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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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世界樹③

 「世界樹が枯れかけているだって?」


 アイビーの言葉に俺は首を傾げる。うーん、見れば見るほど立派な巨木に思えるんだけどな……。


 「……世界樹の葉を良く見なさいよ」


 「葉だって?」


 改めて世界樹の上へと視線を向けてみると、 1枚の葉が枯れ葉かひらひらと落ちてくる。そしてよく見ると、世界樹の葉が所々枯れ葉になっていることに気がついた。


 「確かに枯れ葉になっているようだが別に珍しいことではないだろう」


 世界樹とは言え植物だ。枯れ葉くらいあってもおかしくはない筈だ。


 「世界樹を普通の植物と一緒にしないで。世界樹は莫大な魔力を保有しているからいつも若々しい緑の葉で覆われている状態なの。それなのに葉が枯れ始めているということは世界樹に異変が起きていることを意味しているのよ」


 「ほう、見ただけで世界樹の異変に気づくか」


 突然の男の声に緊張が走る。視線を声の方へ向けると、そこには黒い肌をした壮年の男エルフがいた。


 名前:エルゾア

 種族:エルフ族

 適性:森属性

 魔力:200000

 魔法: ウッドエッジ(小)・(中)・ウッドウォール(中)・ウッズタイタン(大)

 加護:寄生怨花


 寄生怨花

 宿主に寄生して支配する花を作り出す。


 どうやら今回の黒幕であるエルゾアのようだ。デュークと同様に黒い肌にとんでもないステータス、邪神の使徒で間違いない。


 「お前がエルゾアか」


 「ふん、穢らわしい人間族に私の名を呼ばれると虫唾が走るがそうだと言っておこうか、女神が遣わした救世主よ」


 こいつ、どうやら俺のことを知っているようだな。おそらくリスティング神聖国の件でだろう。


 「貴方がエルゾアね!」


 憎い仇であるエルゾアを目にした途端にセレーナが憎悪をたぎらせた瞳で奴を睨むと、そのまま弓を構えて矢を放つ。


 しかし矢はエルゾアを射抜くことはなく寸前のところで躱される。


 「お前は裏切り者の男と穢らわしい人間の女との間に生まれた娘だな? ふん、半端者がこの聖域に足を踏み入れることになるとは何とも悍ましいことだ。おおかた復讐にでも来たところか、くだらない」


 「くだらない? お母さんとお父さんの命を奪っておいてくだらないとは何よ!」


 エルゾアの言葉に更に激怒したセレーナは何度も矢を奴に放つが全て躱されてしまう。


 「鬱陶しい娘だ--ウッドキャノン」


 エルゾアは不愉快そうな表情を見せると森属性の魔法を発動。魔法陣が出現するのと同時に木砲弾が放たれる。


 「きゃあ!?」


 放たれた木砲弾はセレーナに直撃することはなかったが、かなりの衝撃で彼女は小さく悲鳴を上げながら吹き飛ばさられてしまう。


 「セレーナ!?」


 吹き飛ばされたセレーナに慌ててアイビーは駆け寄る。直撃は避けたようだが衝撃で怪我を負っているようだ。


 「ユフィア、すぐにセレーナの治療を頼む」


 「分かりました」


 俺の指示にユフィアは頷くと、すぐにセレーナの治療を開始する。しばらくの間は動けないだろう。


 「次は俺の番だ、エルゾア」


 俺は軽くエルゾアを睨みながらレイヴェルを構える。


 「貴様達は私の野望を阻止する為にここまで来たのだろう? ならば人形共に相手をして貰おう」


 エルゾアはパチン、と指を鳴らすと辺りの地面から複数の魔法陣が浮かび上がる。そしてそこから出現した存在達に俺達は思わず驚愕してしまう。


 何故なら魔法陣から現れたのは人間達だったからだ。武装していることからおそらく行方不明になっていた冒険者達だろう。


 だが様子は明らかにおかしく、眼は虚で何やらボソボソと譫言のようなことを発している。そしてやはりと言うべきか、彼らの身体には当然のように目玉花が植え付けられている。


 「あの目玉花……魔物だけでなく人にも植え付けているのか」


 「人間族には無用な意識すら必要ないからね。扱いやすいようにさせて貰ったよ」


 「キィエエエェェェェェェェェッ!!」


 すると冒険者の1人が奇声を上げながら突進してくると、手にしていた剣で俺を斬りつけてくる。


 「ーーっ! 何だよこの力は……!」


 俺は反射的にそれを防ぐが、冒険者の力は通常よりもずっと強かった。


 「キィエエエェェェェェェェェッ!!」


 人と言うよりもまるで凶暴な獣の如く奇声を上げながら冒険者は暴れる。


 流石に操られているだけの人を傷つけるわけにはいかないので俺は冒険者の攻撃を軽くいなし、そして原因である目玉花を狙う。これで冒険者の洗脳は解かれる筈だ。


 「ギャアアアアアアアッ!?」


 だが冒険者の悲鳴を上げて苦しみながら倒れると、そのまま2度と動くことはなかった。


 「まさか、死んだのか?」

 

 エイクスュルニルの時は確かに目玉花さえ何とかすれば洗脳は解かれた筈なのに、どうしてこんなことに……。


 「ははは! その目玉花は改良種でね、宿主の身体能力を底上げるする代わりに各神経に深く根を張って一体化させるんだ。たとえ目玉花だけ対処しても宿主である人間も一緒に死んでしまうんだよ。たとえその神槍の力があったとしてもね」


 「……下衆野郎だな」


 こいつ、なんて植物を作りやがったんだ! それならもう冒険者達は元には戻らないことになる! 人の命を何だと思っているんだこの男は……!


 「ユフィア、聖護結界で俺以外を守ってくれ。あいつらは全員俺が対処するから」


 「そんな、お1人で相手をするなんて危険です!」


 「頼むユフィア。言う通りにしてくれ……」


 「……分かりました」


 俺の意を汲んでくれたのか、ユフィアは頷くとすぐに聖護結界を張る。これなら多少の衝撃があっても大丈夫だろう。


 「おやおや、まさか1人で私の傀儡達を相手にしようというのかい? 流石にそれは無理があると思うよ?」


 まるで嘲笑うかのようにエルゾアは不適な笑みを浮かべると、他の冒険者達に「始末しろ」と指示を出して俺に襲わせる。


 「……助けられなくて、すまない」


 俺はそう小さく謝罪の言葉を口にすると、一瞬のうちに冒険者達の息の根を止める。今度は苦しまないように……。


 人の命を奪うのはこれが初めてではない。だが今、命を経った相手はおそらく善良な人なのかもしれない。そう思うと罪悪感はある。


 だからこそ、目の前にいるこの下衆野郎だけは確実に仕留めるから。


 冒険者達を全員屠ってすぐに俺は狙いをエルゾアに向ける。


 「ほう、なかなかやるな」


 エルゾアは少し感心したような表情を見せると、何処からともなく身の丈以上はある漆黒の大鎌を取り出して迎え撃ってくる。


 エルゾアは大鎌を巧みに操り、次々と斬りつけてくる。奴の身体能力は尋常ではない。おそらく邪神の使徒になったことでかなり身体能力を上げているのだろう。


 「ウッドウィップ」


 更に奴は魔法の方もなかなかのようで、大鎌を扱いながら魔法を駆使して迫ってくる。流石は強硬派の統率者なだけあって戦闘能力は高いようだ。


 「はあっ!」


 「くっ……!」


 だが、互いに激しい一撃を繰り広げる中、徐々に俺の方が優勢になっていく。元々身体能力は俺の方が断然上だ。しかも魔力纏鎧によって更に身体能力を向上させているので俺と奴とでは馬力が違うのだ。


 そして打ち合いに押し負けてエルゾアの身体が一瞬よろけた瞬間を俺は見逃さなかった。


 「ふっ!!」


 レイヴェルによる一閃がエルゾアを捉える。奴の両手首と持っていた大鎌が宙を舞うと、ぼとりと地面に落ちる。


 「わ、私の手があああぁぁぁぁぁっ!?」


 エルゾアの両手首があった箇所からは大量の血が噴出する。放っておけば出血多量で命はないだろう。


 「終わりだ」


 だが相手は邪神の使徒。何をしでかすかは分からない。だからその前にこいつを仕留めてやる。


 俺は苦悶に顔を歪めているエルゾアを袈裟斬りにする為にレイヴェルを大きく振りかざす。


 「あらあら、無様な姿ねエルゾア」


 突如聞き覚えのない女性の声が聞こえるのと同時に地面から先端が尖った大きな蔓状態の触手が出現する。


 「ちっ……」


 エルゾアにとどめを刺すのを邪魔するかのように触手が俺と奴との間に割り込んでくるので、一旦距離を取ることにした。


 「誰だ!?」


 俺の問いかけに応じて、巨大な蔓状触手を出現させたであろう女性が姿を現す。

 

 背は高くスラリとしており紫紺色の瞳と長髪で肌は黒い。妖しげな雰囲気は不気味ながらも魅惑的に思わせる美女だ。


 そんな彼女から放たれる邪悪な魔力は間違いなく邪神に関わっていることを理解させられる。


 「……ロベリア!」


 彼女の姿を見てアイビーの表情が険しくなる。


 「姉さん、あの人のこと知ってるの?」


 「……彼女の名前はロベリア。世界樹から生まれた精霊なのに邪神の使徒へと成り果てたアタシの妹よ」

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