新たな従魔③
オルフィンへと帰還するべく森の中を駆け抜けるグラニ。
「ブルルゥッ!」
すると突然グラニが警戒の鳴き声を上げてその場に停まった。
--警告。大量の魔物がこちらに近づいています。
俺の危機感知も警告を発している。
俺とユフィアはグラニから降りて周囲に注意を払う。
すると茂みの中からスライムの大群が姿を現した。しかも数は20や30なんてもんじゃない。100はいるぞ! 大量発生しているにも程がある!
しかもその中には人の背丈ほどはある大きさのスライムが個体が何体もいた。
名前:ビッグスライム
種族:粘液種
等級:E
魔力:100
ビッグスライム
軟体型の魔物。複数のスライムが合体したことにより生まれた魔物。身体が大きくなっただけでなく弾力も増している。体液は薬品や料理に使われる。
どうやら囲まれているようだな。仕方がない、ここはこいつらを一網打尽にするとしよう。
「俺が前衛で奴らを仕留める。ユフィアとグラニは援護を頼む」
ユフィアとグラニにそう指示した俺はレイヴェルを取り出してビッグスライムへと振るう。確かに弾力はあるようたがこちらはオリハルコンで出来た神槍だ。意図も容易く身体を切り裂いた。
「ライトアロー」
「ブルルゥッ!!」
それにユフィアとグラニも援護もあり瞬く間にスライムは全滅させ、ビッグスライムも僅かになるまで倒すことが出来た。
すると残りのビッグスライム達に異変が起きる。一箇所に集まりだしてまるで融け合うように一体化していく。
そいつは姿こそスライムだが大きさが段違いだった。5メートル近くはあるぞ。
名前:ジャイアントスライム
種族:粘液種
等級:C
魔力:1500
ジャイアントスライム
軟体型の魔物。複数のビッグスライムが合体したことにより生まれた魔物。獰猛さが増しており大型の魔物でさえも取り込んで吸収してしまう。巨体なため打撃系統の攻撃は殆ど通じない。体液は薬品や料理に使われる。
等級がCまで上がっているということはなかなかの実力があると思われる。気を引き締めて討伐にかかるとしよう。
「ブルブルブルッ!!」
するとジャイアントスライムは身体の一部を鞭状の触手に変化させると、それを俺に目掛けて叩きつけてくる。
「はあっ!」
迫ってくる攻撃を受け止めながらいなすと、そのままレイヴェルを横薙ぎに振るって触手を斬り払う。
斬り落とされた触手はもう動くことはなく、まるで溶けるかのようにどろどろになってしまった。
どうやら切り離された部分はもう使えないようだな。
「一気に仕留めるぞ!」
「はい!」
「ブルルゥッ!」
俺達は触手が届かない距離でジャイアントスライムを集中攻撃を加える。
魔弾と光の矢、風刃がジャイアントスライムの身体を削っていき、それによってみるみる小さくなっていく。
「これで終わりだ」
そして遂に人間程の大きさになったところで俺はとどめの一撃を加えた。
縦に真っ二つにされてジャイアントスライムは動かなくなった。
「倒したスライム達は全て回収する。売ればなかなかの金額になるだろう」
そう言って俺は倒したスライム達の回収を始める。
すると、倒した筈のジャイアントスライムが急に動き出したのだ。
「まだ生きていたのか!?」
くそ、完全にジャイアントスライムを仕留めきれていなかったようだ! 全く動かないから倒した思い込んでしまっていた。
ジャイアントスライムは1番近くにいたユフィアに目掛けて触手を振るう。
突然の反応にユフィアも聖護結界を展開出来ていなかった。
ジャイアントスライムの触手がユフィアに当たる直後、それは現れた。
「クルルゥ!」
聞き覚えのある鳴き声と共に茂みから出てきたのは先程助けたカーバンクルだった。
「クルゥッ!!」
姿を現したカーバンクルの額の宝石が一瞬輝くと、そこから白炎が放たれる。
白炎が直撃したジャイアントスライムはどうにかして白炎を消そうとするも瞬く間に全体へと燃え広がりその身体を焼き尽くしていく。
そして白炎が消えた時には大きい魔石と焦げ跡だけが残っていた。今度こそ仕留めることが出来たようだ。
どうやらカーバンクルはユフィアを助けてくれたようだ。さっき怪我や毒を治したお礼なのだろう。
「助けてくれてありがとうございます」
「クルルゥッ!」
ユフィアは助けてくれたカーバンクルにお礼を言うと、カーバンクルは嬉しそうにすると、ユフィアの肩にへと移動して離れようとしない。
「もしかしてそいつ、ユフィアに懐いているんじゃないか?」
「そうなんですか?」
「クルゥ!」
まるで「うん!」と言いたげにカーバンクルは頷いている。どうやら俺達の言葉を理解出来ている様子だ。魔力だけでなく知力も高いのだろう。
「だとしたらユフィアの従魔にしよう」
先程のカーバンクルが放った白炎の威力は申し分ない。このカーバンクルがユフィアについていれば戦闘面でも大いに役立てるだろう。
「分かりました。でしたら名前が必要ですね。鳴き声が可愛いので『クル』なんてどうですか?」
「クルルゥ!」
ちょっと安直過ぎる名前のような気がするが、まあ当の本人が気に入っているのなら別に良いだろう。
「これからよろしくお願いしますね、クルちゃん」
「クルルゥ!」
こうして新たな従魔のクルを連れて、今度こそオルフィンへと帰還するのだった。
◆◆
オルフィンに到着した俺達は依頼の報告をするべく冒険者ギルドを訪問した。
「ただいま戻りました」
「依頼は無事に完了致しました」
「おかえりなさい、無事で何より--きゃあああああっ!」
いつものアリスさんとは思えない程可愛らしい声を上げる。その視線はユフィアの肩に乗っているクルへと向けられている。
「あの、その肩に乗っているのは?」
「カーバンクルのクルちゃんです。たまたまメルマの森で怪我をしていたところを治したら懐かれたので従魔にしました」
ユフィアはクルと出会った経緯、従魔の首輪は後で購入して付けさせるとアリスさんに説明した。
「それでスライム討伐部位の確認とそれ以外の魔物の買取をお願いします」
「分かりました。それではこちらに」
俺は指示された場所にスライム、ビッグスライム、ジャイアントスライムを出した。あまりの数の多さにギルド職員は驚いていた。
「あの、ユフィアさんにお願いがあるですけど、クルちゃんに触らせて貰ってもよろしいですか?」
「構いませんよ。クルちゃん」
「クルゥ!」
するとクルはアリスさんの手のひらに乗った。
「うわー、小さくて軽くて可愛いです〜!」
完全にいつもの営業スマイルではなく素の笑みを浮かべているアリスさん。この人は結構動物好きなのだろうか?
ちなみにスライム達の査定を終えるまでアリスさんはずっとクルを愛でていた。
30分程してスライム達の査定が終わった。
「お待たせしました。今回のスライム討伐数が70体だったので70000リルになります。そしてスライムを含む他の魔物の素材が200000リルとなりますので合計270000リルをお支払いします」
270000リルを受け取り、俺達は冒険者ギルドを後にする。去り際にアリスさんが若干寂しげだったな。
その後、従魔の首輪を購入する為に魔法屋に行ったが、カーバンクルのクルを見たロザナさんが目の色を変えてクルを買い取ろうとした。
マジックアイテムを作っている彼女にとってカーバンクルは喉から手が出る程欲しい素材なのだろう。
しかしユフィアは丁重にその申し出を断り、可愛らしい従魔の首輪(10000リル)を購入するのだった。




