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7話 本気の本気

「学園長。この生徒を少しの間、お借りします。」

「あぁ、分かった。内田、くれぐれも無理はせぬようにな……。」

「はい、学園長。」


俺は今から戦争に向かう。侍七人衆&国軍VS中国、韓国、ロシア連合軍との戦いに………。


「諒君、死んだらだめだよ。」

「う、内田君……、頑張って!」

「内田、この国を守ってこい!」

「内田…、お前はこの学園の誇りだ。死なねぇ様に存分に暴れて来い!」

「内田君、華恋のもとに必ず帰ってきてあげてください。」

「内田諒君、私達はあなたを見送ることができないけど、この学園からあなたを応援しています。あなたに神の御加護があらんことを。」

「諒!いってらっしゃい!」


皆がそれぞれの想いを俺に伝える。華恋以外は会ってからそれほど時間が経っていないが心に響くものがある……。


「皆、ありがとう!必ず帰ってくる。行ってきます!」


☆★☆★☆★☆★

「そろそろ出発するぞ!」

「はい!今行きます!」


俺は杉田の元へと向かう。


「あ、そうだ。あなた方のこと、何て呼べばいいでしょうか?」

「下の名前でいいぞ。」

「俺も智和と、一緒で」

「私もー。」

「わかりました。智和さん、拓海さん、恵さん!」

「あと、分かりましたってのもやめろ。いつも通り友達と絡む様な感じでいいぞ。」

「はい……、じゃない。うん。」

「よし、それでいい!」


この人達はかなり人望があり周りから好かれる様な人達だと、俺は思っていた。


「しいて諒、さっきの作戦で上手く行くのか?」

「あぁ、最悪の事態がない限り。」


さっきの作戦とはこういうものだ……。

まず、攻めてくると言われていたところに侍七人衆の4人と国軍の3割で固める。次に国軍の本拠地を侍七人衆の1人と国軍のNo.2、No.3と国軍の5割で防衛する。最後に俺と《白龍》こと、新城昇(しんじょうのぼる)と国軍No.1、そして国軍の2割の軍勢で攻める。あと、援軍としてノーラ軍も参戦する。


「最悪の事態………、か。」

「諒、敵には黒騎士がいる………。一筋縄ではいかないぞ?」

「分かってるよ、昇。でもやるしかないんだ。例えどんな相手だろうと、叩き潰す!」

「当たり前だ。それに俺とお前がいれば負けはない。国軍のNo.1もいることだしな。」


それもそうだ。ここには俺に勝った事がある奴が2人もいるのだからな。


☆★☆★☆★☆★

———ノーラ

あれから1時間がすぎた。

場所はノーラ王国、ノーラ城。


「やぁ、久しぶり。諒!」

「あぁ、久しぶりだなエクト。」


今俺と話しているのはノーラ王国、ノーラ軍軍隊長、エクト・アートリー。ノーラ軍最強兵士だ。

ちなみに俺が電話で話していた相手はエクトだ。


「おぉ、昇までいるじゃないか!久しぶり!」

「久しぶり。元気にしてたか?」

「あぁ、君も元気にやっていたみたいだね。」


エクトの言葉に昇は小さく頷く。


「おや?そちらの方は?」

「あぁ、こちらは杉田智和さん。日本国軍最強の兵士だよ。俺を決闘で負かした人だ。」

「諒を⁉︎すごいねー。よろしく。」

「よろしく。」

「ところで奴らはもうこっちに向かって来ているみたいだよ。」

「そうか、なら準備しよう。ノーラ軍の3割は俺達と来てくれ!残りの7割は日本に飛んでほしい。」

「日本国軍の援軍か?」

「あぁ、念のためにな。」

「分かった。全員準備しろ!」

『はっ!!!』


ノーラ軍の兵士達が勢い良く敬礼をした後、自分の配置へとつく。


☆★☆★☆★☆★

諒が戦争に行ってから早一週間が経つ。先生達によると戦況はやや国軍が優勢らしい。


「諒、大丈夫かな………。」

「大丈夫だって!諒君が強いってことは華恋が1番知ってるんでしょ?」

「うん、そうだね!きっとけろっとした顔で帰ってくるよ!」

「うんうん、いつもの華恋になった。」


「が、学園長!大変です!こちらに十万もの軍勢が向かって来てます!恐らく中国、韓国、ロシアの連合軍かと思われます!」

「何だと⁉︎警備隊!戦闘準備をしろ!」

『はっ!!!』

「どういうことだ………、奴らは今国軍と戦っているはずじゃあ………。」


私は遠くでそのやりとりを見ていた。「何か会ったのですか?」と聞くと学園長が真剣な表情で話した。


「もしかしたら、国軍は全滅したのかもしれない……。」

「えっ⁉︎それってもしかして………。」

「もう帰って来ないかもしれないってことだ。」

「そんな………、諒が………、死ん……だ?」


私は学園長の話を聞いて絶望した。もう、諒はこの世にいないかもしれない。もう、私の元には帰って来ないかもしれない。そう思うとだんだん生きている意味がないと思ってきた。


「帰って来るって約束したじゃん……。」

「華恋、まだ死んだかどうか分かんないよ?もしもの話だし。」


朱里ちゃんはそう言うが彼女も軽く震えているのが分かる。だけど、次の瞬間、絶望はさらに大きくなった。


———ワァァァァ


叫び声が聞こえる。連合軍が学園に攻めて来たのだ。


「何で、何でここに攻めてくるんだよ!」

「まだ死にたくないよぉ。」


そんな悲痛の声が聞こえてくる。私はもう、叫ぶことすら出来なくなっていた。もう、死んでもいいと……思っていた。


「華恋!しっかりして!くっ、奴らがこっちに来る!皆!どうせ死ぬんだったら奴らに一矢報いようよ!」


朱里ちゃんが叫んでいる………。

何人かの生徒が私の前に立っている。


「そうだな……。どうせ死ぬんだったら………。」


皆覚悟しているみたいだ。次の瞬間、皆が連合軍に一矢報いる為に敵に攻撃を仕掛ける。何人かの敵は彼らの攻撃で倒れて行く。だが、流石に長くは持たなかった。次々に倒れて行く、まだ死んではいないが死ぬのは時間の問題だ。


「美沙ちゃん……、朱里ちゃん……、康太君……、花ちゃん……。」


この学園に入学して仲良くなった友達たちがどんどん倒れていく。


「会長………、神倉先輩……。」


そして、四人が倒された後、黒い鎧を着た騎士に会長とこの学園最強の生徒だと思われる神倉先輩までもが倒された。


そしてその黒い鎧を着た騎士が私の前に立った。そして右手に持った剣を振り下ろす———


振り下ろすと思われた剣はまだ、目の前の騎士の頭上の上で止まっていた。振り下ろされなかったのはある男の声が聞こえたからだ。

何を言っているのかは良く聞こえない。だが、私は彼の姿を見て安心した。さっきまで倒れていた皆が、立ち上がり、フラフラと私の周りに集まって来た。


「ね?大丈夫だってでしょ?華恋!」

「うん。」


けど、彼は大丈夫じゃなかった。もう、完璧にブチ切れている。そう思った瞬間に御手洗君の時以上の殺気が彼から放たれた。


「この殺気、この前のよりやべぇぞ。」


康太君が体をビクビク震わせて言った。


「諒が、完璧にブチ切れているんだよ。諒の本気の本気……。あの日と同じの……。」

「あの日?てか、あいつの本気の本気ってどう言うことだ?」

「あの日の事はまた今度話す。諒の本気の本気は普段はでないの。」

「全くわからねぇぞ。」

「要するに、本気は普段でも出せるけど、本気の本気は諒がブチ切れたときに出る状態のこと。」

「じゃあ、もし本気の本気で杉田さんと戦ったらどうなんだ?」

「あの時の諒は本気だったけど油断していた。本気の本気だと、たったの数分で勝負が決まると思う。」

「マジかよ……。じゃあ、あの騎士が倒されんのも時間の問題だな。」

「うん。でも、止めなきゃ……。私のせいで諒を暴走させたくない。」

「暴走?」


私は朱里ちゃんの質問に答えることはなく、諒に叫んだ。


「諒!私は大丈夫だから!本気の本気何て出さなくていいから!」


だが、そんな叫びも諒にはもう届かなかった。


☆★☆★☆★☆★

時は遡り、数時間前の中国。


「敵勢力の状況はどうなっている!」

「わからない。でも、未だに攻めて来ているのは変わらない!」

「諒、大変だ!連合軍の一部が学園に向かっているらしい!」


俺は唖然とした。


「それは本当か、昇?」

「あぁ、お前はすぐに日本へ戻れ。」

「分かった!」

「諒!危ない!後ろだ!」


昇がそう言った次の瞬間———


———ザシュ


肉が貫かれる音がした。その音は俺の肉の音ではない。俺は慌てて振り向く。そこには俺を黒騎士からの攻撃から守った男がいた。


「エクト!!!」

「諒、怪我は無いか?」

「俺は大丈夫だ!」

「良かった……。君は早く行くところに行け………。」

「分かった!分かったからもう喋るな!」

「君達には本当に世話になった……。特に君にはな………。君には勇気をもらった……。本当にありがとう。」

「もういい!黙れ!思い出話は後で聞くから!死ぬ前に言うような事何て聞きたくない!」

「これを妻と子供に渡してくれないか……。」

「何言ってんだ!もう死ぬみたいな事を言うなよ!」

「君にはこれを………。」


エクトは自分の首にかけていたネックレスをとり、俺に渡した。


「これは、御守りだ………。君は必ず生きろ!」

「おい、もう喋るな!」

「俺はずっと見守っているぞ……。この御守りは俺だと思ってく……れ。」

「おい、エクト?なぁ、寝てるだけなんだろ?起きろよ!なぁ!」


エクトは動かない。エクトの体はだんだん冷たくなってきていた。そして、俺はエクトがもう目が覚めないことを分かると、エクトの名前を叫んだ。


「エクトォォォォォォ!!!」


エクトは死んだ………。俺を庇って。そして俺は段々、心が死んでいく。


「黒騎士ィィィィ!てめぇだけは、許さねぇ!」


そう叫んだが黒騎士は勝負をしようとせず戦場を去って行った。


☆★☆★☆★☆★

あれから2時間が過ぎた。俺は黒騎士が去って行ったあと、何処に怒りをぶつけたらいいのかわからなくなり敵を斬って斬って斬りまくった。そして、俺の周りには俺に無残に切り刻まれた連合軍の兵士達が倒れていた。


智和さんによると日本で戦っていた拓海さんと恵さんは、


「え?全滅?そっちの連合軍が?一体何があったんだ⁉︎」

「全滅?諒君が1人で?ちょっと頭が混乱してきたんだけど。」


と、言っていたらしい。まぁ、恐らく後からいろいろと質問責めにあうと思うな。


俺は日本に着くなりすぐに学園に向かった。


———国立騎士育成学園


「何だこれは……。何故皆が倒れているんだ?康太………?美沙………?田村さん………?西条さん………?御門会長………?それに、神倉先輩まで………どう言う事だ?何故こいつらが傷付いているんだ?」


俺の怒りはさらに増した。そして、華恋の方を見ると怒りは頂点まで登りつめた。


「黒騎士ィィィィ!」


俺がそう叫んだ為、黒騎士は華恋に振り下ろそうとしていた腕を止めた。


そして、俺はその状況を見てあることを思っていた。


(あいつ……、華恋に何をしようとしていた?華恋を殺そうとしていたのか?それにこの兵士共は何故ここに来た?華恋を殺す為か?それに俺の友達も、ついこの前友達になった華恋の友達も、そして先輩も倒れている。こいつらは何が目的なんだ?)


そう、思ったその後、ある結論が俺の中ではっきりとした。


(俺はまた、失うのか?大事な友達を、華恋の幸せそうな顔を、華恋の幸せを…………。)


そして、あの日の事を俺は鮮明に思い出した。そして俺は、あの日と同じ状態になった。何も聞こえない。そんな状態だ。華恋の方を見ると、皆が起き上がって華恋の周りに集まっていた。何かを話終えると華恋が俺の方を見て叫んでいる。だが、俺は華恋の声など聞こえていなかった。


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