8話 覚醒と言う名の暴走
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「この寒気………。2年前と一緒だ………。諒がブチ切れてる……。」
「この殺気は確かにやばい……。」
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———国軍本拠地
「何今の寒気!」
「わかんねぇよ!けど、近くからじゃねぇな。」
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諒が放った強烈な殺気が世界の人々を震わせた。
———国立騎士育成学園
俺はあの時と同じ状態にある。覚醒………。いや、暴走と言った方がいいのだろう。
諒が暴走して、たった10分で十万の敵兵士が全滅した。残ったのは諒の目の前に立っている黒騎士のみだ。
「てめぇ………、何が目的だ?何故この学園に来たんだ?」
黒騎士は何も喋ろうとしない。
「おい………、何でなんだ?答えろよ!!!」
何も答えない黒騎士に諒が怒声をあげる。
そんな黒騎士に諒は斬りかかる。
———キンッ!
諒の刀と黒騎士の剣が交じりあう。諒はすぐさま黒騎士と間合いをあける。
「一刀流居合————“影月”!」
諒はすれ違いざまに“影月”を放つが、黒騎士に防がれてしまう。
「くっ!防がれたか!一刀流“斬光”。」
諒は“斬光”を放つ。だが、またしても黒騎士に防がれる。その後何度も技を放つ諒だが、黒騎士に全て防がれてしまう。
「くっ、何故当たらない!こうなったら………。」
諒は技を放つ為に刀を一度鞘に納め、構えをとる。
「一刀流奥義、“黒武”!」
だが、奥義である“黒武”さえも黒騎士は防ぐ。そして、初めて黒騎士が諒に攻撃を仕掛けた。
「がはっ!」
黒騎士は剣の柄で諒を思いっきりぶん殴る。くらった諒は数メートル飛び、校舎の壁にぶつかる。すぐに起き上がるも、黒騎士が再び攻撃をしてきて、諒は何も出来ない。
(くそっ!くそっ!何故当たらない!何故こんなに強いんだ!)
諒は心の中でそう嘆く。だが、目の前には黒騎士が迫ってくる姿が見える。そして………。
———ザシュッ!
諒の肉が切れる音がした。
その後も、黒騎士は容赦無く諒を斬る。
(俺……ここで死ぬのかなぁ………。華恋との約束、破っちまうなぁ。)
そう思っていると、黒騎士の攻撃がピタリと止まった。そして、次の瞬間諒は目眩に襲われた。
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諒が“影月”を放ったあと、私の周りから驚いたような声が漏れる。
「内田の奴………、速すぎだろ……。」
「それに、防がれましたけど、あの居合い斬りもすごいです。」
など、聞こえてくる。
再び諒は技を繰り出す。そして、黒騎士に防がれる。その攻防が私達の目の前で行われている。そして、彼が奥義の“黒武”を繰り出した。
「諒………。」
私は思わず呟いてしまう。
諒は奥義である“黒武”すらも止められた後、黒騎士の猛攻撃の餌食となる。だが、黒騎士の手は途中で止まった。
「おい、黒騎士の奴止まったぞ?どうしたんだ?」
康太君がそう呟いたその瞬間、諒の周りの空間が歪み出した。黒騎士の方を見ると、黒騎士の周りの空間も歪んでいるのが分かった。
次の瞬間、諒と黒騎士はその場から姿を消した。
「諒!」
驚いた私は諒の名前を叫ぶ。
「あれ?諒は?諒はどこ?」
私は狂った様に諒を探す。そんな私を見た皆が「落ち着け。」と言って私に声をかける。けど、その瞬間、私は気を失った。
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(ここは何処だ?俺、さっきまで学園にいたよな?てか俺、何してたんだっけ?あぁ、そうだ。黒騎士と戦ってたんだ。けど、いきなり目眩がして………、わかんねぇ!)
俺は必死で心を落ち着かせる。
すると、こっちに駆け寄ってくる人の姿が見えた。
「き………、だい…………か?」
はっきり聞こえない。そう思ったその瞬間に俺の意識は途絶えてしまった。
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俺は眠りから覚めると、ある部屋にいた。周りを見ると、勉強机と、俺が着ていた制服があり、床に小さいテーブルが置いてあった。そして、そのテーブルに置き手紙があった。その置き手紙には、
『起きたら学院長室に来い。』
と、書かれていた。
俺は着かされていた服を脱ぎ制服に着替える。
そして、学院長室に向かうため、準備をしていた。だが、ある異変に気付く。
(あれ?俺の“黒龍”は何処だ?)
そう、思ったとき、置き手紙が目に入った。置き手紙の下の方にはまだ、何か書かれていた。
『P.S.君の武器は預かってある。』
それをみた諒は安心する。そして、部屋を出た。部屋を出ると別の制服を着た生徒が何人かいた。
その生徒達は俺を見ると、何だか怪しい目で俺を見ている。俺は、学院長室に向かおうとしていた為、そんな視線を無視して、寮らしき場所を出た。
一時間程歩くと学校の校舎らしき建物が見えた。本当のところは寮を出て、10分で所にあるのだが、俺は寮を出るなり、校舎とは別の方に歩いていた。そして、やっと辿り着いた学院の校舎を見て安堵する。
(やっと着いた。)
そう、思っていると、学院の先生らしき人が俺の方へと近づいてきた。
(な、何だ?)
「貴方ね?道で倒れていた子って。」
そう聞いてきたが、俺はあの時何処にいたかすら分かっていなかった。
「わからないですけど、多分俺です。」
そう返すとその、先生らしき人が「着いて来なさい。」と、言ったので、俺はその後を着いて行った。
———コンコン
「学院長、連れて来ました。」
「はーい、入ってー。」
部屋の中から返事が返ってくる。その返事を聞いた先生らしき人がドアを開け俺を中に入れる。中には学院長らしき女の人が椅子に座ってデスクワークをしていた。
「では、学院長、私はこれで。」
「あぁ、ご苦労だった。」
先生らしき人が学院長にそう言うと部屋を出て行った。そして、学院長は俺に話かける。
「君の名前は?」
「俺は、内田諒と言います。」
「内田諒……。東洋人か。私はこの学院、アブェルート学院の学院長をしているホーミ・フレッチェだ。」
「日本人ではないのか⁉︎」
「日本人?」
「あぁ、日本人って言うのは多分さっきホーミさんが言っていた、東洋人と一緒だと思います。」
「そうか。所で君は、どうして道で倒れていたんだい?しかも、あんな重傷で。魔族にでもやられたのか?」
「魔族?そんなのいなかったけどな?」
「何を言っているんだ、君は?この世界に魔族がいない訳ないだろ。」
俺にはこの人が何を言っているのか、分からなかった。次の言葉を聞くまでは。
「それより、君はどんな魔法が使えるのだ?」
「!!!!ま、魔法?」
「何故そんなに驚くんだ?この世界で魔法を使えるのは当たり前だろ?」
「え?俺、魔法何か持ってません。それに俺の学園では魔法を使える者などいなかったはず……だと、思う。」
「はぁ⁉︎魔法が使えない?あぁ、なるほどだから道で倒れていたのか。魔法が使えなくて家を追い出され、挙句の果てには魔族に襲われた。大方、そんなとこだろう?」
「いえ、違います。俺は確か、戦っていたんです。そしたら急に目眩がして、気が付くとさっきまで見てた風景じゃなくなってた。」
「?訳がわからないぞ?それに、誰と戦っていたんだ?いや、やっぱりいい。ところでこの武器は、東洋で言う太刀だろ?」
「はい、そうです。」
「この刀についている血は全部君が?」
「えぇ、まぁ。」
「う〜ん、とりあえず。今日から君はこの学院にいてもらう。」
「俺は早く戻らないと行けないとこが………」
あるんです……。そう言おうとしたが帰る方法もわからない。もし、ここが俺のいた世界じゃないとすると、しばらくここにいたほうがいいのかもしれないと思った。
「?どうした?」
「いえ、何でもないです。」
「そうか、わかった。じゃあ、取りあえず、君は魔法が使えないってことだし、Gクラスに入ってもらう。ちなみにGクラスは落ちこぼれクラスなんだが………。」
「つまり、1番下のクラスってことですね?」
「あぁ、申し訳ないけど。」
「いえ、別にいいですよ。」
「そうか、ありがとう。それとこの学院のクラスは8クラスある一番上はSクラス。そこからアルファベット順となる。」
「分かりました。」
「では、早速クラスの方に行くぞ。制服は………。」
「このままでお願いします。」
「分かった。」
制服のことは学院長は了承してくれた。そして、部屋を出る際に“黒龍”も返して貰った。いつものように布掛けて……。
異世界編に突入です!やっぱりちょっと早い気がしますけど、まぁ頑張ってかきますんで今後とも、宜しくです!