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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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エルフの里③

 まさかのS等級にして伝説の七神獣である魔物が現れるとは予想外だったな。


 名前:エイクスュルニル

 種族:神獣種

 等級:S

 魔力:500000

 状態:洗脳


  エイクスュルニル

 鹿型の魔物。女神が使役した七神獣の一角で【神鹿】と呼ばれる大鹿。幾重にも枝分かれした角から滴る雫はあらゆる病や傷をも癒やし、角そのものには不老長寿の妙薬として使われる。


 流石はスレイプニルと同じ七神獣の一角、凄まじいステータスだ。


 だが一部分だけおかしいところがある。状態の項目に洗脳と記されていた。


 「あの温厚なエイクスュルニル様がどうして我々に攻撃を!?」


 「どうやら洗脳状態にあるようだな」


 「洗脳? まさかエルゾアが何か……」


 エルシュさんの反応からするとやはりエルゾアの仕業のようだな。だがそんなことより、今はあのエイクスュルニルだ。方法は分からないがエルゾアによって洗脳状態にされているのであれば非常に厄介だ。


 当然、この状況から察するに戦闘は必須だろう。


 「ユフィア達は隠れていろ! こいつは俺が何とかする!」


 「しかし……」


 「良いから隠れてろ!」


 相手は七神獣の一角。最強クラスの魔物だ。俺だけならともかくユフィア達まで戦わせるのはあまりにも危険過ぎる。


 「ブルルゥッ!!」


 しかしグラニだけは引かない。寧ろ戦う気満々だ。流石はスレイプニルの子だ。誇り高い奴だ。


 「行くぞグラニ!」


 「ブルルゥッ!!」


 俺はグラニに跨りエイクスュルニルの方へと駆け出させる。


 「キュアアアアアアアァッ!!」


 凄まじい鳴き声と共にエイクスュルニルは大きく頭を振り下ろし、その角で俺達を仕留めようとしてきた。


 「はあっ!!」


 俺は魔力纏鎧で身体能力を底上げし、レイヴェルを渾身の力で振るう。


 俺が振るったレイヴェルの一撃とエイクスュルニルの角による一撃が激しくぶつかり合う。それによって凄まじい衝撃が空を、大地を揺らす。


 流石は七神獣の一角、魔力纏鎧で身体能力を底上げした状況での渾身の一撃を受け止めやがった。並大抵の魔物なら今ので終わっていただろう。


 「キュアアア……」


 だが、何も効いていないわけでもなさそうだ。先程の一撃を受けた角からピシッと音が走ると、そのまま角が砕けて地面へと落ちる。


 よし、やはり強度ではオリハルコンであるレイヴェルの方が上だったようで、流石の七神獣であるエイクスュルニルの角でも耐えきれなかったようだな。

 

 「キュアアアアアアアァッ!」


 突然、エイクスュルニルが高らかに鳴き声を上げると、全身が淡く光出す。そして破損したはずの角が元通りになった。


 「再生するのかよ!」


 流石は七神獣の一角というべきか。この程度で喜んでいる場合ではないようだ。


 「ルイ殿、エイクスュルニル様は世界樹の守護者です! どうか命は奪わないで下さい!」


 「無茶言うな!」


 エルシュさんの言葉に思わず声を荒げてしまう。


 相手は七神獣の一角。手加減出来る相手ではない。本気でいかなければこっちがやられてしまうぞ!


 「キュアアアアアアアァッ!」


 再び鳴き声を上げるエイクスュルニル。そして奴から人間サイズの巨大な鋭利葉が放たれる。


 「避けろグラニ!」


 「ブルルゥッ!」


 弾丸並みの速度の鋭利葉を辛うじて避けるグラニ。その威力は凄まじくかなり太い樹木を容易く切り裂くほどだ。


 ここでは被害が大きく過ぎる。ここから離れないとな。


 俺はエルフの里に危害を出さないために里のはずれにエイクスュルニルを誘い込むことにした。


 案の定、狙いを俺達に定めたエイクスュルニルは樹々を薙ぎ倒しながら追ってきた。まだ子供とは言えグラニに追いつく程の速さとは恐れ入る。


 そしてしばらくして追いかけっこをしていると、ちょうど戦えそうな場所に出たのでグラニに止まるように言う。里からはかなり距離があるから大丈夫だろう。


 「キュアアアアアアアァッ!」


 雄叫びと共にエイクスュルニルが止まった俺達に目掛けて突進してくる。


 俺達もエイクスュルニルへと突進し、2度目の激突。先程よりも凄まじい衝撃が周囲の樹々を薙ぎ倒していく。


 それでもお互い攻撃をやめない。今やめれば隙が出来るからだ。エルシュさんには悪いが手加減は出来ない。そんなことをすれば死ぬのはこちらだ。それ程までの相手なのだ。


 エイクスュルニルも俺と同じ考えなのか、傷ついた部分を再生させながらも攻撃をやめようとしない。


 「キュアアアアアアアァッ!」


 俺との激しい打ち合いに痺れを切らしたのか、エイクスュルニルの角から光が発せられる。そして莫大な魔力が一点に集まりやがて球体へと形を変える。


 なるほど、集めた魔力を俺達に放とうというのか。


 「ならばこちらも!」


 俺はレイヴェルに魔力を溜める。するとレイヴェルンが徐々に輝きを増していく。


 魔力の充填が完了して俺は光線、エイクスュルニルは球体を放つ。それはまさに必殺とも言える破壊の一撃が衝突する。


 確かにエイクスュルニルの一撃は凄まじい。だが魔力量はこちらの方が上。ありったけの魔力を使用して放った俺の光線の方が強力だったようだ。


 光線は球体を貫き消滅させても尚止まることなく広範囲に渡って地中深くまで抉り取り、さらに凄まじい衝撃波が発生することで周囲の樹々を根こそぎ吹き飛ばしていく。


 「ブルルゥッ……」


 流石にこちらも無傷とは言えず、俺は大量の魔力を消費してかなりの疲労が、そしてグラニも先程の衝撃の余波のせいで脚に重傷を負ってしまう。

 

 だがそれは相手も同じ。肝心のエイクスュルニルはというと、光線による直撃は避けたようだが左肩部が抉られるほどの大ダメージを与えることが出来たようだ。


 あれ程の傷を負っても尚立っているとは、他の魔物とは格が違い過ぎる。


 「キュアアアアアアアァッ!」


 するとエイクスュルニルはまた雄叫びと同時に身体の再生を始める。さらに再び球体を作り出す。


 「おいおい、2発目かよ!」


 先程の球体よりはかなり小さいが、それでも大量の魔力を感じる。野郎、身体の再生と2発目の球体を放つだけの魔力を残していたようだ。


 俺も再び光線を放とうとするも既に遅く、エイクスュルニルは俺達に目掛けて2発目の球体を放つ。


 まずいな、グラニは脚の負傷でまともに動けない状況だ。グラニをこのまま置いて回避するわけにはいかない。どうすれば……。


 「ヒヒィーーンッ!!」


 絶体絶命の窮地に陥ったその時、グラニが甲高い鳴き声を上げるのと同時に風が吹く。いや、グラニに集まっているという方が正しいか。


 風をまるで衣のように纏ったグラニの身体がふわりと宙を浮く。


 「おお、飛んだぞ!」


 まさかの展開に思わず驚いてしまう。そんな俺に構わずグラニはさらに上空へと浮かび、エイクスュルニルが放った球体を避けた。


 「グラニ、この土壇場で飛べるようになるなんて凄いな!」


 とうとう空まで飛べるようになるとは、流石はスレイプニルの子供だ。この窮地によってグラニは更なる能力を開花させたようだ。


 「ん? 何だあれ?」


 こうして上空からエイクスュルニルを見下ろしたことがなかったので気がつかなかったが、よく見ると奴の背中に妙な物を見つける。


 それは纏っている植物とは明らかに異質というか邪悪というか、そんな雰囲気を放っている花だった。そしてその中央にはギョロリと動く目玉のようなものがあった。


 「弱点発見」


 こういうのは大抵、不気味な目玉がある場所が弱点だと相場が決まっているものだ。


 「グラニ、あれに近づいてくれ!」


 「ブルルゥッ!」


 俺の指示に従いグラニは猛スピードで目玉花へと接近する。


 「キュアアアアアアアァッ!!」


 エイクスュルニルも俺達がやろうとしたことに気がついたのか、目玉花に近づけさせないように無数の鋭利葉を放ってくる。


 ここまでしてあの目玉花を死守しようとすることは、やはりあそこが弱点なのは間違いなさそうだ!


 迫ってくる複数の鋭利葉をグラニに回避させながら徐々に距離を詰めさせる。そしていよいよ目玉花までの距離が目と鼻の先までとなった。


 「はあっ!」


 俺はレイヴェルによる渾身の突きを放つ。穂先は目玉花の眼球を貫く。


 「キュアアアアアアアァッ!?」


 弱点と思われる目玉花を潰されて悲鳴を上げるエイクスュルニル。まるで悶え苦しむようにしばらく暴れると、そのままズシンと倒れてしまう。


 「……終わった、のか?」


 倒れたまま動こうとしないエイクスュルニル。見たところ息はしているようだが、念のためにステータスを見てみよう。


 名前:エイクスュルニル

 種族:神獣種

 等級:S

 魔力:4500/500000

 

 ステータスを見ると、洗脳の状態異常は消えていた。どうやらあの目玉花がエイクスュルニルを操っていたようだ。


 流石は七神獣の一角なだけあって本当に強かった。一歩間違えれば俺達は今頃どうなっていただろうか。


 --ルイ様! ご無事ですか!?


 するとユフィアが念話で語りかけてきた。あれほど激しかった戦闘音が止んだので心配したそうだ。


 --大丈夫だ。それとエイクスュルニルを鎮めることが出来た。悪いがこっちに来てくれないか? グラニが脚を負傷したようなんだ。


 --分かりました。すぐに向かいます。


 無事であることを告げてユフィア達が来るのを待つ。


 「ふう、疲れた……」


 「ブルルゥ……」

 

 どうにかエイクスュルニルを大人しくさせることが出来て安堵したのか、親達はその場に座り込んでしまった。

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