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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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森の外②

 セレーナとアイビーを新たな眷属にして数日後。

 

 色々と準備を終えて、俺達は早朝からエルフィリオ大森林を発つことにした。あまり長居をすると余計なことが起こると思ったからだ。


 そして森の入り口付近に着くと、思いもよらない先客が待っていた。エルフの里の長であるエルシュさんだ。


 「エルシュさん、どうしてここに?」


 「ふふふ、この森を救って下さった貴方方にお礼を言わずに出立させるわけにはいきませんよ」


 「此度の件、この森の代表者としてお礼を言わせてください。本当にありがとうございます」


 そう言ってエルシュさんは深々と頭を下げると、感謝の言葉を告げる。


 「お礼と言っては何ですが、こちらはエイクスュルニル様から貴方に渡してくれと頼まれたエリクサーです。どうぞ受け取ってください」


 そう言ってエルシュさんが渡してくれたものは淡い緑色の液体が入った小さな小瓶だった。


 エリクサー

 世界樹の葉を食べて生きるエイクスュルニルの角から滴る幻の雫。あらゆる病を癒し、延命効果がある。


 漫画や小説で聞いたことのある名前だから分かってはいたが、やはりとんでもない効力がある代物のようだ。


 確か文献によればこれ1つの為に大きな戦争が起きたこともあるらしい。狙われるのも嫌だからあまり人には知られないようにしよう。


 「そしてセレーナ。これは私からの餞別です。持って行きなさい」


 そう言ってエルシュさんが持っている1張の弓だった。見た目は古樹のようなもので作られているが尋常ではない魔力を感じる。ただのマジックアイテムではなくなさそうだな。


 宝弓イグドラシル

 世界樹の枝を手折って作られたアーティファクトの弓。その弓から生まれし魔力の矢は遠くの敵を射抜くとされる。


 これもまた伝説級の代物だった。


 「これって確かエルフの里の秘宝の筈でしょ? 本当に良いの?」


 「構いません。今回の件で我々は多くのものを失いました。ですがいつまでも過去のしがらみ囚われるわけにはいきません。セレーナにはエルフ族の希望として外界に行って貰いたいのです。いつの日か我らがエルフ族が再び人間族と手を取り合う為に」


 そう言ってエルシュさんはセレーナに宝弓を渡した。


 するとエルシュさんの左手首に弓と枝のような刺青を見て、セレーナは咄嗟に手を取り目を丸くする。


 「これと同じ刺青をお父さんもしていたよ。幼い頃にこれに何の意味があるのか聞いたら一族の証だとお父さんが言ってた。もしかして長は私の--」


 「……このことは忘れなさい。里の為に我が子を見捨てた愚かな老害のことなど……」


 「……分かった」


 エルシュさんの意を汲み取ったのか、それ以上の深追いをセレーナはしなかった。


 「でもこれだけは言わせて。お父さんは恨んではなかったよ。たとえ離れ離れになってもいつも通じていると言ってたから」


 「……ありがとう、セレーナ」


 それ言ってエルシュさんは俺達に背を向けると、そのままエルフの里へと去ってしまう。


 「……またね、お婆ちゃん」


 こうしてセレーナ達を連れて俺達はオルフィンへと帰還するのだった。



 ◆◆



 エルフィリア大森林から出立して1週間。


 オルフィンへの帰路は順調に進んでいた。俺はグラニに付けた手綱を握りながらオルフィンへと走らせる。


 流石に荷馬車を付けて走らせているから来た時と比べて幾分か時間がかかるが、このペースならあと2日もあれば到着するだろう。


 「姉さん姉さん! 山が見えるよ! お母さんが話してた通り空にも届きそうだね!」


 「分かったから静かにしなさいセレーナ。本が読めないわ」


 荷馬車から子供のように景色をセレーナは楽しんでいるのに対してアイビーは暇潰しに貸した本を読んでいる。


 「気持ちいいですか、クル?」


 「クルルゥ〜!」


 ユフィアは特製のブラシを使ってクルにブラッシングをしている。汚れや抜け毛が取り除かれて気持ち良さそうに喉を鳴らしている。


 エルフィリオ大森林では激しい戦いがあったからな。たまにはのんびりと帰還するのもいいだろう。


 そう思っていたのだが、馬車が樹々の生えた小道に入った時にそれは起きた。


 --警告。魔物の大群がこちらに近づいています。


 危機感知の加護が発動した。どうやら快適な旅路は一時中断のようだな。


 俺はさらに新たに獲得した広域探知を発動させると、視界にまるでマップのようなものが出現する。


 そのマップ内には赤い点のようなものが幾つも付いており、俺達を取り囲むようにしてこちらに近づいている。ありがたいことに赤い点滅があるおかげで正確な魔物の数が分かる。数は41だ。


 しかも魔物ならグラニの圧力に気づいているだろうに、それでもこちらにも近づいているということは高等級の魔物がいる可能性があるな。


 「おい、魔物の群れが近づいているぞ。戦闘の準備をしろ」


 みんなに知らせると、全員が戦闘準備に入る。そして街道の茂みから現れたのは豚の顔をした筋骨隆々の亜人型の魔物だった。身に付けているのはボロボロで錆びれかけた鎧や盾、武器などで、装備品としてはあまりにもお粗末な物だった。


 名前:オーク

 種族:亜人種

 等級:D

 魔力:1500


 オーク

 亜人型の魔物。豚のような特徴を持ち、嗅覚が非常に優れている。雄しか生まれない為、繁殖には他種族の雌を使用する。肉は食用、皮膚は革用品、牙は装飾品として売却出来る。


 やはりオークだったか。しかしD等級程度の魔物だけではグラニに近づこうともしないだろう。かならず親玉がある筈だ。


 そして限界まで範囲を広げてみると、群れの奥に上位の個体が複数いるのを探知した。数は10体で、その中の1体は明らかに別格で強そうだ。


 名前:ハイオーク

 種族:亜人種

 等級:C

 魔力:3000


 ハイオーク

 亜人型の魔物。オークが進化した個体で、戦闘力・凶暴性が上がっている。肉は食用、皮膚は革用品、牙は装飾品として売却出来る。


 名前:キングオーク

 種族:亜人種

 等級:B

 魔力:5600


 キングオーク

 亜人型の魔物。ハイオークが進化した個体でオークの王。知能・戦闘力・凶暴性・統率力の全てがオーク種の限界まで高められている。肉は食用、皮膚は革用品、牙は装飾品として高値で売却出来る。


 やはりオークの王とも言える存在がいた。B等級魔物ならグラニを恐れずに近づいて来たのも納得出来る。


 ハイオークはオークの時よりも一回りも大きくなり、装備品と簡易的ではあるがきちんと手入れがされている。オークの装備品とは比べ物にならないほどの品質だ。


 そしてオークキングの装備品は統一感があり、黒い重厚そうな兜と鎧を身に纏い、身の丈以上はある大剣を装備している。まさに王としての威厳が伝わってくる。


 「俺が先にキングオークを仕留める。そのあとは全員で一斉に残りのオーク達に攻撃するぞ」

 

 先に司令塔を始末すれば統率は一気に乱れて、混乱によって残りのオーク達を仕留めやすくなるだろう。


 キングオークの周りにはハイオーク達が警護しているのが面倒だが、何とかなるだろう。配下達を蹴散らしながら一気に近づいて王を獲るとしよう。


 「ここはわたしに任せて!」


 俺はレイヴェルを取り出して構えると、そこに待ったをかけるのはセレーナだった。


 「大丈夫か? キングオークとの距離はかなりあるぞ」


 俺達とキングオークとの距離はざっと200メートルはありそうだ。そんな距離で奴を仕留めるのは至難の業だぞ。


 「この弓なら何とかなりそうな気がする」


 宝弓イグドラシルか。確かにこの弓にはかなりの力を感じるからな。任せてみるか。


 「よし、頼む」


 「任せてよ!」


 そう言って早速セレーナは弓を構えて弦を引くと、一瞬にして矢が形成される。そしてキングオークへと狙いを定める。


 「十連矢射」


 放たれた矢は目にも止まらぬ速度で真っ直ぐと、直前で10本となってキングオークへと迫り、奴が装備している重厚な兜や鎧ごと射抜いてしまう。


 「ブモッ!?」


 勿論、複数の矢を受けてキングオークは即死する。


 『ブモオオオオオォォォォォ!!』


 突然、王が死んで慌てふためき始めるハイオーク達。それによりオーク達の統率が乱れて戦闘どころではない。必死にその場から逃げようとしている。


 しかしこいつらは 1体も逃したくない。こいつらは魔物としては悪質で、ゴブリンと同じく年間で多くの女性がこいつらの繁殖による被害に遭っている。


 それにより冒険者ギルドでは極力こいつらを逃さずに討伐して欲しいと言われている。たとえ頼まれなくてもこいつらの所業は見るに耐えないので蹂躙するつもりだ。


 案の定、知能が低い何体かのオーク達は馬車にいるユフィア達に狙いをつけたようだ。危機的状況だというのに性欲を優先するとは、愚かな魔物だ。


 だが奴らは彼女らには指一本触れることなく一瞬にして命を落とすことになる。当然俺とグラニがいるからだ。


 確かに体格の通りなかなかの筋力をしているようだが、それだけだ。動きは単調なのでそれほど手強くはない。


 『ブモモォッ!!』


 一方、戦力の差を理解しているハイオーク達は敵前逃亡を決め込む。しかしそれも虚しく、背後から矢の嵐を受けることになり敢えなく撃沈する。


 「よし、1匹残らず倒したな」


 無事にオークの群れを倒して安堵の息を吐く。この広域探知のお陰で仕留め損ねた魔物の確認も出来るからなかなか便利な加護だぞ、これは。


 そして何よりも今回の大金星はセレーナだ。よくぞあの距離にいたキングオークを仕留めてくれた。


 「良くやったな、セレーナ」


 「やっぱりこの弓凄いよルイ! 羽毛のように軽いし、魔力さえあれば幾らでも矢を射てる! 本当に凄い!」


 流石世界樹の枝から作られたエルフの里の秘宝。セレーナが新しく獲得した加護とも相性が抜群のようだ。これからも頼りにさせて貰うぞ。


 「さて、そろそろ行くぞ」


 倒したオーク達を空間収納に回収し、俺達はオルフィンへと向かうのだった。

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