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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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堕ちた精霊③

 「ご無事ですかルイ様」


 丁度良いタイミングでユフィア達がやって来た。どうやらそちらの方も無事にけりが着いたようだな。


 「両親の仇は討てたようね、セレーナ」


 『………………誰?』


 突然現れた美女に俺とセレーナは首を傾げる。だがすぐに声と面影でその美女がアイビーだと理解出来た。


 どうやら俺が魔力を注ぎ込んだ世界樹の葉で一時的に元の姿に戻れたようだ。


 「姉さんがすごく大人っぽい! 何だか不思議な気分!」


 普段とは違う姉の姿にセレーナのテンションが上がっているようだ。


 確かにあの幼い見た目のアイビーがここまでグラマラスな美女になるとは正直恐れ入ったな。思わずその魅惑的な魅力に心を惹かれそうになりそうだ。


 さてと、これにて一件落着だな。1度エルフの里に戻るとしようか。


 しかし、そう物事はそう易々とは終わらないようになっているようだ。


 「まだ、終わってないわよ……!」


 声のする方へ視線を向けると、そこには重傷を負い、見るも無惨な姿となっていたロベリアの姿があった。


 「ロベリア、まだ生きてたの……?」


 ロベリアの顔は酷く焼き爛れており、腹部の3分の1が失っている。あれほど美しかった姿はもはや見る影もない。あんな状態で生きているだけでも不思議に思う。


 「よくも……よくも私をこんな姿にしてくれたわね、アイビー! 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!」


 醜い姿と成り果てたことによりロベリアは半狂乱状態となっているようだ。アイビーに対して呪詛のように恨み辛みを口にする。


 「絶対に許さないからねアイビー! たとえこれを使ってでもアンタの息の根を止めてやるから!!」


 そう言ってロベリアが取り出したのはエルゾアに飲ませたものと同じ黒い種。それを自らの口へと放り込む。


 「あははははははははははははっ! もう何もかもどうでもいいわ! こんな森なんか跡形もなく消してやるわ!!」


 そう言い残してロベリアはエルゾアのように悍ましい姿へと変貌する。


 全身から複数の蔓状触手が生えるとまるで絡み合うようにしながら巨大化していくその姿はまるで蚯蚓のようだ。そして何よりも規格外なのはその全長だった。おそらく巨体のエイクスュルニルよりもでかいだろう。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 魔物化したロベリアは頭部のような部位を4つに裂けて大口を開けて耳を塞ぎたくなるような大きな奇声を放つと、その巨体が宙へと浮き上がる。おいおい、蚯蚓なら地面に潜れよ!


 そしてそのまま俺達の方--ではなく別の方角へと飛び去ってしまう。


 「あの方角は……エルフの里に向かってるわよ!」


 アイビーの言葉に最悪な展開が脳裏に浮かぶ。


 「--っ!? すぐに追うぞ!」


 俺達は急いでエルフの里へと向かう。


 どうやら魔物達の洗脳は解けているようで気を失っているようだ。お陰で何事もなく円滑にエルフの里へと行けた。


 しかしエルフの里へと到着した時には既に遅く、あれほど美しかったエルフの里はまさに地獄絵図と化していた。


 家屋の殆どは破壊され、樹々は薙ぎ倒され、そして多くのエルフ達が無惨にもロベリアによって襲われている。


 ロベリアは空中を漂いながら次々と種子のようなものをばら撒いており、そこからはまるで人の形をした花のような化け物が生まれ出ている。


 「ストーンショット!」


 「エアスラッシュ!」


 「ソーンバインド!」


 「ウィンドプレス!」


 エルフ達も得意の魔法で対応しているが、花の化け物ならともかく、ロベリアはあまりにも巨体なため大した損傷を与えることは出来ず、何人者のエルフ達が犠牲となる。


 「キュアアアアアアアァッ!」


 すると今度は意識を取り戻していたのか、エイクスュルニルが雄叫びと同時に魔力の光球をロベリアに放つ。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 高威力の光球が直撃してロベリアが悲鳴を上げる。しかし致命傷とはならず、やはり魔物化したエルゾアの時と同様に即座に回復してしまう。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 すると今度はロベリアが反撃に出る。まるで蛇のようにエイクスュルニルへと巻き付いていて締め上げる。


 全身に巻きつかれ、強く締め上げられてエイクスュルニルが苦しみ始める。このままだとヤバいな。


 「セリーナ、エルゾアを仕留めるのに使った枯死剤はまだあるか?」


 「あるよ」


 「なら一緒に来てくれ。ユフィア達はエルフ達の治療と避難を頼む。グラニ!」


 「ブルルゥッ!」


 エルフ達をユフィア達に任せて俺はセレーナと共にグラニに乗ってエイクスュルニルを助けに向かう。


 「行くよ!」


 空から狙いを定めてセレーナは枯死剤が塗られた矢を射る。放たれた矢は正確にロベリアに命中した。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!?」


 すると魔物化ロベリアが苦しみだし、エイクスュルニルの拘束が緩まる。


 「キュアアアア……」


 締め付けが緩くなりエイクスュルニルは難を逃れることが出来ようだ。


 しかし問題はロベリアの方だ。セレーナの枯死剤が効いていない。


 いや、僅かだが傷口が枯れているので効いてはいるようだが、あの程度の枯死剤の量では怯ませる程度で致命傷にはならなず、すぐに再生してしまう。


 少なくとも20倍以上の量がなければ話にならないだろう。


 「セレーナ、枯死剤がもっと必要だ! 作るのにどれくらい時間がかかる?」


 「素材を集めるのに里のみんなに手伝わせるとして……15分は必要。それまでの間あれを引き止めておいて」


 15分か。正直に言ってかなり骨が折れそうだが、やるしかない。


 「分かった。出来ればもう少し早く頼むぞ」


 「善処するわ」


 そう言うセレーナをユフィア達の元に送り届け、俺とグラニは再びロベリアの元へと接近させる。


 「大丈夫かエイクスュルニル」


 まだ本調子ではない様子のエイクスュルニルには悪いが、少しでも時間稼ぎに協力して貰おう。


 「貴殿は我の洗脳を解いた人間か。それにスレイプニルの子か……なるほど、女神が遣わした救世主とは貴殿のことだったか」


 洗脳されていた時は意思の疎通は出来なかったが、やはり同じ七神獣であるスレイプニルと同様に人の言葉を話せるようだな。


 それに俺が女神様の関係者であることも気づいているようだ。


 「悪いがこの森を守るためにもう少しだけ持ち堪えてくれ」


 「無論だ。我は女神からこの森を守護する重要な使命を与えられている。あのような輩にこれ以上好き勝手はさせん」


 流石は七神獣の一角。頼もしい限りだ。


 「15分の間、エルフ達の方に奴を近づけさせるな! 全力で死守するぞ!」


 「ブルルゥッ!」


 「承知した!」


 俺達はロベリアがセレーナ達を襲わないように15分という短くとも長くとも思える奮闘が始まる。


 俺とグラニは上空から、エイクスュルニルは地上から挟み撃ちにして攻撃をしかけることにした。


 空と地上からの総攻撃でもロベリアに致命傷を与えることは出来ないが、かなり怯ますことは出来た。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 するとロベリアは再び大量の種子を生み落とすと、そこから現れるのは先程の人型植物。そしてそれとは別に植物鳥も次々と生まれてくる。


 植物鳥とは言ったものの嘴のようなものはなく蛭のような口をしており、薄気味悪い色の花びらをまるで翼のように羽ばたかせることで空を飛ぶようだ。


 しかもこいつらは口から強力な硫酸のような液体を攻撃の手段にしているので迂闊に近づくことは出来ない。


 「マナバレット!」


 「ヒヒィーーンッ!」


 だがこちらには遠距離攻撃が可能なので手こずることはなかった。植物鳥が吐き出す硫酸を回避しながら魔弾と風の刃で次々と撃ち落としていく。


 人型花の方も相手が悪かったようだな。格上の魔物であるエイクスュルニルに成す術なく蹂躙されていく。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 魔物達を突然奇声を上げるのと同時にロベリアに更なる変貌が起きる。


 全身から棘が付いた蔓状触手が無数に生え、先端の口が開くと細かく鋭い牙が幾重にも並んでいる。あれに噛み付かれたら一溜りもないだろう。


 --ルイ様! 枯死剤が完成しました!


 そしてようやく15分が経過したのか、ユフィアが念話で大量の枯死剤が出来たことを告げてきた。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!!」


 どうやらロベリアがセレーナ達が何を作っていたのかに気が付いたようだ。俺達を無視してそちらの方へともの凄い勢いで真っ直ぐに飛び出す。


 「そうはさせん!!」


 しかしそこにエイクスュルニルが立ち塞がる。ロベリアへと突進して強引にセレーナ達の方へ向かうのを阻止する。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!」


 まるで邪魔をするなと言わんばかりにロベリアはエイクスュルニルの身体に巻き付くと、その幾重にも並ぶ鋭利な牙を突き立てる。


 「ぐああああああっ!?」


 流石のエイクスュルニルもあの鋭い牙で噛み付かれてただでは済まないようだ。


 俺達は急いでエイクスュルニルからロベリアを引き剥がそうと向かおうとすると--


 「我に構うな! 此奴は我が食い止める!」


 「分かった!」


 ロベリアをエイクスュルニルに任せて俺達は急いでセレーナの元へ向かう。


 「お待たせ! これを奴の口の中に放り込めば確実に仕留められる筈だから! あとは任せたよ!」


「ああ!」


 一先ず枯死剤が入った大樽を空間収納で収納して、急いでエイクスュルニルの元へと向かう。


 しかしロベリアはエイクスュルニルに噛み付いていて、直接口内に枯死剤を飲ませるのは不可能な状況だった。ならば強引にでも引き離してやるまでだ!


 「おおおおおっ!!」


 俺はグラニにロベリアへ近づくように指示を出すと、何度となくレイヴェルで突き刺す。


 「ヒヒィーン!!」


 更にグラニも俺に続いて風の刃で応戦する。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!?」


 流石のロベリアも身体を切り刻まれるのに耐えきれなかったのか、悲鳴を上げてエイクスュルニルから離れる。


 「これでも飲んでろ!!」


 俺は枯死剤が入った大樽を空間収納から取り出すと、大口を開けてあるロベリアの口内にへと投げ入れる。


 「リュワアアアアアァァァァァァンッ!?」


 すると今度こそ枯死剤が致命的に効いているのか、ロベリアは身体を激しくよじらせながら苦しみ出す。


 ロベリアの全体は瞬く間に枯れていく。それでも最期の悪足掻きと言わんばかりに俺達を飲み込もうと突進してくる。


 「終わりだ」


 俺はありったけの魔力を注ぎ込んでいたレイヴェルの穂先をロベリアに向けると、そこから高威力の光線が放たれる。


 轟音と共に放たれた破壊の光線は朽ち果てかけていた奴の身体包み込みながら突き進んでいき、最終的にロベリアは跡形もなく消滅していた。


 「……まだ生きているなんてことはないよな?」


 「案ずるな。邪悪な魔力は完全に消えた。我々はこの森を守りきったのだ」


 「そうか……」


 エイクスュルニルの言葉に安堵した俺はそのまま地面に座り込み、一息ついた。


 こうして今度こそエルフィリオ大森林で起きている異変を無事に解決するのだった。

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