後編
夜が明け、日が真上まで上った頃である。
西門は高さ十メートル、横幅六メートルの木で造られた大きな門は、高さ八メートルの厚い木材でできた壁の中にそびえている。
門に繋がる道には一本の草も生えておらず、きれいに整備されていた。
その道の真ん中に、一人の影があった。
カイルだ。
彼はグレー色の長ズボンと長袖のシャツを着ており、右腰には赤い柄に黒い鍔の刀を、左腰には青い柄に黄色い鍔の刀を、計二本の刀を帯刀していた。
もちろん、ウルドは彼の頭の上で丸くなって寝ている。
「もうそろそろで来るかな」
カイルは腕を組み、ひたすらメンバーが集まるのを待っている。
数分が経つと、彼の目に走ってくる人物が映った。
メアリである。
彼女は黒色とグレー色の混合した迷彩の長ズボンと半袖のシャツを着て、布で包まれたメイスを背負っていた。
「すみません、遅くなってしまって」
「謝んなくていいぞ。まだイグニスも来てねえし、時間指定なんてしてなかったし」
メアリは膝に両手をつき、少しの間荒い呼吸をした後、すぐにいつもの呼吸に戻った。
それから更に数分後、彼等がいろいろな話をしているところにイグニスが歩いて現れた。
彼は真っ黒な半ズボンと半袖のシャツを着ており、黒に薄い赤色の付いた刀を背中に斜めにして装着していた。
「おい、お前何してんだ?」
「何って?」
「刀のことだよ」
「ああ、これね」
イグニスは刀の柄を掴むと、そこから勢いよく抜いた。
「なあ、こうやって抜いたほうがかっこよくね?」
彼の言葉に、カイルは上目使いになって、
「ほう、なら、その状態で刀を鞘の中に納めてみろよ」
「おう。……ってあれ? いや、たぶんこれで……できねえ」
カイルは深いため息をつき、説明した。
「刀の鞘の穴は狭いんだから見えてないと普通はできないんだよ。それに、抜く時にかっこよさを求めて死んだらどうするんだよ。いいから腰に戻せ」
「でも、メアリはああいう風に背負ってるじゃんか」
カイルは再び深いため息をついた。
「メイスは重いからああやんねえと動けないんだよ。別にしたくてしてる訳じゃねえ。理由ってもんがあるんだから今は俺に従って、強くなってからそういうことをしな」
「……はーい」
イグニスは渋々刀を腰につけた。
「よし、もう出発の準備はできたな?」
「「はい」」
「そんじゃあ、行くとしますか」
カイルは門に両手を付け、力強く押した。
門はゆっくりと開いていき、人が十分通れるほどの広さになる。その隙間を三人は通り、
「しゅっぱーつ」
任務のためにバルバラ森へ向かっていった。