自由国家オルフィン①
ガタコトと荷馬車に揺られながら俺とガンツさんは目的地である自由国家オルフィンへと向かっていた。
タルナ村からオルフィンまでの距離は馬車で3週間程の距離にある。
日の出と共に出発して日が沈む前に野営の準備に入る。それを繰り返しながら俺達はオルフィンにへと進んでいく。
野営はテントを張ったり、焚き火をして簡単な食事をして、魔物に奇襲されないように交代制で見張りをしたりした。
旅の休憩中ではガンツさんに槍の手解きを受けたりもした。
ガンツさんは武器屋を営む前は凄腕の槍使いとして冒険者をしていたらしいが、怪我が原因で引退を余儀なくされたようだ。
元々俺はある程度のことならそつなくこなせるし身体能力は常人以上なので、ガンツさんの厳しくも分かりやすい手解きの甲斐もあって俺は槍の扱いには充分慣れていた。
旅は順調に進んでいき、オルフィンまで残り1日までの距離になっていた。
--警告。魔物の群れがこちらに向かってきています。
しかし、そんなのどかな旅路を邪魔する無粋な襲撃者たちが現れた。
「おいおい、あれってまさかグレイウルフの群れじゃねえか?」
ガンツさんの声に反応して荷馬車の先に視線を向けると、そこには灰色の狼のような魔物が10匹程待ち伏せしている。
グレイウルフ
種族:魔獣種
等級:E
魔力:250
グレイウルフ
狼型の魔物。知能が高く群れで行動しており、戦闘では巧みな連携で敵を翻弄する。毛皮、牙、爪は売却可能。
どうやら荷台に用があるようだ。中には食材もあるからな、恐らくそれを狙っているのだろう。
「よし、俺の出番だな」
荷台から降りると、ガンツさんに譲らられたミスリルスピアを構えて戦闘大勢に入る。ガンツさんの訓練による成果を見せてやる。
「ガウッ!」
グレイウルフの1匹が先陣を切って荷馬車へと突進してくる。
「はあっ!」
俺は襲いかかるグレイウルフに目掛けてミスリルスピアを振るう。
「ギャンッ!?」
刀身のような穂先がグレイウルフの身体に食い込むと、いとも容易くその胴体を真っ二つに切断して、鮮血が宙を舞う。そしてそのまま地面に赤い染みを作りながら倒れて動かなくなった。
まるでバターのように意図も容易くグレイウルフの身体を切り裂くとは、このミスリルスピアの切れ味は予想以上のものだな。
「ガウっ!!」
群れの1匹を討たれれてグレイウルフの目つきが変わる。どうやら俺を獲物ではなく敵として認識したようだ。
俺はそんなグレイウルフに対して怯むことなく群れへと突入し、2匹目のグレイウルフにミスリルスピアを勢いよく突き出してその身体を貫く。
「キャンッ!!」
耳障りな悲鳴が鼓膜を揺さぶるが、俺は歯牙にもかけずにミスリルスピアを引き抜き、そのまま近くにいた3匹目、4匹目のグレイウルフを仕留めていく。
「ガウッ!」
5匹目のグレイウルフが俺の左側から襲いかかって来る。
「ふんっ!」
俺はミスリルスピアを横薙ぎに思いっきり振るうと、先端近くの柄が5匹目のグレイウルフの胴体横に命中する。骨がへし折られる確かな手応えが伝わる。
「ギャンッ!?」
5匹目のグレイウルフは渾身の一撃で吹き飛ばされ、近くの木に叩き付けられる。打ちどころが悪かったのか、暫くびくびくと身悶えした後にそのまま動かなくなり生き絶えた。
「これで半分!」
俺は残りのグレイウルフ達にミスリルスピアを向けながら視線を移す。
「ガウッ!」
するとグレイウルフは瞬く間に群れの半分を倒した俺には敵わないと判断したのか、そのまま颯爽と逃げていった。
俺もこれ以上の戦闘は意味が無いと思って追撃はしなかった。
俺はミスリルスピアをしまうと、討伐したグレイウルフを空間収納で回収する。ゴブリンと違って動物系の魔物は魔石だけでなく売却できゆ素材も多い。これだけの数があればそこそこな値段になるだろう。
「見事な槍捌きだったぜ! 流石は兄ちゃんだぜ!」
グレイウルフを難なく撃退した俺にガンツさんは嬉しそうに笑みを浮かべている。これも彼との修行の成果だな。
「さあオルフィンまで後僅かだ。さっさと行こうぜ!」
そう言われて俺は荷馬車に乗り、オルフィンへと再出発するのだった。
◆◆
「おーい、オルフィンが見えたぞ!」
グレイウルフの群れを撃退した翌日。
あれ以降は魔物と遭遇することなく無事に目的地であるオルフィンへと到着することができた。
「あれが自由国家オルフィン」
なかなか大きい街だな。周囲を石壁で囲い、その内側に様々な建物を作っている。石壁の東西南北には出入り口である巨大な門がある。
「マハナ村のガンツだ」
「ガンツ様ですね。どうぞお通り下さい」
本来なら街に入るには手続きが必要で時間もそれなりにかかるらしいが、ガンツさんは中々の顔見知りらしい。門番らしき兵士に挨拶を済ませると、そのまま街に入る。
「とても賑やかですね」
「冒険者の国だからな」
街の中はとにかく賑やかだった。果物屋や武器屋、薬屋、アクセサリー屋、あらゆる店が互いに凌ぎを削っている。
それにここには多種多様の種族がいるようだ。
人間はもちろん動物のような耳や尻尾を持つ獣人、ドワーフ、中には額に角が生えた種族さえもいる。
まさにファンタジー世界と思える光景だった。
ガンツさんが馬車を停めたので、俺は荷台から降りると小さく伸びをする。長時間座りっぱなしだったからか、肩や首が痛い。
「冒険者ギルドはこの大通りの先にある。巨大な翼のような看板があるからすぐに分かるはずだ」
「分かりました」
「あ、それとこれを渡しておく」
ガンツさんは鞄から手紙のような物を取り出すと、それを俺に手渡す。
「これは?」
「それを冒険者ギルドの受付に渡しな。きっと役に立つと思うぜ」
何から何までこの人には世話になりっぱなしだな。
「色々とありがとうございます、ガンツさん」
「こっちこそ世話になったな。またな兄ちゃん」
そう言って俺はガンツさんは行ってしまった。また会える日が楽しみだ。
「さてと、俺も冒険者ギルドに行くとするか」
俺は目的の冒険者ギルドへと向かうのだった。




