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十二、天空からのエマルノス

主な登場人物

藤谷(ふじたに) 鷹太郎(ようたろう) ・藤谷(ふじたに) 美虎(みこ)

紅亜(クレア)

望月(もちづき) 典馬(てんま)  ・笠井(かさい) 蛍冴(けいご)

吾煉(アレン)

 吐き気を必死に押さえ込み、前方に仁王立ちする少年に目をやる。


「さっさと死にゃあいいのに。オレに本気ださせたら、ただじゃ済まねェぞ」


 ただじゃ済まない、ってそりゃあたりまえだろ。そっちは殺す気満々なんだから。


「それとも、なにか。オレを倒せるとでも思ってンのか?」


 嘲笑うようにアレンは身を屈めて立っている俺を見つめ、挑発的な言葉を投げてくる。

 今のところ、正直全く勝てる気がしない。

 動きもほとんど見えないし、一撃が凄く重かった。

 ……だけど、まだ挫けるのには早い。


「――――思ってるに決まってんだろ」


 倒さないといけないのだ。紅亜の期間限定彼氏になる為だけでなく、この場をどうにか逃れる為に。

 アレンは馬鹿にするように鼻で笑う。


「その体たらくで言えることか?」


「こんぐらい、大した事じゃねぇし」


 強がってみるが、所詮空元気だ。立ち上がることは出来ても、膝が鉛のように重く感じて前に進めない。疲労ではなく、恐怖のせいだ。


「へェ、そうかいそうかい。ンじゃ、ここらで本気だすかなァ」


 満面の笑みで、こちらに歩み寄ってくるアレン。まるで美虎のようだな……恐ろしい。

 俺は老婆のように腰を曲げた状態で後ろへ下がる。背中は真っ直ぐにも伸ばす事は出来そうだが、万が一それで背骨が使い物にならなくなったら困るから、この姿勢なのだ。


「金剛に輝きし……双眼(そうがん)は……覇道の……」


 突如、アレンは口元を小さく動かしながらなにやらブツブツと呟やきはじめた。

 なんか魔法使いが強力な呪文を唱えてるみたいですっげぇ怖いんだけど!


「ちょ、まっ、それなに!? なにすんの!? メテオとか呼ぶんじゃねぇぞ!」


「あン? メテオってなんだ。今から呼ぶのは――――」


 その言葉を遮るように、町中に響くほどの甲高い咆哮が俺の鼓膜にとどいた。


「オレ様、吾煉(アレン)の相棒、エマルノスだ」


 エマルノスといえば……確か、紅亜の話で聞いたライオンの名前だ。

 俺はどこから来るのかと警戒しながらあたりを見渡す。住宅の影からでてくるのかもしれないし、空から翼で飛んでくるかも……ってそりゃもうライオンじゃねぇよ。グリフォンだ。


「……?」


 あれ、なんか地面揺れてない?……まさか。


「地面から、とか?」


 土を掘るライオン?エマルノス最強だな。紅亜に続いてテレビに出れるぞ。

 客観的な感じでそう思っていたが、よくよく考えれば……俺、危なくないか?いや考えなくても危ないだろ!

 そう気づき始めた頃で、いきなりアレンが空へ向かって叫ぶ。


「エマルノス、お~い~でェ~!!」


 そんな気持ち悪くも可愛らしい号令と共に、天空から金剛に輝く未確認生命物体が落下してくる。

 なに!?やはり空からライオン…………あれ?違う。

 ……わぉ、グリフォン。


「次から次へと変なのばっかり……」


 口ではそう言ったが、俺は人生初の伝説の獣をお目にかかれて、かなりテンションが上がっていた。

 うわー、携帯家に置き忘れちゃったよー。とってこようかな。どうしようかな。

 そんな俺の考えを余所に、空中で速度を落としたグリフォンは華麗に地面に着地し、アレンの傍にその巨体を下ろす。

 つか、紅亜。なにがライオンだよ。思いっきり翼生えてるし、頭もどう見ても鳥っぽいじゃん。


「よ~しよしよし、エマルノス、いい子だ」


 アレンはその巨体に恐れる事は当然なく、猫なで声でグリフォンの背中を撫でている。

 ――――羨ましい。


「な、なぁ、俺にも触らせてくれよ」


 ついついお願いしてしまった。

 するとアレンは翡翠色の瞳でこちらをにらみつけ、


「お前ェなんかに触らせるわけねェだろばーか。それに、エマルノスは俺以外の人間は絶対に好かない。お前ェがこの美しい毛に触ろうとすりゃ、たちまち体を引き裂かれンぞ」


 脅すようにそう言い放つ。

 引き裂かれる、か。それなら別にいいや。どうせ体のどこを裂かれても紅亜の術で硬化されるからな。


「じゃあ、遠慮なく」


 何気に話がかみ合っていないが、俺はお構いなしにグリフォンの元に寄り、左手をその背中に伸ばした。

 グリフォンは紺碧の色を放つ瞳でこちらを一瞥する。が、何もしてこない。

 そのままグリフォンの背中に触れる。ふさふさして気持ちいい。普通に猫とか犬を触る感触と似ている。

 一方グリフォンの方は反応なし。


「な……なンだとォ……!?」


 反応があったのはアレンの方だった。驚きに目を見開き、俺を直視している。


「なんだよ。こいつに触り飽きたら、絶対……」


 ぶん殴ってやるからな、と言おうとしたその時。 

 突如グリフォンは翼を広げて立ち上がり、俺の背中に自分の頭を押し付けてきた。威嚇、ではなさそうだが……なんだこれ。

 アレンはその光景を見た瞬間、魂が抜けたように白目をむいて倒れた。

 ――――気絶、しているようだ。

 


 ……え、いや、だからなんで!?




 


 

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