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救世のルファディア  作者: yato
第2章 世界樹編
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エルフィリオ大森林①

 「はぁ、はぁ……もう少し……もう少しで出口だ……!」


  不適な笑みを浮かべながら男は深夜の森を駆け抜けていた。彼はいわゆる密採者と呼ばれる者だった。


 背負っているリュックの中にはエルバナ公国でしか採取出来ない幻覚作用がある特殊な薬品作るために必要な植物等が入っていた。その量は売れば一生遊んで暮らせる程だった。


 「まったく、ドジな野郎がミスをすると、同業者が苦労するぜ……」


 憎々しげに密採者は呟いた。


 過去に彼れと同じように幻覚植物を隣国で売ろうとした者がちょっとしたミスで騎士団に捕まってしまった。そのせいで国境付近は騎士団が管理するようになり、幻覚植物を隣国で売ることが困難になってしまった。


 だが、どこにも抜け穴と言うものは存在する。


 それはこの森を通り抜けることだった。この森は特殊で外部の者が干渉することは殆どないのだ。だからこそこの男はここを通っているのだ。


 「この森を抜ければ俺は大金持ちだぜ!」


 大金を想像して密採者がニヤリと笑みを浮かべているその時だった。


  ズシン……ズシン……ズシン……ズシン……。


 「な、何だ……?」


 何かが近づいている音に男は歩を止める。その音は森の奥から聞こえ、次第に彼の方に近づいて来ている。


 そしてそれは現れた。


 「オォォォォォォン……」


 呻くような声を上げて植物の巨人が現れた。5メートルは超える巨体は濃い緑色の蔓草で形成されている。


 「何だよこいつ……!?」


 今まで見たことの無い魔物の出現に男は動揺を隠しきれなかった。それにの男の勘が告げる。この魔物は危険だと……。


 しかし、大金を手にする為にはここで引き返す訳にはいかなかった。


 男は腰にさしていたロングソードを引き抜くと、それを魔物に向けた。


 「魔物なんかに俺の邪魔をさせるわけには行かねえんだよ!」


 俊敏な動きで植物の巨人に先手を打つ男。彼は元々名の知れた冒険者だった。しかもロングソードも冒険者をしていた頃から愛用している鉄よりも硬度が高い黒鉄鋼と言う素材で鍛えられた自慢の逸品だった。


 しかし、魔物の身体は非常に硬く、黒鉄鋼で造られたロングソードの刀身は「キィンッ!」と音を立ててへし折られ、吹き飛んだ。


 「嘘だろ……!?」


 自慢の愛剣を意図も簡単に折られ、驚愕する男。魔物には敵わないと判断した彼は使い物にならなくなったロングソードを投げ捨てて逃亡を図る。


 けれどそれは無駄に終わった。魔物の左腕から伸びる極太の蔦が男の足元に絡みついてあっさりと拘束した。


 「何しやがる!? 離せ!」


 男は魔物の蔦を強引に振り解こうとするが、魔物の力は予想以上に強いのでそれは不可能だった。


 「無駄だ。貴様如きにその魔物は敵わない」


 突然現れたのはローブを身に纏った謎の人物。ローブを深くまで被っているので顔は分からないが、おそらく男であると思われる。


 「この魔物はお前が従えているのかよ!? さっさと解放しろよ!」


 話が通じる相手だと分かると男は叫ぶ。


 「うるさい奴だ。おい、そいつの腕と足を折れ」


 「オォォォォォォン……」


 ローブの男の指示に魔物は男の両手両足の骨をへし折った。


 「ギャアアアアアアアアッ!! 俺の腕と足がぁぁぁぁぁぁっ!?」


 両手両足の骨をへし折られ、男の悲痛の叫びが森に響いた。しかし彼を助ける者は何処にもいない。


 「連れて行け……」


 「オォォォォォォン……」


 「おい、俺をどこに連れていくんだ!? 離せ! 離してくれぇぇぇぇぇ!!」


 男の叫びも虚しく、ローブの男の命令で魔物は男を森の奥へと連れ去っていく。


 「もう直ぐだ。もう直ぐ私の野望が叶う……」


 そう呟き、ローブの男も森の奥へと消えて行った。



 ◆◆



 「ルイ様、未来予知の加護が発動しました」


 ある日、突然ユフィアがそう言ってきた。彼女の持つ未来予知は未来に起きることを見ることが出来る加護だ。


 「それで、どんな未来を見たんだ?」


 俺はユフィアが見た未来を聞くと、どこかの森で謎の男が植物の魔物を操って密採者を襲っている光景だそうだ。


 確かに怪しいな。もしかしてローブの男は邪神の使徒なのかもしれない。


 もしそうなら俺達はそこに行かなくてはならないな。


 しかし、分かっているのはそこが森と言うことだけだ。森なんて数えきれない程の数があると言うのにどうすれば良いんだ。


 頭を悩ましていると、ユフィアが妙案を言ってきた。


 「でしたら冒険者ギルドに尋ねてみては如何でしょう。あそこなら世界各地の事情に詳しい筈です。何処かの森で異変が起きていないか聞いてみましょう」


 なるほど。確かにユフィアの言う通り冒険者ギルドなら何か手掛かりが掴めるかもしれない。


 「そうだな。行ってみるか」


 俺達は冒険者ギルドへと向かうことにした。


 「こんにちはルイさん、ユフィアさん。今日は依頼を受けに来たのですか?」


 冒険者ギルドに到着すると受付嬢のアリスさんが出迎えてくれる。


 「今日は依頼ではなく聞きたいことがあって来たんです。最近、異変が起きた森ってありませんか?」


 「異変が起きた森、ですか? 残念ながらそう言った報告は上がってませんね」


 「そうですか……」


 うーん、まだ異変は起きていないのか? そうなると異変が起きるまでは待たないと駄目か……。


 「そう言えば、異変と言う程ではないのですが最近エルフィリオ大森林で妙な噂があると聞きます」


 「エルフィリオ大森林……」


 オルフィンの北西に位置するこの世界最古の森だったな。そこは確かエルフ族が統治している筈だ。


 「最近その森で謎の巨人が姿を見せると言う噂があるそうです」


 巨人の姿だって!? おそらくユフィアが見たものと同じ奴だろう。ならばエルフィリア大森林に行くしかないな。


 「もしかしてエルフィリオ大森林に行くつもりですか? それならやめておいた方がよろしいかと……」


 「どうしてですか?」


 不思議に思いアリスさんに尋ねてしまう。


 「それがですね……」


 アリスさんが言うには20年程前にエルフィリオ大森林で大きな事件が原因らしい。


 人間族が治るとある王国が容姿端麗の姿をしているエルフに目をつけて奴隷にするべくエルフィリオ大森林に侵攻した。


 数では劣っていたエルフ達だったが、魔力が高く魔法に長けていることもあって見事に侵攻を阻止することが出来た。


 しかし、そのせいでエルフ達は人間族を毛嫌いするようになり外界との交流を絶ってしまったそうだ。


 「なのでエルフィリオ大森林には近づかない方が賢明かと」


 なるほど。外部の者が立ち入ればどうなるか分からないと言うことか。


 しかしそこに邪神に関することがあれば行くしかない。


 こうして俺達はエルフィリオ大森林へと向かうことに決めたのだった。

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