2話 決闘
——決闘場——
「準備できたか?落ちこぼれ君。」
「あぁ。」
「それじゃあ始めようか。」
俺は今決闘場にいる。決闘場には観客席が設けられており、フィールドと観客席は安全を考慮した特殊な強化ガラスで区切られている。観客席は1年生から3年生の生徒で埋まっている。
「きゃぁぁー、御手洗様ぁー」
「御手洗様素敵ー」
やっぱりもうファンクラブできてるし。早すぎだろ。俺には同情の目が向けられてるし………。1人を除いては……
「それでは両者前へ!」
「「はい。」」
「相手が戦意喪失及び気絶したら勝利とみなします。それと、危険だと判断したら止めに入ります。」
「分かりました。」
「りょーかい。」
俺と御手洗は立ち位置に立つ。
(御手洗の武器は太刀か。)
「おい!お前、武器は?持っているだろう?」
「あぁ、持ってるけど俺は素手でいいぜ。」
「ぷっ、マジで言ってんの?」
会場全体から笑い声が聞こえる。
「俺、そんな変なこと言ったか?」
「あぁ、言った。新入生最強の俺相手に武器使わないってただの阿呆だ。」
「ふーん。まぁ、どうでもいいけどな。」
☆★☆★☆★☆★
「それでは、構え!」
始まる……!
「存分に暴れて貰って結構ですから。では、始め!」
生徒会長の言葉と同時に御手洗が俺の方へと向かってくる。
「やめといたらよかったのに……」
——ギロッ!
殺気を込めた目でこちらに向かってくる御手洗を睨む。
——ゾクッ!
観客席から怯えた声で話している声が聞こえてくる。
「今、何か寒気しなかったか?」
「あぁ、した……多分殺気じゃねーか?」
1年生も2年生も3年生も怯えている。もちろんこいつもそうだ。
俺の方へと向かってきていた御手洗の足が止まった。
「どうした?震えているぞ?」
返事がない……。かなり怯えているな。
☆★☆★☆★☆★
「やっぱりいつになっても諒の殺気には慣れないなぁ。」
私は昔から諒と一緒だったから諒の殺気は何回も感じてきたんだけどなぁ……
「華恋ちゃん、あの8組の人知ってるの?」
そう聞いてくるのはこの学園で私の初めての友達、田村朱理だ。フレンドリーで気さくで明るい女の子でどことなく私に似ている。
「え?あ、うん。諒はちっさい頃からの幼馴染だよ?」
「へ〜、って言うかさっきの寒気ってあの人の仕業なの?」
「うん、そうだよ?」
「でも、可哀想ですね。」
もう1人の友達、西条花さんだ。彼女は西条グループのお嬢様であり、新入生の女子でNo.1の実力者だ。
「何が可哀想なの?」
「だって幼馴染に負けているのよ?しかも女子の。あなたが1組であの人が8組なのですから負けていて可哀想だと思います。」
「いや、諒は私よりも………」
うわ〜、諒、めっちゃこっち見て睨んでるよ。耳よすぎだよ。
「?私よりも?何?」
「い、いや。な、何もないよ……」
「そう……」
でも、諒は何で目立ちたくないのかなぁ?
☆★☆★☆★☆★
俺の目の前の御手洗は今だに震えている。もう無理だろ……
「会長、もうあいつには無理みたいですよ?」
「そ、そのようですね。」
俺が会長の方を見てそう言った後再び、御手洗の方を見ると俺の顔を見た瞬間、体をビクッと震わせた。
「御手洗和樹君の戦意喪失を認めます!よって、勝者内田諒君!」
——ワァァァァァ
観客席から歓声が上がる。
それもそうだろう。8組の生徒が1組の生徒を、しかも新入生最強の生徒を相手に手も触れずに、一歩も動かずに勝ったのだからな。
「あいつ、何もんだ⁉︎」
「てか、殺気ってあいつのだったのか。」
「殺気だけで1組の奴を戦意喪失にするとかやばすぎんだろ!」
あいつの顔面白かったなー♪
☆★☆★☆★☆★
「会長。」
「神倉君。どうかしましたか?」
「あいつ、内田諒って名前でしたよね?」
「はい、そうですが?それがなんですか?」
「何か聞いたことあるんですよねー。」
「同感です。私も何処かで聞いたような名前です。」
「とりあえず一度、闘ってみたいもんだ。」