁ、忍術は隠密行動をするためなどで使うから技なんてない。フリーランニングも、ほとんど俺の忍術と一緒かな?あ、あとクラスにいたときに、あんたがいたのが分かったのは気配察知能力かな。忍術との組み合わせもあるぜ。」
「貴方、一体何者?」
「んー、面倒なことになるから秘密で。」
そういい俺は再び天照院から距離を取る。そして距離をとったいちから、彼女を睨む。彼女は怯えているようだ。そんな彼女に俺は喋りかける。
「俺はこんなとこで負けてたらあいつには一生勝てないと思ってる。だから、俺は容赦しねぇぞ。」
そういい、俺は一気に間合いを詰めていく。そして、彼女の背後に回り、手刀で気絶させた。
「おっと。」
俺は気絶した彼女の体を支えゆっくりと地面に横たわらせた。