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<sideユリウス>
何やら意気込んでいる様子のサラ。
俺はそんなサラを面白げに眺めていた。
そして考えるはあの少女のこと。
二匹の聖獣が必死に庇っていた少女。
『マシロに手を出すなっ』
『マシロに触るな、マシロを放せっ』
歴代の王に仕え、その存在自体が国の繁栄を約束するという守護聖獣。
玉座に就く契約者の血筋である俺は二匹の思念波を理解することができた。
マシロ、マシロとやたらうるさい二匹。
本来、気位が高く契約者以外に心を開くことがない聖獣。
未だ本契約を結んではいないものの血の盟約の拘束は強く盟主である王には絶対服従であるはずの二匹が、その関係にあがらい俺に逆らってまで護り通そうとするあの少女は一体何者なのか。
『シュリとシュロ』
二匹をそう呼ぶ少女。
契約者でない者が聖獣の名を付けそれを聖獣も受け入れている。
実に興味深い、そう思った。
顔の作りは十人並み。しかし睨みつけてくる黒耀石のような意志の強い瞳にゾクっとした。
また、突拍子のない言動も面白い。
急に大人しくなったと思ったら渾身の力で俺に頭突きしてきた無鉄砲さもかなり笑えた。
この俺に頭突きをかますとは痛快である。
結局、予期せぬ額への衝撃に俺は少女を取り落とし地面に叩きつけられた少女は意識を失い、大人しく俺に城へと連行されるに至ったわけだが、その不屈の根性も称賛に値する。
まあ、とにかく俺は稀有な人物を手元に置くことに成功したわけで、聖獣達との関係がはっきりし、彼女の正体がわかるまで逃がす気はさらさらない。
少女の存在がこの国にとって吉と出るか凶とでるか。
ちょうど退屈していたところだ。暇潰しにはちょうど良い。
無意識に口元を緩めた俺。
未だ何やら考えに耽っているサラ。
そしてそんな俺達を見て今まで黙って話しを聞いていた側近のキューベルが呆れたように口を開いた。
「陛下、何を企んでおいでですか?」
「企むなんて人聞きの悪い。俺は常に国のことを考えているだけだ。」
そう冗談めかして答えると
「お戯れは程々にしてくださいね。」
顰めっ面で釘をさされた。
「ああ、勿論だ。」
本当に本当ですよとしつこいキューベル。
こいつは、仕事はできるが少々口煩いところがあるからな。
そんなキューベルに閉口しおなざりに頷いた俺はサラに声をかけた。
「マシロの世話と監視を引き続き行え。」
「承知いたしました。」
優雅な礼をとり退出して行ったサラ。
なぜかその足どりは軽かった。
サラもあれで中々食えない女だからな。これからサラにせっつかれて苦労するであろうマシロを思い笑いが込み上げてきた。
サラの去った部屋。
「陛下、マシロなる少女をどうするおつもりで?」
「どうする、とは?」
「あんな得体の知れない十人並みの少女をまさか妃に迎えるつもりでは?」
「・・・・・・」
「陛下!?」
「・・・さあ、な?」
「陛下ぁ~」
焦るキューベルを余所に俺は珍しく気分が良かった。
今回視点を変えてみました。いかがでしたでしょうか?
マシロの庭への散歩。やっぱり仕組まれていたんですねぇ。二人の思惑通りマシロは意気消沈してふて寝しております。頑張れマシロ負けるなマシロ!!やつらはなかなか手強いぞっ!!