自由国家オルフィン②
「……ここが冒険者ギルドか」
到着したのは冒険者ギルドと書かれた大きな建物だった。
ガンツさんが言っていた通り大きな翼をモチーフにした看板があったのですぐに場所が分かった。
「よし、入るか!」
覚悟を決めてギィッと扉を開けて建物の中へと入る。
建物の中央には受付カウンターがあり、冒険者ギルドの受付嬢らしき女性達が多種多様の冒険者の対応をしている。建物の端には酒場があり、昼間だと言うのに酒を飲んで大騒ぎしている者もいる。
「これぞ冒険者ギルドって感じだな」
ラノベや漫画に出てくる予想通りの風景に俺は満足気に呟く。
まずは冒険者登録をしないとだな。
俺は受付カウンターへと向かうと、列があるので最後尾に並んで待つこと数分。ようやく俺の番が来た。
「冒険者ギルドにようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
俺の対応をしてくれたのは綺麗な女の人だった。制服の名札には『アリス=レナード』と書かれている。
とても清楚で気品の溢れる佇まいにしかも苗字持ち。おそらく何処か高名な家系の人なのだと思われる。
「すみません。冒険者登録をお願いしたいのですが」
「冒険者登録ですね。登録には1000リル必要となりますが、よろしいですか?」
リルとはルファディアにおいての貨幣で特殊な鉱物で作らられた5種類の硬貨のことを言う。
白の硬貨が1リル、赤の硬貨が10リル、黄の硬貨が100リル、青の硬貨が1000リル、緑の硬貨が10000リルとなっている。
そう言えば今の俺にはお金なんてない。あるとすればここに来るまで倒してきた魔物くらいだ。
「あの、お金はないんですが魔物の素材ならあります。その素材をここで売却することは可能でしょうか?」
「可能ですよ。ではここに魔物の素材を出してください」
そう説明された俺は空間収納から今まで討伐してきた魔物のゴブリン、ホブゴブリン、グレイウルフを取り出す。
突然目の前に大量の魔物を出現させて一瞬アリスさんが驚いた様子を見せるが、流石はギルド職員と言ったところか、すぐに元の営業スマイルへと戻っていた。
「では査定をさせて貰いますので少々お待ちください」
そう言ってアリスさんは魔物の素材の査定をするべく席を外した。
それから十数分後。
査定を終えたのかアリスさんが戻ってきた。その手には硬貨のような物が乗ったトレイを持っている。
「査定が終わりました。買取金額は50000リルになります。こちらの額でよろしいでしょうか?」
思っていたより低いな。まあ、今取り出した魔物は全て低等級だからな。それにこれだけあれば暫くの間は大丈夫だろう。
「はい、その金額でお願いします」
「かしこまりました。それでは冒険者登録に必要な1000リルを差し引きまして、49000リルになります」
俺は49000リルをアリスさんから受け取る。
「それではこちらの用紙にお名前等を記入してください。代筆は必要ですか?」
「いいえ、自分で書けますから大丈夫です」
そう言って俺は用紙を受け取ると、必要な欄に文字を記入していく。
ルファディアに関することは言語だけでなく文字も不思議と理解できているので書くことも容易に出来た。
勿論、全て正直に書くと厄介なことになりそうだから多少のことは省かせて貰おう。
あ、そう言えばガンツさんから手紙を渡されていたな。それも渡しておこう。
「あの、ガンツさんという方から冒険者ギルドの受付に渡すように言われた手紙があるんですが……」
「手紙ですか? 失礼ですが確認させて貰ってもよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
俺はガンツさんに渡された手紙をアリアさんに渡す。
「成程ですね……」
手紙を読んでふむふむと受付嬢さんが頷く。そして一通り確認して書類と手紙を別の職員に渡す。
「問題ありませんね。これから冒険者証をお作りしますので、それまでの間に冒険者ギルドと等級について説明をさせて貰います」
冒険者ギルドの主な業務は冒険者の登録・除名、冒険者達への仕事の斡旋や仲介、街で起きる犯罪の防止・対処を行うようだ。
冒険者ギルドに登録した冒険者には等級が与えられ、F、E、D、C、B、A、Sの順番で上がっていく。F〜Eが駆け出し、D〜Cが一人前、B〜Aが凄腕、Sが英雄扱いされる。
現在S等級の冒険者は世界で6人しかいない程の存在で、冒険者ギルドを統括しているギルドマスターもS等級の実力を現役の冒険者のようだ。
ちなみに冒険者ギルドで働いている職員の人は全員C等級以上の実力がある現役の冒険者らしい。
この説明からするとするとこの人も冒険者なのか。ちょっとステータスを確認。
名前:アリア=レナード
種族:人間族
適性:水属性
魔力:5000
魔法:ウォーターボール(小) ウォーターランス(中) アクアスラッシュ(中)
加護:なし
おお、流石はギルド職員と言ったところだな。アリスさんのステータスはなかなかのものだった。魔力は常人以上だし、魔法も3種類扱える。加護はないようだがそれでもなかなかの実力者なのだと窺える。
最下位のF等級は主に街中で行う依頼を受ける者達専用のランクで、街の外に出る依頼を受けるにはE等級からでないとならない。
ちなみにE等級に上がるにはギルド職員に戦闘が出来るかを判断して貰えば直ぐにでも昇格出来るが、それ以上の等級の昇格は依頼の達成数や条件により判断され、更に昇格試験を合格しなければならないそうだ。
依頼板に貼られている依頼書を受付に提出すれば正式に依頼を受けられる。だだし依頼は自分の等級まで受けることが可能で下限はない。
依頼を完了すれば依頼書に記載されている金額を貰えるが、規定日数以内に依頼を完了出来なかったり、条件内容にそぐわない場合は違約金を払うことになる。
冒険者証を再発行する場合は手数料として1000000リルの手数料を支払わなければならない(これ程高額なのは冒険者としての自覚を待てと言う意味が込められているようだ)。
重罪を犯した場合は即座に冒険者証の使用停止、最悪の場合は2度と冒険者として活動出来なくなる。
「以上が冒険者ギルドの説明となります。では冒険者証ができましたのでどうぞお受け取り下さい」
俺は差し出された冒険者証を手にする。
あれ、冒険者証にはE等級と記載されているぞ? 冒険者として登録したばかりの俺加えてならF等級からのはずだが?
「あの、冒険者証にはE等級と記載されているのですが、何かの間違いですか?」
「間違いではありません。ルイさんはE等級からの登録になります。ルイさんが持っていた手紙にはグレイウルフを討伐したと書かれていましたので、ルイさんの実力は現時点ではE等級と判断されました」
それは有難い事だ。これで街の外での依頼も受けられるようになる。ガンツさんには本当に感謝しないとな。
一通りの説明等を聞いていると、そろそろ夕暮れの時間なのに気がついた。
冒険者登録を無事に終えたことだし、今日は宿を探すとして休むとしよう。久しぶりのベッドでゆっくりしたいものだ。
「すみませんが、この近くで宿はないですか?」
「宿ですか? それならここから少し離れたところに風見鶏亭と言う宿屋があります。安くて美味しい料理も付きますからとてもお得ですよ」
「分かりました。取り敢えず今日はそこに泊まることにします」
そう言って俺は冒険者ギルドを後にするのだった。




