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第15話 ――まだ、知らないこと

教室の窓際で、ひなたはぼんやりと外を見ていた。


昼休み。


お弁当は、もう食べ終わった。


隣で友達が何か話しているけれど、

半分くらいしか耳に入ってこない。


……先輩、今頃なにしてるかな。




昨日の放課後を、思い出す。


補習の教室。


一人で英語のプリントと格闘していた先輩は、

ドアを開けた瞬間、少し驚いた顔をした。


「……なんで、ここに」


嫌そうじゃなかった。


むしろ、ほっとしたような顔だった。


勉強を教えているとき、

先輩は、ときどきこっちを見ていた。


プリントじゃなくて、私を。


気づいていないと思っているみたいだったけど、

全部、分かっていた。


……ずるい。


前にも、同じことを思った。


でも、あのときと今では、意味が違う。


あのときは、期待させないでほしかった。


今は。


もっと見ていてほしい、と思ってしまう。



帰り道。


イヤホンから流れる音楽が、いつもより明るく聞こえる。


先輩は、好きだと言ってくれた。


展望台で。


夜の空気の中で。


声は、震えていた。


でも、目はまっすぐだった。


それだけで、十分だったはずなのに。




――普通じゃない。


先輩は、あの夜、そう言った。


自分が誰なのかも、

何者なのかも、

分からなくなる、と。


あのとき、「それ、理由になります?」と返した。


本心だった。


今も、変わらない。


でも。


「普通じゃない」の中身を、

先輩は、まだ教えてくれていない。


何が、普通じゃないのか。


何と、戦っているのか。


聞いたら、答えてくれるだろうか。


それとも――


また、あの遠い目をするんだろうか。



布団に入って、天井を見る。


好き、という気持ちは変わらない。


先輩が何を抱えていても、

好きになったのは東雲透だ。


それは、昨日も、今日も、同じ。


でも。


知りたい、と思ってしまう。


先輩の「普通じゃない」を。


先輩が見ている景色を。


隣に立つだけじゃなくて、

同じものを見たい。


それは、わがままだろうか。




スマホが、震えた。


反射的に、画面を見る。


透先輩――じゃない。


表示されていたのは。


小笹みな子、という名前だった。


『ひなちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど』


……え?

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