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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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エルフィリオ大森林②

 オルフィンを出立して1週間。ようやく目的地であるエルフィリオ大森林が見えてきた。


 「……あれがエルフィリオ大森林か」


 「……凄いですね」


 まだ遠くにも関わらず、太古の時代から存在する森の圧倒的な景色に思わず感嘆の声が漏れる。


 そして何より印象的なのは森全体から感じられる魔力だった。リスティング神聖国の聖都を訪れた時にも感じられた神聖さを思わせる。


 「ブルルゥッ!」 


 「クルルゥッ!」


 すると、グラニとクルが突然声を上げる。


 「ルイ様、あれを見て下さい」


 ユフィアが指差す方へと視線を向けると、森の中から出てくる人影が見えた。


 大斧を担いだ男戦士に杖とローブの女魔法使い、細身の剣を帯剣している男剣士の三人組だった。おそらく冒険者だろう。


 装備品を見る限りなかなか腕が立つように思えるがが、よく見ると3人共怪我をしているようだ。


 すると、3人組は俺達に気がついたのか、こちらへと近づいてくる。


 危機感知が発動しないから敵意はないようだ。


 「お前達、まさかこの森に入ろうとしているのか?」


 「だとしたらやめておいた方が身の為よ」


 「この森は危険だ。命が幾つあっても足りねえよ」


 3人共余程酷い目に遭ったようで、小刻みに震えている。


 元々彼らは冒険者の仕事でエルフィリオ大森林で行方不明になった人の捜索をする為にこの森を訪れていたそうだ。


 しかし行方不明者を見つける事は出来ず、更に危険な魔物に襲われてしまいパーティは壊滅したそうだ。


 しかもその危険な魔物とは噂の植物の巨人のようだ。


 その話を聞いて間違いなくこの森には何かがあると確信出来た。


 貴重な情報提供のお礼として彼らの怪我をユフィアに治して貰った。


 「すまない、感謝するぞ」


 傷を癒した3人組は礼を言うとそのまま行ってしまった。


 「どうやら予想以上に森の中は危険のようですね……」


 「ああ、それでも行かなくてはいけないんだ」


 「何処へでもお供致します」


 こうしてエルフィリオ大森林の探索が始まった。


 森に入ると幻想的な光景に目を奪われた。


 「これがエルフィリオ大森林……やはり普通の森とは違うな」


 通常のものとは比べ物にならないほど高くて太い樹木、見たことのない変わった形をした草花やキノコ、独自の生態を遂げたであろう昆虫、まさに世界最古の森と呼ぶに相応しい光景が広がっている。


 「ん? 何か匂わないか?」


 探索開始から30分、何処からともなく豊潤な香りが漂ってきた。まるで蜜のように濃厚で甘い香りだ。


 興味が出た俺達は匂いのする方へと進む。


 するとそこにあったのは10メートルはあるであろう変わった形の枯れ木だった。そこから樹液のようなものが滴っている。どうやら香りの原因はこの木のようだ。


 念の為に鑑定慧眼で調べてみるとしよう。


 名前:ギミックマンティス

 種族:魔虫種

 等級:C

 魔力:3000


 ギミックマンティス

 蟷螂型の魔物。枯れ木に擬態して特有の香りがする体液を流して獲物を誘き寄せて鋭い鎌状の前脚で狩る。鎌は武器に加工、体液は薬品等に使われる。


 こいつ魔物だったのか!? この甘い香りは獲物を誘き寄せる為の罠だったのか!


 「皆、急いで離れろ!」


 俺が指示を出した時には既に遅く、ギミックマンティスは枯れ木への擬態を解くと、真っ先に俺へと襲い掛かってきた。


 「はあっ!」


 ギミックマンティスは大鎌状の右前脚を振り下ろしてきたので俺も即座にレイヴェルを振り上げてその一撃を防ぐ。


 巨体通りの力強さ、かなり鋭く重たい一撃だがそれでも耐えきり弾いてみせた。


 「ライトアロー」


 攻撃を弾かれたギミックマンティスが一瞬だけ体勢を崩した隙にユフィアから光の矢が放たれる。


 けれどギミックマンティスはもう片方の大鎌を振るい光の矢を容易く振り払う。


 流石はC等級魔物と言ったところか。そう簡単には討たせてくれないようだな。


 するとギミックマンティスは両方の大鎌を振り上げ、羽を広げて威嚇を始める。どうやら俺たちの事を餌ではなく敵として認識を改めたようだな。


 「ブルルゥッ!」


 そんなギミックマンティスの威嚇に対してグラニは風の刃で応戦する。近づけばあの大鎌によって致命傷を与えられると判断して遠距離からの攻撃に専念したようだ。


 グラニから放たれる複数の風の刃をギミックマンティスは2本の大鎌で全て振り払う。


 まだ子供とは言えS等級のスレイプニルであるグラニを相手に互角の打ち合いをするか。やはり侮れない奴だ。


 だがそのお陰で背後がガラ空きだ。


 俺は隙だらけのギミックマンティスの背後をとり、一撃を与える。


 強烈な突きの一撃を受けたギミックマンティスが不気味な吠え声を上げながら苦しむ。


 しかし流石はC等級魔物。痛そうな素振りを見せながらもその鋭い牙で噛みついてこようとしてくる。


 「はあっ!」


 しかしそれよりも早く振るったレイヴェルの穂先がギミックマンティスの首元を捉えてそのまま頭部を切断すると、切断面から緑色の血が大量に噴出する。


 --仕留めた。


 そう思ったその瞬間、倒したとはずのギミックマンティスの大鎌が再び振るわれる。


 「うおっ!?」


 突然のギミックマンティスの攻撃を咄嗟に回避する。


 「……まだ動けるのかよ!?」


 頭部を失ってもなお襲い掛かってくるギミックマンティスの生命力に思わず脱帽してしまう。


 聞いたことがある。


 昆虫は頭部だけでなく胸部や腹部の各節にも脳のような器官があり、それにより頭を失うことになっても暫くの間は動くことが可能らしい。


 勿論、頭部がなければ相手を認識することも、食べることも出来ないので放っておけばそのうち死ぬだろう。


 だがそれは普通の昆虫の場合だ。姿形はカマキリとは言え相手は魔物。想像の範疇を超える場合も考えられる。


 だからこそ俺はギミックマンティスを確実に仕留めるべく追い討ちをかける。


 幸い頭部を失ったギミックマンティスの攻撃は闇雲に大鎌を振るっているだけなので容易く回避することが出来た。


 俺はまず厄介な両前脚を、そしてそのまま胸部、腹部へと順に斬り伏せていく。そう幾重にも身体を切断されてようやくギミックマンティスは絶命した。


 この森に入って最初に遭遇したのがB等級魔物とは正直驚いた。おそらく他にも凶暴な魔物が生息しているのだろう。


 エルフィリオ大森林……俺が想像していた以上に危険な場所のようだな。


 そんな事を思っていた矢先のことだった。


 --ジジジジジジジジ……。


 何処からともなく何か翅音のようなものがこちらに近づいてきている。


 --警告。魔物の群れがこちらに近づいてきています。


 どうやらまだまだ戦闘を終えることは出来ないらしい。


 翅音と共に現れたのは大きいトンボの群れだった。翅を広げれば 1メートル程くらいはあるだろう。赤と黒の馬渡模様が特徴的だ。


 名前:ハンターフライ

 種族:魔虫種

 等級:D

 魔力:500


 ハンターフライ

 肉食性のトンボ型の魔物。非常に気性が荒く、優れた飛行能力で大型の獲物をも翻弄させる。


 「全く、虫ばかり相手にするのは嫌になるな……」


 そう呟いて、俺はハンターフライの群れへと突っ込むのだった。

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